子どものほめ方についての情報は溢れています。「結果より過程をほめましょう」「具体的にほめましょう」。私たち親は毎日、一生懸命「ほめる側」に立っています。
では、ほめる側のママは、いったい誰にほめられるのでしょうか?
朝5時に起きてお弁当をつくり、ぐずるわが子をなだめて送り出し、仕事や家事をこなして、夜は寝かしつけで1日が終わる。この毎日に「えらいね」と言ってくれる人は、少ないかもしれません。
今回は、ほめられることが少ないママが「自分で自分をほめる」ことの意味を、心理学の研究をもとにお伝えします。それは甘やかしではなく、科学的な裏づけのあるケアの方法です。
目次
「できて当たり前」になっていく、ママの頑張り
大人になると、怒られることが減るかわりに、ほめられることも減っていきます。とくに育児は「できて当たり前」と見なされやすい営みです。離乳食を手づくりしても、発熱した子を一晩看病しても、誰かが点数をつけてくれるわけではありません。SNSには子どもの成長を祝う投稿が並びますが、その成長を支えたママの毎日は、写真には写りません。
だからこそ、ふとしたときに「誰か、私をほめて」と思ってしまう。この気持ちは、わがままでも未熟さでもありません。人は誰でも、自分の努力を認められたい生き物です。子どもを産んだ日から、その気持ちだけが消えるはずはないのです。
むしろ「ほめられたい」と感じるのは、それだけ毎日、ほめられるに値することを積み重ねている証拠。まずはその感覚を、否定せずにそのまま抱えてあげてください。
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自分をほめるのは「甘やかし」ではない
「自分で自分をほめるなんて、なんだか甘えている気がする」。そう感じる方も多いかもしれません。けれど心理学では、つらいときに自分へやさしいまなざしを向ける態度を「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」と呼び、健やかな心の土台として研究が積み重ねられています。
セルフ・コンパッションは、下記の3つの要素で説明されています。(テキサス大学オースティン校、クリスティン・ネフ准教授)*1
1. 自分を厳しく責めるかわりに、やさしく理解を向けること
2. 失敗やつらさを「私だけがダメ」と孤立させず、誰にでもあることと捉えること
3. つらい感情に飲み込まれず、いま感じていることに気づいて、少し離れて眺めること
注目したいのは、この態度が「人より優れているから自分を高く評価する」こととは区別されている点です。誰かと比べるのではなく、うまくいかない日も含めて、がんばっている自分に思いやりを向ける。
「今日は寝かしつけでイライラしちゃったけど、それでも1日やりきった私、えらい」という姿勢そのものが、科学の言葉で裏づけられた心の技術なのです。
今夜からできる「自分ほめ」の3つの習慣
何かをやめる必要はありません。いまの生活に、ひとつだけ足してみてください。
1. 寝る前に「今日できたこと」をひとつだけ言う
布団に入ったら、心のなかで、今日できたことをひとつだけ挙げます。「ごはんを三食出した」「保育園に送り届けた」。立派なことでなくてかまいません。むしろ小さいほどよいのです。ポイントは「反省会」にしないこと。できなかったことを数える夜を、できたことをひとつ数える夜に変えるだけです。
2. 「〜しただけ」の「だけ」を外す
「洗濯しただけ」「ごはんをつくっただけ」の「だけ」を外して、「洗濯をやった」「ごはんをつくった」と言い換えてみてください。事実は同じでも、言葉が変わると自分への見方が変わります。もし友だちが同じ一日を過ごしたと聞いたら、あなたはきっと「えらいね」と言うはず。その言葉を、自分にも向けてよいのです。
3. 「〜しながらの私」に気づく
子どもを抱っこしながら電話に出る。ごはんをつくりながら宿題を見る。ママの毎日の多くは「〜しながら」の同時進行です。ふと気づいたときに「いま私、ふたつ同時にやってるな」と心のなかで実況してみてください。少し離れて眺めるだけで、自分のがんばりが見えるようになります。
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自分にやさしいママのほうが、心が守られる
「自分をほめる余裕があるなら、その分、子どもに向き合うべきでは」と思う必要はありません。研究は、その逆を示しています。
そしてもうひとつ。ママが自分をほめる姿は、自分のためだけではありません。「がんばった人はほめられていい」というお手本を、いちばん近くで見ているのはわが子です。自分を大切にする親の背中は、子どもが将来、自分自身を大切にするための道しるべになります。
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子どもをほめる声かけは、明日からも続いていきます。だからこそ、ときには順番を変えて、まず自分に「今日もえらかったね」と言ってみてください。誰にも聞こえない小さなひとことが、明日のあなたの心を、少しだけやわらかくしてくれるはずです。
FAQ(よくある質問)
Q. 自分をほめると、甘えて成長が止まりませんか?
A. 研究では、自分にやさしい態度は幸福感の高さと関連し、抑うつやストレスの軽減とも結びつくことが示されています。自分を責め続けることのほうが、心のエネルギーを消耗させてしまいます。安心して自分をほめて大丈夫です。
Q. ほめることが何も見つからない日は、どうすればいいですか?
A. 「今日も一日を終えた」だけで充分です。ハードルは低いほど続きます。事実をひとつ言葉にするだけでかまいません。見つからない日ほど、あなたががんばった日です。
Q. 家族にほめてほしいときは、どう伝えればいいですか?
A. 「ほめて」とリクエストしてかまいません。「今日ここまでやったの、えらくない?」と具体的に伝えると、相手も応えやすくなります。ほめは待つものではなく、もらいにいってよいものです。
(参考)
*1 Neff, K. D. (2003)|Self-Compassion: An Alternative Conceptualization of a Healthy Attitude Toward Oneself. Self and Identity, 2(2), 85-101.
*2 Jefferson, F. A., Shires, A., & McAloon, J. (2020)|Parenting Self-compassion: a Systematic Review and Meta-analysis. Mindfulness, 11(9), 2067-2088.
*3 Zessin, U., Dickhäuser, O., & Garbade, S. (2015)|The Relationship Between Self-Compassion and Well-Being: A Meta-Analysis. Applied Psychology: Health and Well-Being, 7(3), 340-364.









