みなさんのご家庭では、お子さんにお手伝いを分担させていますか? 小さい頃は、お手伝いをさせることでかえって親の負担が大きくなってしまうこともあり、時間がないときはやらせたくない……と思いがち。
でも、お手伝いを習慣にさせることには、子どもにとってのメリットがたくさんあるのです。今回は、子どもがお手伝いをすることで得られる教育的効果をご紹介しましょう。
自己肯定感を高め、時間の管理が上手になる!
子どもに家のお手伝いをさせることは、親がこなすべき家事の負担を多少軽くすること以上に、子どもにとっても大きなメリットがあります。国立青少年教育振興機構の理事長を務める鈴木みゆきさんは、お手伝いがもたらす効果のひとつに「子どもの自己肯定感を高められる」ことが挙げられると言います。
ご両親からお手伝いの分担を与えられることで、家の中に自分の役割や居場所があると子ども自身が感じたり、お手伝いをして家族から褒められると「自分は必要とされている」と実感できたりするのです。そして、子どものこれからの人生にとって必要な自己肯定感を高めることにつながります。
ほかにも、食事の準備を手伝うことで配膳の仕方などマナーを学ぶことができたり、洗濯やそうじのお手伝いをすることで上手な手順を身につけたりすることもできます。このような実践的な生活スキルは、お手伝いを通じて自然と身についていくものです。また、祖父母の家に行ったときにお手伝いをさせてみると、住んでいる地域や家によってルールやマナーが違うことを知る機会にもなるでしょう。
また、お手伝いによって時間の感覚を身につけることも重要だと鈴木さんは言います。
お手伝いはなによりも「時間の感覚」を身につけることにつながります。お手伝いが習慣化していれば、この時間にはなにをしなければならないということが「体でわかる」ようになるからです。ひいては、その習慣や感覚は「24時間をコントロールする力」につながっていくでしょう。じつは、わたしは長く生活習慣の研究をしてきました。結局、人間にとってなにが大事かといえば、「24時間をコントロールする力」だと思うのです。働いている大人でも、優秀な人の多くはタイムマネジメントにも長けた人ではないですか?
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由)
このように、お手伝いは一度で終わらせず習慣にすることで、自己肯定感を高めたり、ルールやマナーを学んだり、時間の感覚を身につけたりすることができるのです。
また、時間の感覚を身につけることは、自然と生活習慣を身につけることにもつながります。2018年に文科省が公表した「平成29年度全国学力・学習状況調査」によると、「毎日朝食を食べる」「新聞や本を読む」「計画的に勉強をする」といった生活習慣をきちんと身につけている子どもは、学力が高い傾向にあることがわかっています。
「植物の水やり」にも教育的効果がある!?
“お手伝いには教育的効果がある” とひと言で言っても、それぞれのお手伝いによって、身につく効果には多少の違いがあります。今回は種類ごとに、期待できる教育的効果をご紹介します。
■そうじ
例:ゴミ出し、お風呂そうじ、掃除機をかける
<期待できる効果>
- 責任感が身につく
- 自ら考える力が身につく
- 身の回りの整理整頓ができるようになる
- 分担することで協調性が生まれる
■洗濯
例:洗濯物をたたむ、洗濯物を取り込む、上履きを洗う
<期待できる効果>
- 自立しやすい
- 自ら考える力が身につく
- 身の回りの整理整頓ができるようになる
- 問題解決能力が備わる
■料理
例:食事の配膳、食器洗い、調理
<期待できる効果>
- 自立しやすい
- マナーを身につけられる
- 自ら考える力が身につく
- 親子でのコミュニケーションができる
- 分担することで協調性が生まれる
■ペットの世話・植物の水やり
例:ペットの餌やり、水の取り替え、植物の水やり
<期待できる効果>
- 生き物を大切にする心を育む
- 命の大切さを学ぶことができる
■日常のお手伝い
例:新聞取り、回覧板を回す、買い物
<期待できる効果>
- 自ら考える力が身につく
- 分担することで協調性が生まれる
- 判断力・決断力
■兄弟の世話
例:妹や弟の面倒を見る
<期待できる効果>
- 他者を思いやる心を育む
- 命の大切さを学ぶことができる
我が子にこのような力が身についてほしいと思ったら、そのお手伝いを分担させてみるのもいいかもしれませんね。
お手伝いを継続するには、親の声かけが重要!
お手伝いをすることで教育的効果を期待するのであれば、習慣づけすることが大切です。そのためには、子どもがお手伝いをしてくれたときは、「ありがとう」「○○ちゃんのおかげで、お母さんすごく助かったよ」と感謝の言葉を伝えましょう。また同時に「上手にできたね」「すごくきれいになったよ」「一生懸命そうじしてくれたね」など、できた結果はもちろん、その過程も褒めてあげてくださいね。言葉がけは、お手伝いが終わったらすぐにするのがポイント。褒めるタイミングも大事です。
このような言葉をお母さんやお父さんからかけられると、子どもは達成感や満足感を味わい、それが自信へとつながります。そして、もっとお手伝いがしたい、次もやりたいという継続する意欲にもつながるでしょう。感謝の言葉はできれば毎日伝えてください。昨日褒められたことは、次の日には子どもは忘れているもの。毎回褒められることで子どもは自信を持ち、できることが増えていく喜びを感じます。
そして、このように普段から子どもを尊重し、肯定的な声かけをすることで、お手伝いをし忘れてしまったときでも、親からの「お手伝いしてくれるかな?」と言った声かけで子どもは動いてくれるはず。お手伝いの習慣や継続には、親子の信頼関係も大切になってくるのです。
また、お手伝いがうまくいかなくて、途中で投げ出してしまうこともあるものです。もし、うまくいかなくても、すぐに手を出さずに見守ることも大切。少し様子を見て、タイミングを見ながらヒントを与えたり、お手本を見せてみましょう。時には、あえて見て見ぬふりをする必要も。お互いがストレスにならないように気づかないふりをして、次回につなげるようにします。
もちろん、「こんなこともできないの?」と、できなかったことを責めるのはNG。どうすればうまくできたのかを子どもと考えてみて、場合によっては一緒にやり直してみるのもいいですね。ただし、料理の場合は包丁や火などを使用するので、飽きて遊び始めてしまったら、「今日はここでおしまい」「食べ物では遊んではいけないよ」とけじめをつけるようにしましょう。
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お手伝いにはさまざまな教育的効果がありますが、そのベースとなっているのは、やはり親子間のコミュニケーションや信頼関係です。親側はお手伝いをしてくれてありがとうという気持ち、子ども側は家族の役に立ってうれしいという気持ちなど、お互いを思いやる気持ちが大切です。
そのうえで、できることが増えていく達成感や、家族から認められる自己肯定感、時間を自分でコントロールできる時間の感覚を養うなど、さまざまな力を自然と育んでいくことができるでしょう。ぜひ、お手伝いについて親子で話し合ってみてくださいね。
文/内田あり
(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「お手伝い」が子どもにもたらすいくつものメリット――お手伝いの習慣が高い学力につながる理由
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|お手伝いの習慣が学力アップにつながる! 子どもの自己肯定感を高める4つのヒント。
ベネッセ 教育情報サイト|お手伝いが子どもにもたらす効果とは? いつから何をさせればいい?