教育を考える 2018.7.13

「あなたはそのままで素晴らしい!」子どもの社会的成功につながる “非認知能力” を育む4つのポイント

長野真弓
「あなたはそのままで素晴らしい!」子どもの社会的成功につながる “非認知能力” を育む4つのポイント

ケネディ家やブッシュ家などの子息が通うアメリカ名門校でも教育の柱のひとつとなっている「非認知能力」。世界的にその重要性や効果は認められており、日本の学校でも近年、積極的に取り入れられるようになってきました。

「非認知能力」とは、自尊心や忍耐力、社交性などの幅広い力のことで、学歴や仕事などの社会的成功に結びつきやすいと言われている能力です。この記事の前編にあたる『受験や就職にも影響! IQや偏差値では測れない、幼児教育分野で大注目の “非認知能力”』では、幼少期に「非認知能力」を育むことの大切さをご説明しました。

今回は、大切なその時期にやるべきこと、日常生活の中で気をつけたいことなどをご紹介します。

「非認知能力」を育む4つのキーワード

非認知能力を育むためにすべきことを考えるとき、4つのキーワードがあります。

自己肯定感

全てのベースになる自己肯定感には親との信頼関係は欠かせません。『世界最高の子育て』の著者であるボーク重子さんは、「全米最優秀女子高生(全米の女子高校生が知性や才能、リーダーシップを競う大学奨学金コンクール)」に輝いた超優秀な娘さんの子育てで一番大切なこととして、「子どものあるがままを認めること」とおっしゃっています。勉強より何より心の安定に直結する愛情と、それがもたらす自己肯定感は、子どもの成長に不可欠なものであることを再確認しましょう。

自制心(我慢する力)

人生の成功に自制心は大きな役割を果たします。それを証明したのがコロンビア大学のウォルター・ミチェル教授による「マシュマロ実験」です。当時の勤務地スタンフォード大学の保育園で186人の4歳児にマシュマロをひとつずつ与え、「大人が戻るまで食べずに我慢したらもうひとつあげるよ。」と言い残し15分間席を外します。その結果、2個のマシュマロをもらえたのは全体の約3分の1でした。そしてその後の追跡調査でわかったのは、我慢できた子ども達は進学、就職、健康面において、より良い人生の成功を手にしていたということです。子どものころの自制心は、その後の人生の様々な場面で有効なことが実証されたのです。

GRIT(やり抜く力)

GRITとは「やり抜く力」のこと。アメリカ・ペンシルベニア大の心理学者であるダックワース准教授らによる研究で注目を浴びるようになりました。成功を収めるには、才能でもIQでもなくGRITが必要であることがわかってきたのです。GRITはこの研究によって数値化されるようになったのですが、一流企業のトップやオリンピック選手などの成功者の共通点はGRIT数値の高さ。つまり、“目標を達成するために熱意を持って粘り強く努力できる” 能力が人生を力強く生き抜くためにはとても重要であることが、改めて明らかになりました。

パッション(好きなことに打ち込む力)

前述のボーク重子さんが力説されている言葉が「パッション」です。直訳すれば “情熱” ですが、その意味するところは「好きなことに対する熱意」。子どもが好きなことや興味があることを見つけ、それを主体的にやり続けることがとても大事なのであって、押しつけや型にはめるような大人の言動は慎むべきということです。アメリカでは「自分がどうしたいのか」を常に考えさせる教育が定着しており、その中で子どもは“好きなこと”を見つけていきます。好きなことだからこそ頑張れるわけで、その過程の失敗や挑戦から、忍耐や自己表現、他人との協働、感謝や責任感など多くの前向きな学びを得ます。これは人生の疑似体験として貴重な経験となるはずです。

これらは全て非認知能力の重要な要素です。この力を伸ばすためには、日常生活で何をするか、親がどう接してあげるかが大切になってきます。そこで次は具体的なポイントついてご紹介します。

非認知能力を育む4つのポイント2

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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「非認知能力」を育む、日常生活でのポイント4つ

脳機能開発研究の国内第一人者である川島隆太教授によると、非認知能力を伸ばすには、親子で共有するいろいろな体験が有効だと言います。いわゆる「“リア充” であることが大切」なのだとか。また、特に子どもが小さいうちは “遊び” がとても大切です。夢中で遊ぶなかで経験値が上がり、世界を少しずつ知っていくのです。親はそれに共感してあげることが大事。では具体的にどんな方法があるのかをみてみましょう。

どんな塾よりも脳に効果的な[親と一緒に朝食を食べる習慣]

川島教授が「子どものやる気を引き出す方法」について小学生を調査した結果、「健康的な生活習慣」が強く影響していることがわかったそうです。その中でも「朝食を毎日食べる習慣」の影響が突出しており、さらに「親と一緒に食べる」ことが、子どもの学習意欲に大きく関わっていることが判明したのです。

一緒に楽しく料理して美味しく食べる[料理の習慣]

生活のなかで、親と一緒に何かすることを習慣化することが大事だそう。そのなかで最適なのが料理です。“料理をする” という行動には複雑なプロセス(献立決め・買物・料理・片付け・時間配分・予算管理など)があるので、子どもの「実行機能(行動力)」を育むにはとてもいい方法なのです。また、“家族のための料理” には、思いやりや責任感も育まれます。

想像力、共感性、好奇心、語彙力UP[読み聞かせ習慣]

読み聞かせは親子の大切なコミュニケーション手段のひとつで、すでに実践している方も多いでしょう。その際に気をつけたいポイントがあります。それは、朗読の途中で内容についての質問をすることです。「どうして〇〇はそこに行ったのかな?」「△△はどんな気持ちだったのかな?」など。これにより、想像力、共感性、好奇心、語彙力がさらに培われます。一緒に発想を膨らませて、親子で新しいお話を作るのも楽しそうですね。

認知能力も鍛えられる[ごっこ遊び習慣]

文字や数字など認知能力系の学びは「ごっこ遊び」を取り入れてみましょう。例えば、“お店やさんごっこ”。モノの名前や値段をやり取りすることで、語彙や数字を覚えられます。遊びのなかで学ぶことで、もっと知りたい気持ちが後押しされ、認知能力と非認知能力の最強スパイラルを活用できます。

「非認知能力」を育む、親の接し方ポイント

すぐ褒める(川島教授おすすめ

「相手の顔を見て褒める」、さらに「その場ですぐ褒める」行為が、“やる気” をつかさどる脳の部位にいい刺激を与えるそうです。褒める際は即効性が大事。忙しいからと後回しにせず、いいことをしたらすぐに褒めてあげましょう。

一方通行の教育はやめる(ボーク重子さんおすすめ)

アドバイスはしない

こどもが迷ったり悩んだりしたときにも安易にアドバイスはせず、話を聞いてあげたうえで「自分で考える」ことを促しましょう。

「ダメ!」ではなくて「どうしたい?」

ボークさんは、子どもの行動に対してできるだけ「ダメ!」とは言わず、その代わりに「どうしたいの?」と聞くようにしたそうです。本当にダメな場合は、きちんと根気強くその理由を説明。頭ごなしに子どもを否定せずに、個人として尊重することで、自尊心や責任感も生まれます。

どれも、子どもの気持ちを大切にして、根気強く見守る姿勢と、一緒に経験や感情を共有することが重要なのですね。

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「あなたはそのままで素晴らしい」
それが子どもに伝わったら、その子の人間力はどんどん成長していくことでしょう。そのためには「たくさんの経験」と「やりたい気持ち」が欠かせないことがわかりました。その点から、以前ご紹介した有名な教育法であるモンテッソーリやレッジョ・エミリア、シュタイナーなども非認知能力を伸ばす教育と言え、それぞれの教育法に対しての理解がさらに深まります。

一方で、「親の幸せはこどもに遺伝する」という研究結果があります。自分自身(親)の幸せのための時間、そして親子で体験を共有し一緒に楽しむ時間、両方持つことがとても大事と言えます。「非認知能力」というと小難しく感じますが、4つのキーワードは念頭に置きつつもあまり難しく考えず、まずは “リア充” な生活を目指しましょう。子どもとたくさん楽しい体験をすることが、成長のいちばんの近道なのかもしれませんね。

(参考)
ボーク重子(2018), 『世界最高の子育て−−「全米最優秀女子高生」を育てた教育法』, ダイヤモンド社.
ホウドウキョク|幸せは遺伝する。「世界最高の子育て」をするために知るべきこと
DIAMOND online|米国のエリート教育は何がすごいのか?【後編】
ReseMom|「全米最優秀女子高生」の母・ボーク重子さんに聞くダイバーシティ重視のアメリカ名門校の教育
東大セミナー|非認知能力について
週刊女性PRIME|あの“脳トレ”の川島隆太教授が力説!脳を見てわかった「頭のよい子の朝食、教えます」
All About|世界中が注目する「非認知能力・自制心」を育む方法
All About|世界のトップが実践!子供の「非認知能力」を育むヒント
NHK すくすく子育て|教えて!「非認知能力」ってなに?
リクルートマネジメントソリューションズ|慶應義塾大学 中室牧子氏 2つの重要な非認知能力「自制心」と「GRIT」
マイナビニュース|5歳がタイムリミット!?子供の将来を決める「非認知能力」の育て方
ベネッセ教育情報サイト|幼児期に「非認知能力」を育てるために心がけるべきこと【後編】