2018.3.3

世界の “最新” プログラミング教育事情(イングランド&エストニア編)

編集部
世界の “最新” プログラミング教育事情(イングランド&エストニア編)

2020年度から実施される、小学校教育におけるプログラミング教育の必修化。日本の子どもたちにとって、「コンピュータ」や「プログラミング」が、今よりもっともっと身近なものになる日も、すぐそこまで迫ってきています。では、海外のプログラミング教育の現状って、いったいどうなっているのでしょう?

今回は世界に目を向け、特にプログラミング教育が進んでいる「イングランド」と「エストニア」の事例をご紹介いたします。

イングランド

義務教育の5~16歳を対象に、プログラミング教育が必修化されています(週1回程度(※学年による))。

もともとイングランドでは、教科「Design and Technology」にIT(Information Technology)が内包されていましたが、1995年のナショナルカリキュラムの改定により「IT」を独立教科として新設。その後「ICT」という名称に置き換わり、コンピュータの操作スキルやアプリケーションの使い方に重きが置かれて教えられてきました。

ところが2010年初頭に、教科「ICT」においてコンピュータサイエンスが深く学習されていないことが、政府内や産業界から指摘されました。これを受け、2013年9月のナショナルカリキュラム改定において、教科「ICT」は「Computing」へと変わります。アルゴリズムの理解やプログラミング言語の学習を取り入れるなど、コンピュータサイエンスの内容をより充実した学習内容となり、2014年9月から正式に導入されています。

教科「Computing」は、CS(Computer Science)、IT(Information Technology)、DL(Digital Literacy)の3分野で構成されています。指導内容としては「アルゴリズムの理解」「プログラムの作成とデバッグ」「論理的推論によるプログラムの挙動予測」「情報技術の安全な利用法」などが挙げられています。

初等教育ではScratchやLOGOといったプログラミング言語を使用しており、中等教育に入ると、いま世界的にも注目されているPythonを扱うところもあります。国が指定する教科書は特にないようですが、一部の出版社からは指導者用の教材パッケージが刊行されているようです。

イングランドとエストニアのプログラミング教育2

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エストニア

人口130万人という小国ながら、IT教育に関して注目されている国がエストニアです。じつは、あのインターネット通話サービスであるSkypeが生まれた国でもあります。プログラミング教育が義務化されているわけではありませんが(※教育・研究省の意向としても、今後も義務化される予定はないとのこと)、小学校1年生からプログラミング教育が実施されています

具体的には、2012年9月に “ProgeTiiger” というプログラミング教育推進プログラムが開始され、1~12年生を対象にすべての公立学校でプログラミングの授業を選択できるようにすることが目標とされています。

プログラミング教育を実施しているベーシックスクールの一部では、選択教科である「Informatics(Informaatika)」の中でプログラミングが扱われています。ロボットプログラムやゲームプログラムを用いて、プログラミングに興味を持たせる活動に重点を置いている学校が多いようです。

どの学年でどのプログラミング言語を教えるかは国としては定めていませんが、ベーシックスクールではScratchやLightbotなどが使用されることが多いのだそう。イングランド同様、国が指定するテキストはありませんが、プログラミング教育推進の団体が作成した無償の教材が一部の学校では使われています。

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イングランドのほか、ロシアやフィンランドなどでも、小学校教育でのプログラミング教育が必修化されています。

しかし、具体的なカリキュラムや授業内容の策定がなされているというわけではなく、各学校や各教員の裁量に委ねているという国が多くを占めています。また、プログラミングを教える教員側の人手不足やスキル不足も、各国が共通して抱える課題であるようです。これは当然、日本も直面しなければならない問題でしょう。

日本に先んじてプログラミング教育が行なわれている国々の事例から、何か参考になることがあるといいですね。

(参考)
文部科学省|小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)
文部科学省|諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究(PDF)
東洋経済オンライン|バルト海の小国が「IT教育」に懸けるワケ