2018.9.6

絶対音感はどう養う? 子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。

[PR] 編集部
絶対音感はどう養う? 子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。

「自分は身に付けられなかった絶対音感を、我が子にはぜひ身に付けさせたい!」
「絶対音感は子どものうちにしか身に付けられないと聞いたけど、どうすれば身に付けられる?」

子どもにピアノを習わせていたり、これから楽器を習わせようと考えていたりする親御さんたちにとって気になるのが、「音感」のことではないでしょうか。そもそも音感とは何なのか。音感を身に付けるにはどうしたらいいのか。音感に関する親御さんの疑問にお答えします。

音感とは?

音感とは、音の高さに対する感覚のこと。音の高低を認識できる力のことを音感と言います。

音感は、音の高さの認識の仕方によって、絶対音感相対音感に分類されます。それぞれの意味は次のとおりです。

絶対音感

ある音を聞いて、その音の絶対的な高さを即答できる能力のこと。音を聞くだけで、ピアノの鍵盤の「ドレミ」を言い当てられる力。

相対音感

ある音の高さを、基準の音との比較によって判断できる能力のこと。例えば基準の音として「ド」を聞き、「ド」とどれぐらい離れているかによって、別の音の高さを認識できる力。

絶対音感についてもう少し説明を加えます。絶対音感と呼べるのは、黒鍵を含めたピアノの鍵盤の88個の音すべてを言い当てられる音感。#や♭のつかない白鍵の音だけなら言い当てられるという場合は、厳密には絶対音感とは言わないのだそう。

また、絶対音感がある人は、チャイムやサイレンの音といった日常生活の音の高さを言い当てることができる、などとよく言われますよね。実際はこうした日常音は、ピアノの鍵盤に当てはめられる音ばかりではなく、例えば「ド」と「ド#」の間にあるような音も多いもの。より精度の高い絶対音感を持っている人が、これらの音の高さを厳密に言い当てることができるようです。

それから、絶対音感を持っていれば相対音感も兼ね備えている、というわけではありません。両方持っている場合もあれば、どちらも持っていない場合もあり、片方の音感だけを持っている場合もあります。音感の持ち方は人それぞれだと言えるのです。

子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。2

絶対音感が身につく時期はいつ?

絶対音感を生まれながらにして持っている人は、20万人に1人だと言われています。たいへん稀有な能力だと言えますよね。ですが、適切な時期にトレーニングを行なえば、絶対音感は身に付けることが可能なもの。では、絶対音感を身に付けるためのトレーニングはいつ頃すべきなのでしょうか。

人間の感覚のなかでも早期に成長し完成するのが聴覚。実は、お腹の中にいる赤ちゃんはすでに耳が聞こえています。その聴覚が本格的に発達し始めるのは、言葉を習得し話せるようになる2歳頃から。聴覚の発達は4~5歳で臨界期(*)を迎え、8歳には聴覚が完成。人間の聴覚はとても早い時期に完成してしまいます。「絶対音感は小さいうちにしか身につかない」と言われるのはこのためなのです。

(*臨界期……ある能力を身に付けるための最も適切な時期。その時期を逃すといくら努力してもその能力を身に付けられなくなる限界の時期。)

聴覚は、音の刺激を繰り返し受けることによって発達していきます。子どもに絶対音感を身に付けさせたいなら、聴覚の臨界期にあたる4~5歳の時期に、絶対音感を養う反復トレーニングをさせるのが効果的です。そして一度子どもに絶対音感を身に付けさせたあとは、楽器練習などを継続することによって絶対音感を維持する努力をしなければなりません。その努力なしでは、せっかく習得した絶対音感は失われてしまうのです。

一方の相対音感は、聴覚の臨界期を過ぎた子どもや大人でも、訓練によって身に付けることが可能です。高い音と低い音を聞き「どちらが高いか」と聞かれればほとんどの人が答えられるように、相対音感は多くの人がある程度は備えているもの。この相対音感の精度は、トレーニングを積むことによって高めていくことができます。

子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。3

音感を養うメリットとは?

絶対音感を持っている人はとても希少なため、絶対音感のほうが優れていて相対音感のほうが劣っている、と理解されることがあります。絶対音感を持っていることにメリットがあることは確かですが、相対音感しかないからといって音楽的な才能が劣っているとは言えません。そこでここからは、これらの音感を養うメリットについて紹介しましょう。

■ 絶対音感は脳の発育によい影響を与える

絶対音感を持つ子どもは、そうでない子どもに比べて、IQが10ポイント以上も高いという統計的なデータあるのだそう。また、ドイツのハインリッヒ・ハイネ大学によって以下のような研究結果も発表されています。幼児期に絶対音感を養うことは、音楽的な力以外にもよい影響をもたらすと言えるでしょう。

職業音楽家と音楽を学んだことのない素人を対象にMRIで左右の脳の状態を比較してみたところ、音楽家の中でも絶対音感を持たない19名の脳は、素人の人たちとほとんど変わらなかったのに対して、絶対音感を持つ11名は、左脳の側頭平面(言語の理解や数学的能力に深く関係していると考えられている箇所)と呼ばれる箇所が、右脳の側頭平面に比べ、2倍近い大きさに発達していることがわかりました。

(引用元:一般社団法人日本こども音楽教育協会|プログラムについて

■ 音感があると楽器習得に役立つ

絶対音感と相対音感のどちらも、楽器の上達には大いに役に立つ能力です。

まず絶対音感を身に付けておくと、楽譜から音を読むだけでなく、耳からも音を認識できるので、楽器の指導者から教えられた内容をより早く理解することができます。聞くことへの集中力が増し、音色の繊細な違いにも気づけるようになるでしょう。特にピアノのような絶対音楽器の習得には有利です。一方相対音感は、絶対音以外の弦楽器や声楽の習得に生きてきます。これらは相対的に音を決めるものであり、自分で音程を探る必要があるためです。

もちろん、弦楽器や声楽を学ぶ場合にも、絶対音感があれば音の正確性が増すことは言うまでもありません。また、絶対音感はあっても相対音感を持っていない場合、音の高さがいつもと違う楽器だとうまく弾けない、という問題が起きてしまうこともあるのだそう。楽器習得には両方の音感を持っていることが有利に働きそうです。

■ 音楽を職業にするうえで役立つ

子どもに音楽をより専門的に学ばせ、将来音楽活動を仕事にする道を用意してあげたいと考えているなら、どちらの音感も身に付けさせるべきでしょう。演奏家として活動するなら、両方の音感が重要であることは言うまでもないこと。作曲家になるにも、心地よい音の組み合わせを作るうえで音感は欠かせません。また歌を職業とする場合にも、音を正確に歌える能力は不可欠です。

ピアノなどの楽器練習を「子どもの習い事」として終わらせるのではなく、将来の可能性をできるだけ広げてあげるためにも、音感を養うことはとても大切なことなのですね。

子どもに身につけさせたい、絶対音感と相対音感のトレーニング法。4

絶対音感、相対音感のトレーニング法

ではここからは、絶対音感と相対音感のトレーニング法についてご紹介します。

■ 絶対音感のトレーニング法

子どもが6歳ぐらいまでの小さいうちは、絶対音感を養う絶好の時期です。この幼少期にピアノを学ぶことで絶対音感を習得できる、と語るのは、日本こども音楽教育協会代表理事の滝澤香織氏。ピアノは絶対音にダイレクトに触れられる楽器なので、幼少期にピアノを学べば自然と絶対音感を身につけられる可能性が高まるのです。

また、絶対音感を養う専門的なトレーニングを受けるのもおすすめです。絶対音感の習得のために開発されたプログラムで、音の聞き取り練習(単音、和音)や歌唱練習などを行なうのです。個人差はあれど、適切なトレーニングによって早い人なら1年足らずで絶対音感は身につくのだそう。音楽教室に通うか専門のプログラムを利用しながら、教室や自宅などで毎日トレーニングを行なうのが良いでしょう。通信教育もあるそうですよ。

■ 相対音感のトレーニング法

絶対音感を身に付けられる年齢を過ぎている場合は、ぜひ相対音感を養うトレーニングを行ないましょう。絶対音感を身に付ける場合と共通して言えるのは、日常的に楽器や音楽に触れることが大事だということ。楽器の練習を通して音程の差をスムーズに把握できるようになれば、次第に相対音感が鍛えられます。絶対音感と同様に、相対音感を養う専用のトレーニングも開発されています。

そのためには、必ず調律された楽器を使うようにしてください。また、楽器が正しく響くことも大切なので、音響に配慮して設計された防音室や練習室でトレーニングができるとなお良いでしょう。もちろんこのことは、絶対音感を養う上でも重要なポイントです。

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絶対音感も相対音感も、音楽や楽器に日々触れることと、適切な時期にトレーニングを行なうことで身に付けることが可能なもの。ただし、いくら子どもに音感を身に付けさせたいからと言って、無理強いになってしまってはいけません。音楽教育が専門の岡山大学・小川容子教授は次のように述べています。

たとえ専門的な音楽教育であっても、絶対音感を身に付けるために「ド」の音を覚えるのではなく、楽しくレッスンを続けることの方が、意味が大きいと思います。(中略)絶対音感の有無は、音楽を親しむうえではひとつの側面にすぎないということですね。

(引用元:ON-KEN SCOPE|「音感(おんかん)」は測れるのか

大事なのは、子どもの音感習得に親が躍起になることではなく、子どもが音楽を楽しめること。このことを忘れずに、子どもに心から音楽を楽しませながら、可能性を広げてあげたいものですね。

(参考)
一般社団法人日本こども音楽教育協会|プログラムについて
スガナミ楽器|子どもの「音感」を身につける方法とは?
小林音楽教室|絶対音感と相対音感の違いと成長させる方法
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアノを通して育まれる “子どもの能力” とは?
一音会ミュージックスクール|ソルフェージュレッスン
一音会ミュージックスクール|絶対音感トレーニングレッスン
ON-KEN SCOPE|「音感(おんかん)」は測れるのか
まいとプロジェクト|第2回 幼児教育における「臨界期」って何?(後編)