教育を考える 2019.11.23

富裕層の家庭はやっている “ある習慣”。「決められない大人」にさせないために

編集部
富裕層の家庭はやっている “ある習慣”。「決められない大人」にさせないために

今はまだ手がかかる幼いわが子も、いずれ大人になれば自分で自分の人生を切り開いていかなければなりません。そのためにも必要なのが、人生の岐路に立ったときに自分で決める力=決断力です。

しかし今、大学生になっても社会人になっても自分で決断することができず、進むべき道を親に決めてもらう人が増えているそう。今回は、自分で決められない大人にならないために、子どものうちからできることを詳しくお教えします。

“オヤカク” “代理婚活”……人生の選択を親まかせにする子どもたち

じつはいま、大学選びや就職活動、さらには結婚に至るまで、子どもの人生を大きく左右する出来事に、親の意向が絡んでいるケースが増えているといいます。

明治大学文学部教授で臨床心理士の諸富祥彦先生は、大学のオープンキャンパスの相談コーナーでは、子どもを差し置いて、「うちの子はこういう子で、だからこの大学がいいと思って……」と饒舌に語る親御さんの姿をよく目にするそう。一方、子ども自身はというと、親ほど熱心でも積極的でもなく、ほとんど無言らしいのです。

また、就活でも同様のケースが。まるで親自身が就活の中心であるかのように、「本当にその会社大丈夫なの?」「もっと有名な会社にしたら?」「転勤がない地元の会社にして」など、口を挟んでくるのです。このように、親が子どもの就活に深く関与し、内定後でも親の反対で辞退するケースが増えていることから、「オヤカク」を取り入れる企業もあるといいます。オヤカク」とは、会社資料や手紙を “親に” 送付したり、電話や直接訪問して “親に” 挨拶をしたり、“親に” 同意書をもらったりと、親の納得や承諾を確認することを意味します。

入社後も、子どもが働く会社に親がしょっちゅう電話をしてきて上司に連絡をとったり、「体調が悪いので今日は休ませます」と子どもに代わって電話をしてきたりと、社会人になった息子や娘をいつまでも幼い子ども扱いしているケースも目立つそうです。

さらには婚活市場においても、親をターゲットにすることが増えてきています。メディアでもたびたび取り上げられる代理婚活は、その最たるものです。先に親同士が相手の情報を確認して、双方が合意すれば、写真と身上書を交換して持ち帰ります。その後、子ども同士が希望したらお見合いをする、というこのシステム。親が勝手に申し込んでいるケースもあるとしつつも、ある参加者の息子は、母さんが選んだ人なら間違いない」と、母親を信頼してまかせているといいます。

このように、自分の人生にもかかわらず、大人になってからも大きな決断を親まかせにしている子どもが増えている背景には、どのような問題が潜んでいるのでしょうか。

富裕層の家庭はやっている “ある習慣”2

「子育て費用」の総額は22年間でいくらになる? 調査結果をもとに計算してみた。
PR

「決められない大人」を作り上げるのは、幼少時の “ある習慣”

「自分で決められない人間」に成長してしまう最大の要因は、子どものうちから「自分で自分のことを選択する」経験が圧倒的に少なかったこと諸富先生は「子どもの “自分で選ぶ力” を親が奪ってきた結果、自分で自分の人生を選べる人間に育ててこなかったことのツケが、大学選びや就活などの時点で出てくる」と指摘します。

ビジネスコーチの石川尚子さんも、「自分が何をやりたいのか、どんな大人になりたいのか、考える機会を与えられないまま大人の言う通りにしていることが、大きくなってからの意思決定力の弱さにつながっている」と述べています。その原因として、「言われた通りにしないと叱られる」「言われた通りにする子が良い子として育った」などが考えられますが、いずれにせよ、親の接し方が大きな影響を与えていることは間違いないでしょう。

小さいうちから自分で選び、決断する力を養うことの重要性を説くのは、教育研究家で家庭教師集団「名門指導会」代表の西村則康さん。西村さんは、「小さいころに判断の練習ができた子どもは、大きくなったときに思い悩むことがあっても『待てよ、こんなに考えても解決しないってことは、視点を変えてみれば解決法があるんじゃないか? よし、見方を変えてみよう』と乗り越えられる」といいます。つまり、小さいうちから 決断するトレーニングを積むことで、壁にぶつかっても自分の判断基準をもとに対処できるようになるのです。

富裕層の家庭はやっている “ある習慣”3

幼少期に決断する機会が多いほど社会で成功する!?

ポジティブ育児研究所代表の佐藤めぐみさんによると、幼少期にたくさん決断している子は、大人になってから大成しやすいというデータがあるそう。

ドイツの大学が行なった研究結果によると、子ども時代に「決められたスケジュールの中で遊んでいた」と答えた人たちよりも、「自由に遊んでいた」「自分の好きなことをして過ごした」と答えた人たちのほうが、大人になって社会的に大きく成功している傾向が高いことがわかりました。つまり、子どものころに “自分で” 遊び方や時間の使い方を決める習慣があった人のほうが、社会的なステータスや仕事の満足度、また交友関係の豊かさなどの数値が高かったのです。

また、米国公認会計士の午堂登紀雄さんは「社会で成功するには、適切な判断力や重要な局面で意思決定できる決断力が必要」とし、海外の富裕層の家庭では、幼少期から “自分で決める習慣” をつけるようにしているという見解を述べています。

たとえばそれは、ほんの小さなことでもいいそう。自分が使う文房具、その日に着る洋服、やりたい習い事、レストランで食べたいメニューなど、すべてを子ども自身に選ばせるのです。「なんでもいい」や「どっちでもいい」は禁句で、大事なのは自分の意思を表明する習慣を持たせることだといいます。

子どもの意思決定力を育むチャンスは、日常生活の中でいくらでもあります。ただし、その際にいくつか親が意識しなければならないことがあるので、次に詳しく説明していきましょう。

富裕層の家庭はやっている “ある習慣”4

「決められる大人」になるためにできることと親の心がけ

わが子には「決められる大人」になってほしい! そう願う親御さんに向けて、子どものうちからできることをいくつか紹介していきます。ぜひ参考にしてくださいね。

2~3歳までは二者択一にして尋ねるのがおすすめ

日本小児学会会長で医学博士の高橋孝雄先生によると、子どもはだいたい2歳になるころには、2つの選択肢の中からひとつを選択することができるようになるそう。したがって、小さな子どもには「今日の夜ごはん、なにがいい?」ではなく、今日の夜ごはん、ハンバーグとカレーライス、どっちがいい?と聞くようにするとスムーズに答えることができ、決断力を養う訓練になります。

4歳くらいになると、4つの選択肢の中からひとつを選べるまでに成長するので、子どもの意思決定能力の成長過程を見ながら選択肢を増やしていってもいいですね。

具体的な条件を言語化して伝えてあげる

家庭教育の専門家・田宮由美さんは、子どもがなかなか決断できないのは「頭の中で決断する材料が整理しきれていない場合がある」と指摘します。そんなときは、親が判断の材料になる条件を具体的に伝えてあげるといいそう。

たとえば、今日着る洋服を選ぶとき、半袖のシャツと長袖のシャツ、どっちを着る? 今日は少し寒くなるみたいよと聞いてあげると、その条件をもとに子どもは自分で考えて「寒くなるなら長袖にする」と決断できます。

富裕層の家庭はやっている “ある習慣”5

どうしても選択できなければ消去法で

優柔不断でどうしても決めることが苦手な子もいますよね。田宮さんはその場合、心が動かないほうや嫌いなほうを尋ねると、けっこうすぐに答えられることもあるといいます。

レストランでたくさんのメニューの中から選ぶとき、苦手なものを最初から除外して選択肢を減らす、学校の宿題が複数あるのなら「どれを今したくないか」といった言葉がけをする、などといった工夫が決断を促すことにつながります。

子どもの判断が明らかに間違っていたら?

子どもが自分で決断することは嬉しいものの、その判断が明らかに間違っていたらどうしますか? 高橋孝雄先生は、「ここで大事なのは『なんで……』という顔をしないこと」と注意します。親の考えや嗜好と違っていても、まずは受け止めてなるほど。そういうアイデアもあるねと頷いてあげることが大切です。

そのうえでかけてあげる言葉は、次のようなものです。

午堂登紀雄さんは、子どもの判断が明らかに間違っていたり、思い込みや先入観による浅い判断だったりした場合、こういうことが起こる可能性はない?」「もしこうなったらどうする?など、親が追加情報を提供するといいと述べています。

本来、子どもは持っている情報が少なく、選択肢も少ないものです。そこで親ができるのは、子どもの力だけでは集めきれない情報を提案すること。大人として、可能なかぎりの選択肢を提示することで、子どもの世界観を広げるサポートができるでしょう。

***
佐藤めぐみさんは、「子どもの決断力が鈍っているのは、親自身がなかなか自分で決められない傾向にあることも原因のひとつ」と指摘しています。親御さん自身が、○○がいいと言われました。どう返答したらいいですか?」「○○がいいと聞きました。私もやったほうがいいですか?と、自分で決められずにいるのではないでしょうか。まずは親御さんが積極的に自分で決断し、その姿を子どもに見せてあげることで、子どもの決断力も磨かれていくはずです。

(参考)
PHPファミリー|わが子を「自分で決められない大人」にしないために
ダイヤモンド・オンライン|企業も警戒する「親子就活」の実態、親の反対で内定辞退も!
講談社オフィシャルウェブサイト 現代新書|「ウチの子供と結婚して…!」“代理婚活”に奔走する悲痛な親心
ベネッセ教育情報サイト|子どもの「自分で意思決定する力」はどうすれば高まるのか?[やる気を引き出すコーチング]
KIDSNA|「決められない子」にしないために。これからの時代に必要な判断力とは
AllAbout 暮らし|決断力のある子を育てるために!親が注意すべき事
プレジデントウーマン|富裕層が子供の教育で重視する4つのこと
Hanakoママweb|自分で決めさせる。子どもの人生を左右する「意思決定力」の育て方【小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て・11】
AllAbout 暮らし|優柔不断な子供の決断力を高める!親の言葉のかけ方