2018.5.15

世界で通用する「話すちから」を鍛えよう! 『アルバ・エデュ』竹内明日香さんインタビュー【第1回】

編集部
世界で通用する「話すちから」を鍛えよう! 『アルバ・エデュ』竹内明日香さんインタビュー【第1回】

自分の思いやアイディアを、自分の言葉で情熱をこめて論理的に伝え、相手の心をも動かしていくーー。

そんな「話すちから」を育てるプログラムが、文京区の小学校をはじめとした教育現場で広がっているとのこと。さっそく詳しい内容を聞いてきました。

今回お話をうかがったのは、経済産業省「第6回 キャリア教育アワード優秀賞」を受賞した、一般社団法人 アルバ・エデュ代表の竹内明日香さん

14歳と12歳の男の子、そして5歳の女の子と、3人の子どもを持つ母である竹内さんは、「世界で通用する『話すちから』を、これからの日本をになう次世代に身につけてほしい」と考え、この活動を始めたそうです。

「話すちから」とはいったいどんな力なのか。実際のプログラムは具体的にどんな内容なのか。世界の中の日本はこれからどうなってしまうのか!? など、とにかくわかりやすく教えていただきました。

アピールすべき場面でアピールすることが大事

――本日はよろしくお願いいたします。まず、「話すちから」に注目した理由を教えていただけますか?

竹内さん:
私は11年ほど銀行員をやっておりました。国際営業や審査というかたちで、日本の大企業とかかわっていたのですが、その過程で、「日本人はもっとうまく発信すべきではないか?」と感じていたのです。

そして、「情報発信」と「海外事業の支援」をする、法人向けの「アルバ・パートナーズ」という会社を立ち上げました。その企業向け事業の中で、海外での商談に同席することもあったのですが、やはり日本人の「話すちから」は弱いのです。

――どんな場面でそう感じたのでしょう?

竹内さん:
たとえば、プレゼンなのに「アピールするべき話」をズバっと持っていかずに、まず資本金や会社の沿革から話し始めてしまったり、用意してきた資料の一丁目一番地から説明を始めてしまう……それもすごく丁寧に!

相手は日本の企業に投資をするかどうか品定めをしているのに、アピールせずに謙遜している。もっとはったりを利かせて「こんなにすごいぜ!」というようなプレゼンをしたら良いのに、もったいない! と思っていました。

――でも皆さん、竹内さんのアドバイスでプレゼンに変化があったのではないですか?

竹内さん:
もちろん変化はあります! ただ、変化率や幅は人によります。以前、とても吸収が早い方がいたのですが、ご自身の楽器の練習と並行して「毎日コツコツ練習をしました」とおっしゃっていました。その方は、その後どんどん「話すちから」がアップして、なんと私も同席したプレゼンの世界大会で金賞を取られました!

――それはすごいですね! あれ?……ちょっと待ってください、プレゼンに練習が必要なのですか?

竹内さん:
そうなんです、そこが日本人の損をしているところとも言えます。プレゼンはスポーツや芸術ほどにはセンスを問われない分野ですから、「ノウハウ×練習」で上手になるんですよ! プレゼンは筋トレと一緒なのです。

――衝撃的なお話です……! プレゼンが上手い人は、話しのセンスがよくて、人前で話すことが好きなのかと思っていました。

竹内さん:
皆さんそう思っていますが、違いますよ! それに、日本人は「自分のプレゼン能力に自信がない」という人が多いです。そもそも子どもの頃から自己肯定感が低いんです。「自分に満足している」という子が少ないのですよね。

そしてアメリカの若者の同じ質問への答えを見てみると、その比率は日本人の6倍以上。そんな人たちと、いざ商談で交渉しますといったところで、もう土台が違いすぎる気がしませんか?

「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」における国際比較
(画像引用元:首相官邸|文部科学省「我が国の子供の意識に関するタスクフォース」 における分析結果

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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プレゼンで怒り出す欧米人。実はそれもテクニック!

――自分に自信がないから、「まず我が社の資本金は……」と話し始めてしまうのでしょうか。

竹内さん:
それもあるかもしれませんが、まず、学校の授業の進め方も、日本と海外では全然違います。日本は、教科書に沿って、静かな教室で、先生が板書しながらですよね。海外のように、教科書なしでバンバン授業が進んだり、先生からいきなり意見を求められたりはしないですもんね

商談で、日本のクライアントさんが動揺するパターンはいくつかあるのですが、そのひとつは「いきなり質問をされるパターン」です。

――いきなり質問だなんて、恐ろしすぎます!

竹内さん:
ほかには、「(資料を読まずに)Q&Aから始めたいと言われるパターン」「(順を追って説明をしたいのに)説明しているページにとどまってくれず、資料をどんどんめくられていくパターン」もあります。資料をめくられるパターンは、そのあと「資料ならあとで自分で読んでおくから、じゃあ今日はありがとうございました」って、途中で切り上げられてしまうことも。

あとは、急に怒り出したりなど、演技が入ってくることもありますね。

――交渉時に演技ですか!?

竹内さん:
そう、テクニックの一つなんです。先ほどお話しした「相手が動揺するしぐさ」も、全部テクニック。日本でもようやく増えてきましたが、プレゼンや交渉の前にシナリオライターやボイストレーナーといったコンサルタントをつけたりするのですよ。大事な交渉やプレゼンは、そうやって綿密に練られた戦略の上での作品という感じでしょうか。

オリンピック・パラリンピック東京大会の招致のときに、日本がイギリスのコンサルタントを付けた話をご存知の方も多いと思います。私は企業向けにそんなことをやっているんです。

ですから、訓練された人たちを相手に、子どものうちから教育もなく、練習もしないで、いきなりセンスで勝負だなんて、無理な話ですよね……

先日、外交官の友人と話していたのですが、大事な条約の交渉をするときに重要なことは、内容はさることながら、さらに「自分のメッセージをどれだけ効果的に相手に伝えられるか」なのだそうです。まさにプレゼンですよね。

その友人は私から見たら、とても優秀。それなのにその友人でさえ、欧米人は子どものころからの鍛えられ方が違っていて、彼らには一日の長があると言っていました。そして彼は「ほかの省庁はさらに“話すちから”で負けている部分がある」とも話していましたね。

また、学問の世界では、学会での発表の上手い下手で、ほかの論文への引用数が変わってくると言われます。印象に残る論文は別の論文に引用されて……結果的に評価が高くなります。「日本の論文の引用が少ない要因は、プレゼン力の差なのではないか?」と大学で教鞭をとる先生がおっしゃっていました

私は事業会社や金融機関での仕事の際に焦りを感じていましたが、官庁でも、学問の世界でも同じことが起こっている……日本はどうなってしまうんだ!? とゾッとしますよね。これはもう「話すちから」を子どものうちから鍛えなければいけない! と考えました。

竹内明日香さんインタビュー第1回2

出る杭、上等! 出すぎた杭は打たれない

――なるほど、大人に教えるだけはなく、子どものうちからも鍛えるのですね。アルバ・エデュでは、ワークショップや出前授業という方法をとられていますが、どうしてお教室にしなかったのでしょうか?

竹内さん:
お教室も考えたのですが、何度も通うようなレッスンよりも、カンフル剤のように1回でバシっと効いて、その武器で一生生きていけるようにしてあげたいと思ったんです。短時間でギュッと授業をして、「うわっ!」っと気付いて、その後はコツを練習することでその子の一生が変わるような。そんな授業を目指しています。

それに出前授業の際には先生にも授業を聴いていただくので、その後も先生が「発言するときは、こういうことに気をつけていこうね」と、生徒たちに「話すちから」のポイントを教え続けてくれますしね。

ワークショップや出前授業に参加したお子さんの保護者の方に、「学校公開に行ったら、おとなしかったうちの子が発言してたんです!」と言われるのは、本当に嬉しいです。

――今まで発表や発言に積極的でなかった我が子が、皆の前で堂々と発表する姿……考えただけで涙が出そうですね。

竹内さん:
そういう子をどんどん増やしていきたいと思っています。

私は出る杭上等だと思っていまして、「もっと出ろ~!」と(笑)。なぜならば、出すぎた杭は打たれないからだから出すぎた杭をいっぱい作るというのが目標です。そして、まずは公教育向けのカリキュラムの導入を急いでいますが、ゆくゆくはリーダーシップ教育のようなプログラムも考えていきたいですね。

そして「話道塾」というのをいつか作りたい、そんな夢もあります!

竹内明日香さんインタビュー第1回3

【プロフィール】
竹内明日香(たけうち・あすか)
東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)にて国際営業や審査等に従事したのち独立、2009年に海外事業支援と情報発信支援を行うアルバ・パートナーズを設立。さらに子どもたちや若者たちの話す力を伸ばすべくアルバ・エデュを設立。プレゼン研修や学校向け授業、女性活躍や働き方改革に関するセミナーを行っている。音羽の森オーケストラ「ポコアポコ」主宰、公立小元PTA会長で3児の母。

【今後のアルバ・エデュの養成講座 開設日時 】
●ご自身でプレゼン講座を開催してみたい方向け☛
Speak up! 認定アソシエイトインストラクター資格(I-Aコース)養成講座
・2018年6月 1日(金)10:00-12:00、13:00-16:00
 2018年6月 2日(土)10:00-12:00、13:00-16:00 計2日10時間
・2018年6月16日(土)10:00-12:00、13:00-16:00
 2018年6月17日(日)10:00-12:00、13:00-16:00 計2日10時間

●学校で子どもたちにプレゼン授業をしたい方向け☛
Speak up! 認定 出前授業講師 (I-Cコース)養成講座
・2018年5月29日(火)19:00-21:00 – 6月19日(火)19:00-20:00
・2018年6月 8日(金)19:00-21:00 – 6月22日(金)19:00-20:00 計2日3時間

●主に学生さんでプレゼン授業のお手伝いをしてみたい方向け☛
Speak up! 認定ベーシック・ファシリテーター(FT-2級)養成講座(主に学生さん向け)
・2018年5月21日(月)16:00-17:00
・2018年5月22日(火)8:00-10:00
・2018年5月24日(木)8:00-10:00 各2時間
詳しくはこちらまで→
お申し込みはこちらから→
お問合せはこちらまで info@alba-edu.org

『アルバ・エデュ』ホームページはこちら→

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やはり世界の中の日本は「話すちから」が弱かったのですね。でも、竹内さんの活動がもっともっと広がっていけば、日本は必ず強くなれるのではないでしょうか。

今回、竹内さんのお話を聞いて、「まずは親である自分が発言力を上げていかなければ」と感じたのは筆者だけではないと思います。子どもと一緒に親も成長することができたら、日本の成長もスピードアップするかもしれませんね!

第2回インタビューでは、「話すちから」とはいったいどんなスキルなのか、「考えるちから」「伝えるちから」「見せるちから」など、具体的に教えていただきます。

■ 『アルバ・エデュ』竹内明日香さん インタビュー一覧
第1回:世界で通用する「話すちから」を鍛えよう!
第2回:子どもたちが国際社会で活躍するために必要な「話すちから」
第3回:グローバル社会で通用する人材に必要な「話すちから」~子どもたちの将来の職業はどうなる~