教育を考える 2025.5.22

【FPが解説】未就学児〜小学生の教育費・習い事費はいくら? 家庭の“リアルな出費と貯金”

【FPが解説】未就学児〜小学生の教育費・習い事費はいくら? 家庭の“リアルな出費と貯金”

「うちの子の習い事、多い? 少ない?」「教育費っていくらかかるの?」「将来のために、どれくらい貯めておけばいいの?」子育て中のパパ・ママなら、こんな疑問を持ったことがあるのではないでしょうか。特に未就学児から小学生の時期は、「これからどんどんお金がかかるって聞くけど……」と不安になることも多いはず。

この記事では、最新の統計データやアンケート調査をもとに、子どもの年齢別にかかる教育費や習い事の費用、そして将来に向けた貯金の目安をファイナンシャルプランナー監修のもとわかりやすく解説します。

監修者プロフィール


水野圭子さま

水野圭子(みずの・けいこ)株式会社K’sプランニング 代表取締役

1級ファイナンシャルプランナーとして15年以上の相談実績を持つ。家計の見直しや教育資金の準備、資産形成についてわかりやすくアドバイスし、企業向けの確定拠出年金やライフプランセミナー研修など、大人のための金融教育にも力を入れている。

 

教育費って、どこまでが「教育費」?

教育費」にはどんな費用が含まれているのでしょうか。文部科学省の「子どもの学習費調査」では、以下の3つの費用を合計したものを「学習費総額」としています。

  • 学校教育費:教材費、学級費、PTA会費など
  • 学校給食費:小中学校の給食代(保育園・幼稚園は除く)
  • 学校外活動費:塾・習い事・通信教育・スポーツ・文化活動など

未就学児であっても、「保育料」の他に「習い事」や「園外活動費」などがかかります。また、実際には食費や衣服費、医療費など日常生活全般にかかる「養育費」も別途必要です。教育費は子育てにかかる費用の一部に過ぎません。

貯金イメージ図

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【年齢別】2〜3歳(保育園・未就園児)の月額教育費

  • 保育料・教材費など:月約1.5万円(無償化対象外の世帯の場合)
  • 習い事費:月約4,000〜5,000円(1〜2個程度)

保育料は家庭の収入によって変わります。住民税非課税世帯などは無償化の対象となり、ほとんど負担がありません。

またベネッセ教育総合研究所の「第6回幼児の生活アンケート調査(2022年)」によると、3歳児の約40%が何らかの習い事をしています。この時期に人気なのは「水泳(スイミング)」「英語教室」「リトミック」。1つか2つの習い事をさせている家庭が大半のようです。ある調査によると習い事を始める平均年齢は5歳2か月とのことですが、近年は3歳前後から始める家庭も増えています

お子さんの興味や体力に合わせて、無理なく続けられるものを選ぶのがポイントです。この時期から始める習い事は、「楽しく体を動かす」「音感を養う」といった基礎的な能力を伸ばすことが目的になることが多いようです。

水泳の習い事

【年齢別】4〜6歳(幼稚園・こども園)の月額教育費

  • 園にかかる費用:月約1.3万円(公立・無償化後)私立
  • 習い事費:月約6,000〜8,000円(2個が最も多い)

幼児教育・保育の無償化制度により、3〜5歳児の保育料は原則無料になりました。ただし、私立幼稚園の場合は無償化の上限を超える部分や、給食費・行事費・バス代・延長保育料などは別途負担が必要となり、月約2.6万円と公立の倍の費用がかかります。

また、この時期になると、「ピアノ」「体操教室」「英会話」「通信教育」などが加わり、2つ以上の習い事をしている家庭が増えてきます。未就学児全体では平均1.8個の習い事をしています。

子どもの体力も増し、興味の範囲も広がるこの時期は、「体を使う習い事」と「知的好奇心を満たす習い事」をバランスよく組み合わせている家庭が多いようです。

ピアノの習い事

【年齢別】小学1〜3年生の月額教育費

  • 学校関係:月約1.8万円(公立、給食費・教材費・PTA会費など)
  • 習い事費:月約9,000〜1.2万円(2〜3個)

文部科学省の「子供の学習費調査(令和3年度)」によると、公立小学校の学習費総額は年間約35万3千円、私立では約166万7千円と大きな差があります。

この時期は「通信教育」「プログラミング教室」「そろばん」「サッカーやバスケなどのスポーツ」「バレエ」など、選択肢が広がります。学校生活が始まり、子どもの個性や好みがはっきりしてくるこの時期は、子ども自身の興味に合わせた習い事を選ぶ家庭が増えます。また、学校の勉強を補完するための通信教育や学習系の習い事を始める家庭も多くなります。

オンラインの習い事

【年齢別】小学4〜6年生の教育費

  • 学校関係: 月約2.2〜2.8万円
  • 習い事費: 月約1.3〜1.8万円(3〜4個も珍しくない)

高学年になると修学旅行や宿泊学習などの行事費が増え、教材費も上がる傾向にあります。文部科学省の調査では、小学校6年生の学習費総額は年間約40万円を超えています

この時期は中学受験を見据えて塾通いを始める家庭が増え、一気に費用が上がります。中学受験用の塾は月2〜5万円程度かかるケースもあります。また、中学受験をしない場合でも、「学習塾(補習目的)」「英検などの検定対策」「部活動を見据えたスポーツ」など、将来を見据えた習い事にシフトする傾向があります。文部科学省の調査によると、6年生の「学校外活動費」(塾や習い事)は年間26万円以上にのぼるそうです。

サッカーの習い事

「貯めどき」はいつ? 教育費の貯金ペース

文部科学省の調査やファイナンシャルプランナーの実感値としても、教育費は小学生までは「まだ余裕がある時期」とされています。言い換えれば、この時期にこそ”教育費を貯める”チャンスでもあるのです。

目安となる教育資金の積立

  • 未就学児〜小学生で年間30〜50万円の積立(月額2.5〜4.2万円)
  • 児童手当をベースに上乗せできると理想的
  • 6歳〜12歳の期間で約180〜360万円の教育費を準備可能
  • この時期に計画的に貯めることで、中学以降の教育費増加に備えることができる

年齢別:大学入学までの貯金シミュレーション

  • 2〜3歳児の家庭:
    2.5万円×15年 = 約450万円
    (児童手当1万円+追加積立1.5万円)
  • 4〜6歳児の家庭:
    3万円×12年 = 約432万円
    (児童手当1万円+追加積立2万円)
  • 7〜9歳児の家庭:
    4万円×9年 = 約432万円
    (児童手当1万円+追加積立3万円)

これらの金額は大学教育費を見据えた目標額であり、日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査(2023年)」による「大学入学までの平均貯蓄額420万円」を目指したものです。大学の種類(国立/私立)や進学先(文系/理系)によってさらに調整が必要です。

また、中学受験や高校受験、大学受験の際には塾や予備校などで大きな支出が発生します。そのため、子どもが小学生のうちから計画的に貯蓄を始めることが重要です

大学生までの貯金イメージ

教育資金の賢い貯め方:3つの主要な選択肢

子どもの教育資金は将来の大きな支出です。調査によると、子どもひとりの教育資金は公立校でも総額約1,000万円が必要とされています。どの方法で貯めるかは家庭の状況やリスク許容度によって異なりますが、それぞれの特徴を理解して最適な組み合わせを選ぶことが大切です。教育資金の貯蓄方法をいくつかご紹介します。

💰学資保険

学資保険は教育資金準備の基盤として、エフピー教育出版の「サラリーマン世帯生活意識調査」によると約58.6%の世帯が選択しています。契約時に設定した年に祝金や満期保険金を受け取れるため、教育資金の「ベース」として安心感があります。

  • メリット:契約者(親)に万一のことがあっても満期保険金が確保される保障性。
  • デメリット:途中解約すると元本割れする可能性が高い。

💰新NISA(つみたて投資)

2024年から始まった新NISAは年間投資上限額が引き上げられ、非課税保有期間も無制限になりました。教育資金の積立には特に「つみたて投資枠」(年間120万円まで)が適しています。子どもの入学までに十分な期間があれば、インフレに負けない資産形成が期待できます。

  • メリット:非課税で運用でき、長期的には高いリターンが期待できる。
  • デメリット:市場変動により元本割れリスクがある。

💰普通預金・定期預金

もっとも基本的な教育資金の貯め方で、調査では「定期預金」が31.3%、「積立預金」が18.5%と人気があります。給料日直後に自動で引き落とされる積立定期預金を利用すると、生活費に使ってしまうことなく確実に貯められます。

  • メリット:元本保証で安全性が高く、いつでも引き出せる。
  • デメリット:金利が極めて低く、インフレに対応できない。

💰そのほかの補完的な方法

  • 児童手当の活用:子どもが中学校卒業までに受け取る児童手当を全額貯金すれば、約200万円の貯蓄になります。
  • 贈与制度の活用:祖父母から孫への教育資金一括贈与は1,500万円まで非課税となる制度があります。毎年の暦年贈与(110万円まで非課税)も計画的な節税になります。

これらをバランスよく組み合わせることで、安全性と収益性の両立を図ることができます。家庭の収入やライフスタイル、リスク許容度に合わせて、最適な組み合わせを考えましょう。

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教育費は家庭環境や価値観によって大きく異なります。他の家庭との比較より、自分たちの状況に合った無理のない計画を立てることが重要です。子どもの成長に合わせて柔軟に見直しながら、幼児教育・保育の無償化や児童手当などの公的支援も積極的に活用しましょう。長期的な視点で家計と教育のバランスを取りながら、子どもの可能性を広げる教育資金プランを家族で考えていくことが大切です。

(参考)
文部科学省|子供の学習費調査(令和3年度)
日本政策金融公庫|教育にかかる費用はどのくらい?
ベネッセ教育総合研究所|幼児生活実態調査(2023年度)
エフピー教育出版|サラリーマン世帯生活意識調査(令和3年度)