教育を考える 2024.10.25

2歳? 4歳? 6歳? 子どもの年齢別・添い寝からひとり寝への移行ポイント

編集部
2歳? 4歳? 6歳? 子どもの年齢別・添い寝からひとり寝への移行ポイント

子どもがひとり寝を始めるタイミングは、家庭の方針や住宅事情によりさまざまです。とはいえ、お友だちのママから「うちの子はもうひとりで寝てるよ」と聞くと、「うちもそろそろ……」と焦る気持ちが出てくる親御さんも多いのではないでしょうか?

そこで今回は、「子どもと一緒に寝るのはいつまで?」という疑問について、専門家の意見を交えながら考えていきます。

生後すぐから親子別室。欧米と日本はこんなに違う

親子の寝室事情について、日本と欧米ではかなり異なるということがよく指摘されます。2017年にオランダの研究チームが世界の母子のベッドシェア(添い寝)に関する論文を出していますが、それによると日本では、乳幼児期の54.4%がベッドシェアであると報告されています。一方欧米では、アメリカ(23.0%)、ドイツ(8.9%)、イギリス(7.1%)、イタリア(6.4%)とベッドシェア率は低いようです。この結果からも、実際に欧米では親子別室で就寝する傾向が強いことがわかります。*1

教育研究家の征矢里沙氏は、日本と欧米における親子の就寝環境について、「欧米は歴史的に『自立』や『個人』を重視する文化。一方日本は、親子、特に母子が密接に関わって育児をするという伝統的な習慣があることが大きい」と、文化や価値観の違いが影響していると指摘しています。*2

もちろんそれ以外にも、各国の住環境の違いや夫婦のあり方などさまざまな要因が複雑に絡み合っているため、一概にどちらが正しいとは断言できないでしょう。また、部屋数やきょうだいの人数など、各家庭の事情はそれぞれ異なるので、添い寝の習慣とひとり寝への移行時期に正解はありません。

添い寝は授乳など夜のお世話がスムーズにできる点や、子どもの異変に気づきやすい点からも親が安心できる反面、頻繁に目がさめることで眠りが浅くなり、慢性的な睡眠不足につながる可能性も。一方ひとり寝は、大人の時間がとれてぐっすり眠れるものの、別室まで子どもの様子を見に行ったりお世話をしに行ったりするのが大変だと感じることもあり、どちらも一長一短であるでしょう。

次項では、専門家の意見をもとに「子どもと一緒に寝る時期とひとり寝のタイミング」についていくつか提案しています。子どものタイプや親の意向をふまえつつ、家族みんなが快適に就寝できる方法を見つけてください。

添い寝いつまで?02

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専門家の意見1:親子別室にトライするには「2歳まで」がカギ

眠りとお風呂の専門家で公認心理師の小林麻利子氏は、「2歳までは比較的簡単に親子別室にトライできる」と提案したうえで、「それ以降だと『寝る時は隣にいて』という意思が強く出て難しくなる」と指摘しています。

小林氏によると、「子どもが寝る部屋を早い段階で作り、『お風呂に入ったらひとりで眠る』ということを習慣づけていく」のが効果的とのこと。習慣になれば、お互いの物音も気にならず、不必要に起こされることもなくなっていくのだと言います。

また、2歳前後には「自分の部屋」という認識をもつようになるため、朝目が覚めても親を待つことができるように。幼児期特有の、早朝に親を起こすこともなくなり、親の睡眠時間も確保できますね。*3

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専門家の意見2:添い寝は3~4歳までOK!

先述の研究結果にもあるように、欧米では早い段階で親子別室での就寝がスタンダードになっていますが、そもそもスキンシップの仕方や愛情表現において、日本と欧米ではまるで違います。

1984年から5,000件以上も日本の家族がどう寝ているかを調査してきた教育学博士の篠田有子氏は、「欧米の場合、いくつになってもハグやキスなど愛情表現する習慣がある。一方、年齢が上がるにつれてスキンシップが減っていく日本では、愛情伝達が不足しがち」と指摘したうえで、幼少期の添い寝は親子の信頼関係を築くためによい方法なので、「3~4歳くらいまでは添い寝がおすすめ」だと述べています。*4

乳幼児期にスキンシップが足りないと、精神的な落ち着きが育たず、反抗的になったりなかなか自立できなかったりする心配も……。しかし、添い寝をすることで皮膚接触をはじめ、寝息を聞いたり匂いを嗅いだりと、全身で親の愛情を感じ取ることができるため、子どもは安心感を得られます。このように、親に対する安心と信頼が育つ添い寝は、スキンシップが苦手な日本人に向いていると言えるでしょう。

添い寝いつまで?04

専門家の意見3:3歳までは添い寝をし、4歳ごろからひとり寝をさせる

兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科と鳴門教育大学大学院教育学研究科による「子どもの自尊感情を高めるには、添い寝がいつまで、どのように行なわれるのが望ましいかを探る研究(添い寝が子どもの愛着および自尊感情へ及ぼす影響)」では、「3歳までは添い寝をし、4歳ごろからひとり寝をさせるのが最も好ましい」という結論に至っています。

この研究によると、「4~5歳は子どもの自立心が活発になる時期」であるものの、この時期にひとり寝を始められる状態であったのに添い寝を続けてしまうと、子どものなかで添い寝が当たり前という認識になってしまうことがわかっています。そしてその後、子ども部屋ができるなどして、ひとり寝を始めざるを得ない状況になると、今後も添い寝が続くと期待していた子どもは突然親に拒絶されたと感じてしまうのです。*5

可能であれば、3歳頃までは親が応答的に添い寝をし、子どもに自立の準備ができたら少しずつ心理的距離をとるようにしましょう。徐々にタイミングを見計らって、スムーズにひとり寝へと導いていくことが大切です。

添い寝いつまで?05

専門家の意見4:6歳までの添い寝で認知的スキルが上がる

東北大学大学院情報科学研究科准教授の細田千尋氏は、以下の2つの研究結果をふまえて、「6歳までの添い寝」を推奨しています。*1

  • 6歳まで添い寝をしていた場合、していない人たちに比べて認知的スキル(知能など)が高かった
  • 幼児期まで親と一緒に寝て夜間の安心感が強くなることで、日中の行動がより自立的になる

 
つまり、子どもの情緒の安定や自立心を育むには、早くから親子別室で就寝するよりも、幼児期まで添い寝を続けていてもOKだということ。もちろん親のメンタルヘルスの観点から、添い寝が負担になったり、睡眠不足で日中のパフォーマンスが落ちたりする懸念があれば、その限りではありません。

大事なのは、親も添い寝によって安心感を得られること。そのうえで、子どもの情緒面や精神的・肉体的成長を考慮して、添い寝を続けるかひとり寝に移行するかを判断すればよいのです。

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結論:添い寝→ひとり寝の時期は「その親子次第」!

子どもと一緒に寝られる時期には限りがあり、親にとっても幸せを感じられる大事な時期でもあります。「お友だちはひとりで寝ていると言っていて焦る」「もうすぐ小学生になるし、そろそろ添い寝は卒業かな……」「まだ一緒に寝たいけど、自立できなくなりそうで心配」など、ご家庭によって悩みは千差万別です。

「どういう形態が最適なあり方なのかよく考えたうえで、『子どもの成長に合わせる』だけでなく、『自分たち親子に合った』選択をしよう」と細田氏が述べるように、周りの意見に流されずに、自分たちにとって何が最適かを優先して決断することが大切です。*1

最後に、「そろそろ添い寝からひとり寝に移行しようかな」と考えている方に向けて、前出の小林氏によるアドバイスを紹介します。ポイントは「就寝フォーメーション」です。

父・母・子どもの3〜4人家族の場合、寝室を分ける際に「母親・子ども」と「父親」に分かれるケースが多いのではないでしょうか? 授乳やおむつ替えなどのお世話を頻繁にする必要がある時期は、母親が一緒に寝ている方がスムーズにケアできることもあります。しかし親子別室への移行を考えるなら、まずは「父親と子どもが添い寝、母親が別室」の組み合わせを試すのがおすすめ。

小林氏は、「父親は母親ほど敏感に子どもの物音で起きることが少なく、子どもも母親を求めて起きてしまうことが軽減されるため、母子ともにゆっくり眠れるようになるはず」と述べています。ストレスなくひとり寝へと移行できるように、親と子が徐々に距離をとりながら睡眠環境を変えていくのが理想です。それぞれの家族に合う方法とタイミングで、親子の睡眠環境を見直していきましょう。*3

***
ここまでさまざまな専門家の意見を紹介してきましたが、「自分たち家族には当てはまらないな」という言説もあれば、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と新たな発見もあったかと思います。いずれにせよ、子どもも親も毎晩心地よい眠りにつくために、各家庭によってさまざまな工夫をしているはず。「こうでなければならない」という思い込みは捨てて、お子さんのタイプをしっかり見極めたうえで、最善策を見つけていきたいですね。

文/野口燈

(参考)
(*1)参考・カギカッコ内引用元:プレジデントウーマン|最新の研究が明かす「子どもは何歳から一人で寝るのがいいのか」
(*2)参考・カギカッコ内引用元:ウチコト|【教育研究家に聞く】赤ちゃんの「添い寝と一人寝」、メリット・デメリットは?
(*3)参考・カギカッコ内引用元:nishikawa|添い寝?それとも親子別室?ぐっすり眠れる就寝フォーメーション
(*4)参考・カギカッコ内引用元:ベネッセ教育情報|いつまで川の字で寝る? 【前編】幼少期の寝かたが心の育ちに影響する
(*5)参考・カギカッコ内引用元:応用教育心理学研究 第30巻 第2号|添い寝が子どもの愛着および自尊感情へ及ぼす影響