子どもをお持ちの親御さんであれば、誰もが気になるのが「今後10年20年と続いていく子育てには、どれくらいの費用がかかるのか?」ということではないでしょうか。
特に、教育熱心な親であればあるほど、子どものためを思っていろいろなことをしてあげたくなるはず。「たくさん習い事をさせて得意分野を見つけてほしい」「いい高校・いい大学に進学してほしい」「そのためには塾にも行かせないと」――なかには「小学校から私立に通わせてあげたい」などと考える方もいることでしょう。
上記のような「教育費」に加え、食費や医療費といった、日々の生活を送っていくための「養育費」も子育て費用には含まれます。結局、子どもが独り立ちするまでには、総額いくらぐらいが必要になってくるのでしょうか?
今回は、さまざまな調査結果をもとに、子育てにかかる費用についてまとめてみました。なお、これから出てくる数字は、調査によって導き出された “平均額” であるということを留意いただければと思います。
「子育て費用」って、そもそも何を指すの?
内閣府は、平成22年(2010年)に「インターネットによる子育て費用に関する調査」の報告書を発表しています(※行政機関による子育て費用に関する調査は、新しいものがあまりないようです)。この報告書では、「子育て費用」を以下のように細分化しています。以下に該当するものが、子育て費用の中に含まれると考えてください。
- 衣類・服飾雑貨費(例:「衣類・下着類」「靴・カバン類」など)
- 食費(例:「家庭内での食事代、弁当材料費」「外食費」「おやつ、間食代」)
- 生活用品費(例:「生活消耗品」「文房具・図画工作用品費」「おもちゃ・ゲーム類、携帯電子機器類」など)
- 医療費(例:「保健・医療機関窓口での支払額」「薬局・薬店等で購入した医薬品類」など)
- 保育費(例:「保育所・幼稚園等の入園初期費用」「保育所・幼稚園等の保育料、月謝、給食費など」など)
- 学校教育費(例:「国立・私立学校の入学初期費用」「国立・私立学校の授業料」「学校給食費」「修学旅行、林間・臨海学校、遠足などの費用」「通学交通費」「学校教材費」など)
- 学校外教育費(例:「家庭内学習用図書費」「学習塾費」など)
- 学校外活動費(例:「学習塾以外の習い事の月謝等」「子どもの短期留学・ホームステイ費用」など)
- 子どもの携帯電話料金
- おこづかい
- お祝い行事関係費(「入園・入学、卒園・卒業関係お祝い費」「誕生日祝い」など)
- 子どものための預貯金・各種保険
- レジャー・旅行費
(※上記に加え、出産にかかる諸々の費用も子育て費用に含まれる)
そして冒頭で述べたとおり、子育て費用は、教育に関連する「教育費」と、それ以外の「養育費」に大別されます。青で塗った「学校教育費」「学校外教育費」「学校外活動費」が教育費に該当し、それ以外の橙で塗った項目が養育費です。
0歳~中学生までの子育て費用は、年間いくらかかるのか?
前出の「インターネットによる子育て費用に関する調査」では、ひとりあたりの年間子育て費用総額(※第1子について)を算出しています。就学区分別でみる年間子育て費用の総額は次のとおりです。
未就園児:約84万円
保育所・幼稚園児:約122万円
小学生:約115万円
中学生:約155万円
未就学児の場合は「保育所や幼稚園に通わせるかどうか」で差が出る
まず、未就学児の場合、保育所や幼稚園に通わせるか通わせないかで、子育て費用総額がだいぶ変わってきます。未就園児(約84万円)に比べて、保育所・幼稚園児(約122万円)が38万円程度高くなっているのも、「保育費」の差額によるところが大きいようです。
さらに、子どもを通わせる保育所や幼稚園が公立か私立かによっても大きな違いが。文部科学省が平成28年に実施した「子供の学習費調査」によれば、公立幼稚園の場合の学習費(※「子供の学習費調査」では、「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」の合算を「学習費」と定義しています。先に述べた「教育費」とほぼ同義だと考えてよいでしょう)は年間23万円程度であるのに対し、私立幼稚園の場合は48万円程度とのこと。
令和元年10月から、幼児教育・保育の無償化が始まったため、保育費に関わる我々の実際の出費は減ることが予想されますが、適用される金額には上限があるため、完全に無料になるというわけではないことは注意しておきましょう。
小学生の場合は「公立か私立か」で大きな違いが
小学生は全体平均が約115万円(=6年間で約690万円)ですが、やはり学年が上がることに子育て費用が膨らんでいく傾向にあるようです。入学準備のための費用がかかる小学校1年生が約112万円、2年生が約106万円であるのに対し、5、6年生では125万円前後までかさみます。
みなさんの予想どおり、これは中学受験を控えて子どもを塾に通わせる家庭が増えるから。「インターネットによる子育て費用に関する調査」によれば、学習塾費が含まれる「学校外教育費」が、小学校4年生時点では10万円程度だったのが、5年生は約14万円、6年生では約19万円までかさんでいくとのことです。
また、保育所・幼稚園のときと同様、公立小学校か私立小学校かによっても学習費が変わってきます。「子供の学習費調査」によれば、公立の場合は年間32万円程度(=6年間で約192万円)ですが、私立の場合は約153万円(=6年間で約918万円)とのこと。授業料がかからない公立小学校に対し、月額数万円~10万円程度の授業料がかかる私立小学校を選択した場合、教育にかかる出費もかなり多くなります。
中学生の場合も「公立か私立か」で大きな違いが。加えて塾代もかかる
これが中学生になると(※年間子育て費用総額は約155万円、よって3年間で465万円)、高校受験を控えて塾通いが増えるため、学校外教育費がさらにかかってきます。中学1年生時点では17万円程度だった学校外教育費が、2年生では約22万円、3年生では約36万円に。月額3万円程度の支出が必要になってくる計算ですね。
学習費に関しても、公立中学校の場合は年間約48万円(=3年間で約144万円)、私立中学校の場合は約133万円(=3年間で約399万円)と、3倍近い開きが。「中学校から私立」と考える親御さんも少なくありませんが、やはりそれ相応の出費が必要になってきます。
高校の子育て費用のメインはやはり「教育費」
ここまでは、義務教育期間である中学校までの子育て費用について解説してきました。でも、きっと多くの親御さんは、我が子を高校や大学にまで進学させたいと考えていることでしょう。まずは、高校での子育て費用について、「教育費」に絞って解説していきます。
「子供の学習費調査」によると、全日制の公立高校に通わせた場合の学習費は年間約45万円(=3年間で135万円)とのこと。一方、私立高校の場合は約104万円(=3年間で312万円)と書かれています。小学校や中学校に比べると、公立・私立間の差は縮まるようですね。
そして、さらに考慮に入れなければならないのが、大学受験を見据えて塾や予備校に通う場合に「学校外教育費」が必要になることです。各塾・予備校の料金設定や通塾頻度によりまちまちですが、学費・教育費ガイドの鈴木さや子氏は、目安として「年間30万円~100万円程度」が必要だと概算しています。
大学受験というと、子どもの一生を左右する大事なイベント。望む進路に進んでもらうためにも、やはりある程度のお金をかける必要性が出てくるようです。
大学での子育て費用。ポイントは「学費」と「仕送り」
次に、子どもが大学へ進学した場合を見てみましょう。
日本政策金融公庫が実施した調査によれば、まず、大学への入学費用としておよそ88万円かかります(国公立大学で80.1万円、私立大学文系で90.4万円、私立大学理系で85.5万円)。ここには、受験や入学そのものにかかった費用のほか、入学しなかった大学への納付金(滑り止めで合格した大学へ納付した入学金など)も含まれます。
そして在学費用に関しては、国公立大学で年間114.8万円(=4年間で約459万円)、私立大学文系で160.1万円(=4年間で約640万円)、私立大学理系で185.3万円(=4年間で約741万円)かかるとのこと。これには、授業料のほか、通学にかかる費用や教科書代なども含まれます。
入学費用も考えると、最も費用がかからない国公立大学であったとしても、4年間で最低550万円程度は必要になると考えておいたほうがよいでしょう。逆に、私立大学理系の場合は、およそ826万円かかります。
さらに、遠方の大学に進学するとなると、ひとり暮らしにかかる費用も考慮しなければなりません。2018年に実施された「第54回学生生活実態調査」によれば、大学生への仕送り額の平均は月71,500円とのこと。実際の仕送り額は各家庭の事情や方針により大きく異なってきますが、場合によっては、学費とは別に年間80万円程度は必要になるかもしれないことは、頭に入れておいたほうがいいかもしれませんね。
子育て費用の総額は結局いくらなのか?
ここまで、ステージごとに子育て費用や教育費について見てきました。結局のところ、子どもが独り立ちするまでにかかる子育て費用の総額はいくらと考えるべきなのでしょうか?
「子供の学習費調査」には、3歳から高校卒業までの15年間の学習費総額が、幼稚園・小学校・中学校・高校それぞれについて公立か私立かで場合分けして算出されています。あくまで学習費ですので、食費や生活用品費といった養育費は含まれていないことに注意しなければなりませんが、金額は下記のとおりです。
幼稚園から高校まですべて公立の場合:約540万円
幼稚園だけ私立の場合:約616万円
高校だけ私立の場合:約716万円
小学校以外は私立の場合:1,047万円
すべて私立の場合:約1,770万円
大学に進学する場合は、その費用がこれらに上乗せされることになります。たとえば、大学が国公立の場合、4年間で550万円程度かかることは先に述べたとおりですが、仮に幼稚園から大学まですべて公立であった場合、540万円に550万円を加えて、およそ1,100万円かかると考えられます。逆に、幼稚園から大学(仮に理系とします)まですべて私立だった場合、1,770万円に826万円を加えて、およそ2,600万円かかる計算です。
そして、上記に養育費が加わります。AIU保険会社が発表した『現代子育て経済考』(2005年度版)には、0歳から22歳までにかかる養育費は1640万円と算出されています。
よって、子どもの進路によって違いはあれ、先に述べた学習費(≒教育費)にこの養育費を足した2740万円~4240万円が、子育て費用の総額の目安です。
「子育て費用」どうやって貯めるのか?
当然この金額は、来年や再来年までにすべて貯めておかなければいけないというものではありません。あくまで、子どもが生まれてから独り立ちするまでの期間をとおして必要な金額なので、その時々で間に合っていれば問題ないとも言えます。とはいえ、子育て費用の総額を知ったいま、「今の状態で本当にまかなえるか不安……」と感じ始めた方も少なくないはず。
先に取り上げた、日本政策金融公庫が発表した資料では、子どもの教育費を捻出する方法についても調査がなされています。それによれば、「教育費以外の支出を削っている」が31.7%と圧倒的に多く、節約している支出については「旅行・レジャー費」「外食費」「衣類の購入費」が上位を占めました。
とはいえ、実際にそのときになって困らないように、事前に手を打っておきたいものですよね。まずは日頃のお金の管理を見直し、ライフプランのイメージを鮮明にすることが近道かもしれません。 自身にあった方法を見つけ、お金の管理を継続的に行ない、お金の流れを把握できるようにしましょう。
あるいは、将来のことが今から心配ならば “お金のプロ” に相談してみるのもいいかもしれません。皆さんは「ファイナンシャルプランナー」という言葉を聞いたことがありますか? 中立的な立場で、家計改善や今後のライフプランの相談に乗ってくれる、お金の専門家です。
金額や人との相性が気になるところですが、こちらの「みんなの生命保険アドバイザー」では、経験豊富なファイナンシャルプランナーが、中立的な立場で、保険の見直しや家計改善についてアドバイスしてくれます。料金はもちろん無料で、無理な営業は運営会社が止めてくれるので安心。相談を受けた人の満足度は97%に達しているのだそう。「いまの保険料が高くて将来が不安……」「子育ての費用はどう工面したらいいの?」「お金の賢い貯め方をプロに相談したい」という人におすすめです。
***
今回は、子育て費用について詳しく解説しました。その金額の高さに不安を覚えた人もいるかもしれませんが、子どもを育てていくことには、お金でははかれない価値があります。今後も、子どものためを思い、子育てや教育を思う存分楽しんでいきましょうね。
(参考)
内閣府|インターネットによる子育て費用に関する調査(PDF)
文部科学省|子供の学習費調査(平成28年度版)(PDF)
AllAbout|大学受験の塾・予備校でかかるお金
日本政策金融公庫|教育費負担の実態調査結果(PDF)
全国大学生活協同組合連合会|第54回学生生活実態調査の概要報告
教育再生懇親会|子育て(教育)費負担問題と教育(修学)支援制度の整備・充実の課題(PDF)