子供にウソをつかれたら、親はショックですよね。子供が何度もウソをつくことに不安を感じて、叱った経験があるかもしれません。安心してください、子供はウソをつくものです。しかし、子供がウソをつくことに対して、親が何も対応をしないわけにはいきません。
子供がウソをついたとき、親はどのように対応すればよいのでしょうか。今回は、子供のウソの種類と対応策について紹介します。
子供はウソをつくもの
子供はウソをつくものです。そもそも、大人ですらウソをつくのですから、子供がウソをつくことは自然なことですよね。臨床心理士の井上序子さんは、ウソをつく子供について次のように述べます。
嘘をついたことがわかっても、嘘をつく悪い子というように性格に原因を求めるのではなく、「何があるのだろう」と考えてあげることが大切です。
(引用元:大阪市|【第9号】「子どもの嘘~どう対応する?」臨床心理士・精神保健福祉士井上序子)
その子の性格が悪いから、ウソをつくわけではありません。大切なのは、どうして子供がウソをつくのかという原因をわかってあげることです。
では、どうして子供はウソをつくのでしょうか? ここからは、ウソの原因とそれぞれの原因に応じた対応策を3つ紹介します。
子どもがウソをつく原因1:事実と空想の区別がつかない
子どもがウソをつく原因の1つ目は、子どもが事実と空想の区別をつけられないことがです。実は、ウソは心理学的に高度な技術。したがって、子供がウソをつくようになったということは、それだけ子供が成長したということを意味します。井上さんは、子供の成長とウソの関係を次のように説明します。
子どもは2歳半頃から嘘をつくようになります。これより幼い頃は、空想や願望を話すことはあっても、嘘をついているという意識はないことが殆どです。3歳頃になると自分の言っていることが現実とは異なっていることや、嘘をつく目的を意識できるようになります。違う見方をすると知能が発達しているということです。
(引用元:同上)
つまり、心理的な発達が不十分な2歳半までのウソに、「事実を偽ろう」という意識はありません。そして、成長すれば、事実と空想は区別できるようになります。なので、2歳半までの子供のウソに対して過度に敏感になる必要はありません。大人がしっかりと子供を見守って話を聞き、子供の言葉が空想なのか事実なのかを判断しましょう。
子どもがウソをつく原因2:かまってほしい
子どもがウソをつく原因の2つ目として挙げられるのは「もっとかまってほしい」という気持ちです。子供の中には、親にかまってほしいがためにウソをつく子がいます。具体的には、お腹が痛くもないのに痛いと言ってみたり、学校での出来事を実際より大げさに表現したりしてしまうのです。
こうしたウソの原因は、子供とのスキンシップ不足。仕事が忙しくなると、ついつい子供との会話やスキンシップが減ってしまうかもしれません。また、妹や弟ができると、上の子にかまってあげられる時間が減ってしまうでしょう。すると、子供は寂しくなってウソをついてしまうのです。こうしたウソへの対応はシンプル。子供との会話や、スキンシップの時間をつくってあげるとよいでしょう。
子どもがウソをつく原因3:自分の身を守りたい
子供がウソをつく最大の原因は「自分の身を守りたい」という気持ちです。具体的には自分の失敗を「〇〇くん/ちゃんのせいで、こうなった」と、友達のせいにしたり、まだやっていないのに「宿題はやったよ」と言ったりするウソが当てはまります。
こうしたウソを聞くと、ウソをやめさせるために厳しく叱ってしまいたくなりますが、それは逆効果。懲罰的な環境では、上手なウソをつく子供が育ってしまう可能性があるのだそう。心理学者であるTalwarさん(マギル大学)とLeeさん(トロント大学)の論文によると、西アフリカの懲罰的な学校に通う3〜4歳の子供たちは、懲罰的ではない学校に通う子供達よりもウソをつく傾向がありました。
したがって、子供が保身のためにウソをついた場合は、子供を追い詰めるほど叱らないほうがよいのです。教育評論家の親野智可等(おやのちから)さんは次のような対処法を紹介します。
子どもの愚痴、失敗談、要求、わがままなども、門前払いせずに、まずは共感的に聞いてあげましょう。
もちろん子どもの要求に対して、最終的には「ノー」と断る場合もあります。
でも、そういうときも、まず取り敢えずは共感的に聞いてあげることが大切です。
このように共感的で寛容な親なら、子どもは親を信頼して安心して生きられます。
ウソをつく必要もなくなり、正直になんでも言えるようになります。
(引用元:親力|親が寛容なら子どもはウソをつく必要がなくて正直になる)
どんな言葉でも、子供の言葉をまずはしっかりと聞いてあげるようにしましょう。そうすることで子供は安心して正直な言葉を話せるようになりますよ。
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いずれのウソの場合も、常に厳しく叱ることはよくありません。まずはきちんと子供の言い分を聞き、冷静に「自分の身を守るようなウソはよくない」など、よくないウソが存在することを伝えてあげましょう。
また、子供が3〜4年生になってくると、ウソに合わせて自分の行動を変えられるようになるため、ウソは見破りにくくなります。それまでに子供とウソについて話し合ってみるとよいかもしれません。
文/村瀬裕一
(参考)
大阪市|【第9号】「子どもの嘘~どう対応する?」臨床心理士・精神保健福祉士井上序子
親力|親が寛容なら子どもはウソをつく必要がなくて正直になる
All About|子供がお腹痛いと嘘をつく……うそをつかせないための親の心得5カ条
All About|嘘つきは泥棒のはじまり?子どもの嘘に気づいたら
Talwar, Victoria and Kang Lee (2011), “A Punitive Environment Fosters Children’s Dishonesty: A Natural Experiment”, Child Development, Vol. 82, Issue 6, pp. 1751–1758.