教育を考える 2019.4.13

「大好きだよ!」で子どもは育つ。“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変える

「大好きだよ!」で子どもは育つ。“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変える

ふだんから、愛情を言葉にして子どもに伝えていますか? 言葉で言わずとも、日頃の態度やスキンシップで伝わっているはず……と思っている方も多いのではないでしょうか。

愛する気持ちを伝えるのが苦手な傾向にある日本人ではあるけれど、恥ずかしがらずに、子どもの前ではストレートに「大好きだよ」と気持ちを伝えてみましょう

すると、親子間のコミュニケーションだけでなく、意外な部分にも効果がみられるそうなのです。

愛情を受け止めている子は、自立心も育つ

幼児期に日頃からスキンシップや言葉で愛情を与えてばかりいると、べったりと親離れしなくなると考える人も少なくないと思います。けれどもそれは、実は逆。子どもが社会性を持つには、まず親からの愛情をたっぷりと受け止めている必要があるようです。

20世紀半ばに、愛着に関する最初の見解がもたらされたころ、保育園でつぎのような事実が確認されました。親とつながりを持つ子どもほど、一時的な親との別れによりよく対処できることがわかったのです。子どもの母親をよく知っていれば、保育士が信頼できる子守役となるのもたやすくなります。子どもたちは保育士を信用し、二次的な愛着心を抱くようになるのです。

(引用元:デズモンド・モリス(2010) ,『デズモンド・モリス 子どもの心と体の図鑑』,株式会社 柊風舎.)

もしも、保育園や幼稚園に入園するにあたり親離れできない子に困っているのなら、今一度、子どもへの愛情表現を見直してみるのもいいのかもしれません。たとえば、毎朝「おはよう」のあいさつの後にギューっと抱きしめながら「大好きだよ!」と言葉にして伝えるのです。

子どもをほめ、たくさん抱きしめて安心させ大げさなほど愛情表現をする母親は、それより感情表現の乏しい母親に比べて、我が子が世界を探検する準備ができていることに気づくでしょう。そっけなく、ぶっきらぼうな母親は、子どもを心細くさせます。

(引用元:デズモンド・モリス(2010) ,『デズモンド・モリス 子どもの心と体の図鑑』,株式会社 柊風舎.)

子どもの社会的、感情的な成長、そして自立には、親からの愛情表現が少なからず影響していると言えそうです。

“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変える2

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自己肯定感を育むことができるのは「存在承認」

生涯学習開発財団認定コーチであり「子育てコーチ」として執筆や講演で活躍中の川井道子さんは、『“言うことを聞かない子”が、おどろくほど変わる!「HAPPYワード」7つの法則』(柏書房)のなかで、言葉かけでは「行動承認」だけでなく「存在承認」を大切にすることを説いています。

*存在承認=存在そのものに対する承認
「生まれてくれて、ありがとう」「あなたがいてくれるだけで、うれしい」など
*行動承認=行動に対する承認
「◯◯ができてえらいね」「◯◯してくれたから、大好きよ」など

(引用元:川井道子 (2014) ,『“言うことを聞かない子”が、おどろくほど変わる!「HAPPYワード」7つの法則』,柏書房.)

ふだん使われているほめ言葉のほとんどは、「行動承認」によるもの。子どもにポジティブな声かけをするときは「テストで満点」「スポーツで1位」など、人より優れた部分をほめることが多いと思います。でも、そればかりが増えてしまうと、子どもは「人より優れていないと認めてもらえないんだ」と感じてしまうようになるのです。

でも、特別な「良くできたこと」や「いいところ」が見つからなくても大丈夫。日頃から「存在承認」による言葉かけをすることで、子どもは自ずと自己肯定感を育むことができるのです。

「ありのままのあなたを愛している――」

具体的には、以下のような言葉が有効だと言えそうです。

    • 「いつだって◯◯ちゃんが大好きだよ」

楽しんでいるときも悲しんでいるときも、ギュッと抱きしめながら伝えたい言葉です。

    • 「生まれてきてくれてありがとう」

何ひとつできなくても愛しかった赤ちゃんの頃を思い出して。親でいられることの喜びを伝えましょう。

    • 「がんばっているね!」

ただ結果を待つのではなく、がんばっている子どものありのままの姿をほめてあげましょう。

    • 「結果は気にせず、楽しんでおいで」

テストや試合がどんな成績を残したとしても、愛情に変わりがないことが伝わる言葉です。

“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変える3

「愛されている自覚」が勉強する姿勢を変える

また、子どもに愛情を伝えることは、勉強に対する姿勢にも好影響を与えるようです。

精神科医で和田秀樹こころと体のクリニック院長の和田秀樹氏は、母親は子どもに対し、勉強するから愛しているのではなく、愛しているから勉強してほしい、というメッセージを伝える必要がある、と言います。

「勉強しないとお母さんに嫌われるから勉強する。お母さんが恐いから勉強する」というマイナス感情で勉強させるのではなく、「お母さんは僕のことを愛してくれている。僕が勉強すると、大好きなお母さんがもっと喜んでくれるから勉強する」 というプラス感情の方向に持って行ってあげてください。

(引用元:和田秀樹(2013) ,『勉強ができる子に育つお母さんの習慣』,PHP研究所.)

何かを学ぶとき、マイナス感情が動機になるよりも、プラス感情が動機となって励むほうがやる気が増してくるのは当然のこと。親の「大好きだよ」「愛しているよ」といった存在承認による声かけが、「もっと頑張ろう!」という励ましにつながっていくのです。

小学校も中学年以上になると、親子のスキンシップも段々と減っていくものですが、言葉かけはいくつになってもできるもの。「◯◯ちゃんが生まれてきてくれて本当にうれしいんだよ」、「うまくいかなくても、お母さんが◯◯のことを大好きなのは変わらないよ」というような言葉かけを折に触れ重ねていくことで、子どもの自立心と向上心が育ち、親自身も親子関係を見つめ直すことができるはずです。

“愛されている自覚”が自己肯定感を高め、勉強姿勢までも変える4

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大人になって素直な気持ちを口にするのには気恥ずかしさもありますが、言葉にしないと伝わらないこともあるものです。子どもからの「ママ、パパ、大好きだよ」がこのうえない喜びであることと同じように、子どももまた、親からの「大好き」を心から喜んでくれるはず。ぜひ日常生活に「大好き」のセリフを取り入れていきましょう。

文/酒井絢子

(参考)
プレジデントオンライン|子供が見違える「短い声かけフレーズ10」
PHPファミリー|親の言葉が子を幸せにする!わが子にプラス言葉のシャワーを
All About|育て直しとは? 親の愛情を子どもに効果的に伝える方法
デズモンド・モリス(2010),『デズモンド・モリス 子どもの心と体の図鑑』,株式会社 柊風舎.
川井道子(2014),『“言うことを聞かない子”が、おどろくほど変わる!「HAPPYワード」7つの法則』,柏書房.
和田秀樹(2013),『勉強ができる子に育つお母さんの習慣』,PHP研究所.