こんにちは。文章力養成コーチの松嶋有香です。
夏休みの足音が聞こえてくる季節になりましたね。子どもたちには、プールやキャンプなどアクティブな思い出を作ってあげたいものですが、1冊の本を通じて自分を見つめる、そんな静かな思い出もいかがでしょう。この記事は連載記事です。第3回のこの記事から目にした方、是非、第1回から読んでみてください。特に第1回にはとても重要なことを書きました。
さて、前回、第2回の復習です。本選びでしたね。コツとして重要なポイントがありました。
「子どもが選んだ本を絶対に否定しない」
実際はどうだったでしょうか。私は毎年読書感想文講座を開いていますが、そこでの感想をみなさんにもお伝えしますね。
お母さんたちが早くも難関に突き当たっていますね。いかに、普段、子どもを自分の言う通りに育てようとしてきたのか、思い知ることになるんですよね。これは本の選出に限ったことではありません。
宿題をする時間、一緒に遊ぶお友だちの選び方、テレビとお風呂の順番、ゲームをする時間、すべてコントロールしようとする方がとても多い気がします。子どもは自分が決めたことに関しては、親が口出しさえしなければ、責任を持って成し遂げるものです。もちろん最初は失敗の連続でしょう。それでも、ぐっとこらえて見守ると、子どもは確実に自分との約束を守るようになっていきます。
さて、今回は、第3回。いよいよ買ったその本を、読み進めますよ。
まずは、全体の位置を確認します。
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0. 計画を立てる
1. 本を選ぶ
2. 心が動いた文やシーンがあるページに付箋を貼る
3. 質問シートを作る。答える。
4. 近い内容をまとめて文にする
5. 4を組み立てる
6. 書いてみる
7. 時間を置いて、見直す
8. 書き直す
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0と1が終わって、今日は2です。
特徴があります。付箋紙です。この方法、他の国語教師も結構取り入れています。あとで整理しやすいんですよね。私も、普段の読書で付箋紙を使用しています。仕事に役立てるためと、自分の思考の整理のためです。
付箋紙についてですが、サイズ、色、材質などは、特に指定はございません。ちなみに私が愛用しているのは、25mm×75mmのよくある横長の付箋紙ですが、低学年のお子さんには小さいかもしれません。その場合は75mm×75mmの正方形などはいかがでしょう。色々な色やサイズ、形の付箋紙があります。読書嫌いのお子さんなら、テンションが上がるような可愛い付箋紙もいいかもしれませんね。
2. 心が動いた文やシーンがあるページに付箋を貼る
まずは本を読みましょう。自分の心が動いたところに付箋紙を貼っていってください。「ああ、分かる」「へーそうなんだ」「わ、びっくりした」「最高!」など心が動いたところに、付箋紙を貼っていきます。また「なんで? なんでそうなるの?」「信じられない」「無茶だ」「ひどい!」そういうマイナスイメージでも構いません。
その時に、付箋紙にメモをしていくとあとで便利なのですが、どんどん読み進めたい場合には、「なっとく」「なんで?」「最高!」というメモ程度の書き込みでも良いでしょう。また、ぐんぐん引き込まれている時は、何も書かなくても構いません。とりあえず、付箋紙だけ貼りましょう。そういう場合は、そのページのどの文に心動かされたのか、あとから振り返っても反芻できるものです。
たまに、何とも言えない気持ちになる文に出会うことがあります。
「こんな気持ち、最低だ。言葉にしたくない……」
そんな重症な場合も貼っておきましょう。本当のところ、そういう場面こそ重要なのです。そういうシーンで自分と徹底的に向き合い、隠していた気持ちを言語化し、泣いて自分を許した子がいました。結局コンクールには出さなかった、そういう女の子も過去にいました。彼女にしか書けない読書感想文を、彼女は徹底的に書き上げたのだと思います。コンクールなんてどうでもいい、私がそう感じた一人でした。
さて、ひと通り読み終えたら、もう一度、付箋が貼ってあるページだけを読み返してみましょう。付箋を貼った時には気がつかなかった思いがあるかもしれません。その思いも付箋紙にメモしておきましょう。
ここで大切なポイントを言います。
作者の意図に乗っからなくてOK
例えば「ももたろう」の作者は不詳ですが、桃太郎の勇気や仲間との協力が「主題」ですよね。でも、人によっては、そこに感動しないかもしれません。それでいいのです。だって、「感想文」なのですから。
「作者の一番言いたかったことは何ですか」
このような読解問題なら、しっかり主題をつかまないといけませんね。でも、今回は「読書感想文」です。世界に一つ、自分だけの作品なのです。他の人の感想なんて知ったこっちゃないのです。ブックレビューなども目にしない方が良いでしょう。
付箋紙の量について
付箋紙の量について、先輩ママたちのフィードバックを見てみましょう。毎年開いている読書感想文講座の感想から、付箋紙の貼り方についてピックアップしてみます。どんな気づきがあったでしょうか。
このように「初めは多かった」という感想が圧倒的です。しかし、感想を見ても分かる通り、子どもはだんだんと自分で調整していきます。こういうところからも、子どもは実験を繰り返すものだということが分かります。つまり、付箋紙に限らず何につけても、多すぎる少なすぎるということは、自然にコントロールしていくものなのに、親が最初から「多すぎじゃない?」「少ないんじゃない?」などと言ってしまうのが危険なのです。確かに親の助言により、最短時間で正しい範囲に収めることはできるでしょう。しかし自分の感覚として体験をしていないので、コントロール力が付かなくなるのです。親はもの凄く貴重な体験を横取りしていることに気づいてほしいですね。とにかく一番良い方法は、親が口出しをしないことです。
また、付箋が多く、なおかつ減らせないような場合があります。その時には、読み終えてから、もう一度振り返る時に、似たような感情
「どうやら私はこういう内容に何かひっかかるらしい」
ということが感じられたら、いくつかそういうシーンの中で、代表となるシーンを決めてください。シーンとしては、3つぐらいに絞ると書きやすくなります。どうしても絞りきれず、何カ所か同じ感情だったというような場合は、その付箋紙に共通の記号をつけても良いでしょう。
低学年の場合は、そもそも全体の文字数が少ないですし、付箋を増やす、減らすの感覚もまだつかめません。そのような時は、親が手伝ってあげましょう。この場合も、先回りせず、一緒に本の中を歩いている友達のようなつもりで、言葉を探してあげると良いでしょう。
そして、本から剥がす前に、その付箋紙にページ番号を振ってください。あとで、本文を読み直すことがあります。
ここでもう一つ注意点。
「子どもが選んだシーンを絶対に否定しない」
なんだか似たような注意が並びますが、分かりますよね。自分の立場に置きかえてみてください。
「このシーンが感動した」と人に話して、「え? そこ?」「そんなシーン、全然感動しないよ」などと言われたらどうでしょう。人にされてイヤなことは人にしない。人間の鉄則です。
こういう子だったんだ! 新しい発見!
さて、この付箋紙を貼る作業、実は親にとって子どもの新たな一面を発見したという感想が多いのも特徴です。以下、読書感想文講座の受講後アンケートから少々抜粋しますね。
みなさんは、いかがですか?
口出しをしないこと。それだけで、子どもの本当の気持ちが分かるようになるのですね。
次回予告
第4回『自分と向き合う時間にこそ読書の意味がある』
内容:お母さん死んじゃいやだ! 楽しい本で泣き出した男の子のおはなし