教育を考える/本・絵本 2018.2.28

私たちが知らなかった、幼少期に絵本の読み聞かせをするべき”本当の理由”

景山聖子
私たちが知らなかった、幼少期に絵本の読み聞かせをするべき”本当の理由”

はじめまして。life styleに「絵本の力」を取り入れることで、楽しみながら成果を出し、より良い未来を手に入れる方法をご提案している、絵本スタイリスト®景山聖子です。JAPAN絵本よみきかせ協会の代表も務めています。

現在中学生になった息子がいます。私自身が仕事を続けながらのワンオペでした。当時は「何もわからないけれど、ちゃんと育てなくては」という想いから、多くの育児書に頼りました。

そして混乱し、自信を無くし、私はダメな母親だと、自分をさんざん責めた後、最後に気づいたのです。

「自分の子だ、自分の判断で育てよう」と。その悔いのない最高の判断をする力を与えてくれたのが、絵本でした。

この連載を読み進めると、あなたとお子さんに大きな変化が訪れる

さて、あなたは「絵本の読み聞かせ」と聞いて、何を思い浮かべますか?

絵本は「幼い子どもが字を読めるようになるまでの本」という認識の方に多く出逢います。同時に「絵本は子どもの成長や教育に良いと聞くから、なんとなく読んでいるけれど、何が良いのか、なぜ良いのかは知らない」というお母さんにもたくさん出逢います。

そこでこの連載では、なぜ絵本の読み聞かせが子どもの豊かな人生を創るのか、なぜ学力の向上につながるのかについて、実例と共にお伝えしていきます。併せて、効果的な読み聞かせのテクニックもご紹介します。

実践していただければ、お子さんは楽しみながら、頭と心の両方において、他の追従を許さない速度で成長していくことでしょう。そしてあなたも、絵本による最高の幼児教育をしている実感を味わうことができるでしょう。

「絵本の力」はとても大きなもの。まずは潜在意識と顕在意識からお話ししましょう。

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潜在意識と顕在意識

幼いときに読み聞かせをするべき最大の理由に、潜在意識と顕在意識の関係があります。この両者は「海に浮かぶ氷山」に例えることができます。

海に浮かんでいる氷山の、水面から突き出ている部分が顕在意識。つまり自分で判断し、意思によって行動することができる意識です。

一方、水面下に隠れている部分は潜在意識。すなわち自分では自覚できず、制御することもできない意識です。無意識ともいわれています。

例えば、「Aさんに会いに行こう」と自分の意思で会いに行くのが顕在意識。「でも、Aさんは、なんとなく苦手」と無意識のうちに考えてしまうのは潜在意識にあたります。

応用心理学会の会長を務めたエミール・クーエは、人の潜在意識に触れることで、心だけでなく体の疾患までも改善させる精神療法を開発した、フランスの著名な治療家。彼はこう言っています。

意思考えが争うとき、必ず考えが勝つ。意志によって努力しても、一定の考えを打ち破ることはできない

(引用:エミール・クーエ, C.H.ブルックス(2010),「自己暗示」,法政大学出版局.)

ここでの「意思」とは顕在意識。「考え」とは潜在意識のこと。

例を挙げましょう。何か困難な仕事を果たさなくてはならないとき「なんとしてもやり遂げるぞ!」と思うのが意思。「自分には無理かもしれない」と、いくら打ち消してもどうしても浮かんできてしまうのが、考え。

そして、クーエによると「なんとしてもやり遂げるぞ!」と意思を固めれば固めるほど、「でも自分には無理かもしれない」という考えが頭に浮かぶというのです。

しかも「無理かもしれない」という考えは、「やり遂げるぞ!」という意思の2乗の力で比例するように増えていくと、クーエは言います。

2乗というのは凄い力です。3回「やり遂げるぞ!」と意思を固めると、9回「無理!」という考えが浮かび、無意識のうちに自分自身を否定してしまうことになります。

4回「やり遂げるぞ!」と思えば16回「無理無理!」、100回意思を固めれば、1万回も「無理無理無理!」。これを乗り越えるには、相当の覚悟がないと難しそうですね。

そこで、クーエの治療法は、2乗の力のある強力な「考え」、つまり潜在意識そのものを変えるというものでした。

しかし、大人になってしまうと、潜在意識は通常、厚い扉にガードされていて、特別な方法でないとたどり着けないようです。

一方、幼少期は潜在意識の扉が開く黄金期。心理療法家のA.Mクラズナー博士によると、5〜6歳までは、与えられたすべてのものを「そのまま」受け取り、蓄積し、影響をダイレクトに受ける時期だというのです。

無意識の研究で有名なクラズナー博士は、さらにこのように話しています。

多くの小児行動心理学者は、個人の性格やふるまいの基礎となるような一定の傾向は生まれてから6年間のうちに形成されるという。

(引用:A.Mクラズナー(1995),「あなたにもできる『ヒプノセラピー』ー催眠療法」,ヴォイス.)

つまり、子どもは5〜6歳になるまで、意思の2乗の力を持つとても強力な潜在意識を、無防備にさらけ出していることになります。

親としては、それまでに子どもの潜在意識を、なるべく多くの「良いもの」で満たしてあげたいところ。

アメリカの脳生理学者マックリンは、顕在意識を騎手、潜在意識を馬に比喩し、大脳皮質と大脳辺縁系の関係を示しました。そして「幼少時に馬(潜在意識)をうまく馴らしておかないと、騎手(顕在意識)は落馬を免れない」と語っています。

子どもの潜在意識を「良いもの」で満たしてあげよう

なぜ幼い子どもに絵本の読み聞かせをするべきなのか

絵本には「勇気」や「思いやり」のメッセージがたくさん込められています。

ありのままの自分を愛せるようになる絵本、人と関わることの喜びを知る絵本、人を傷つけた先が学べる絵本など、「心を健やかに育てる」絵本が多くあります。

さらに、何でもおいしく食べ、色々な栄養をとることの大切さがわかる食育の絵本、運動の楽しさを知る絵本、生きることは素敵なことだと信じられる絵本もあります。

人として生きてゆく為の「幸せの種」が、絵本のメッセージにはたくさん込められているのです。そして、絵本を読み聞かせてあげるだけで、我が子の潜在意識を「幸せの種」で満たし、良い人格の基盤を築くことができるのです。

ですので、6歳頃、潜在意識の扉が閉まる前に、絵本の読み聞かせをすることをお勧めします。

同時に、普段の接し方にも配慮が必要です。いつも否定されダメな子として扱われると、自己肯定感の低さがそのまま潜在意識として残ってしまいます。そして大人になってから、2乗の力で「無理無理!」と自分で自分の可能性を狭めることにもなりかねません。

我が子もいつか大人になります。そして普通では乗り越えられないほどの困難な出来事にぶつかることもあるかもしれません。

でも、子どもの頃から潜在意識を「幸せの種」で満たしてあげることができれば、「2乗の力」が根拠のない自信として表れ、あなたの目の届かない所でも、お子さんを守ってくれることでしょう。

これが、幼少時に絵本の読み聞かせをするべき理由です。

JAPAN絵本よみきかせ協会や私の講座に集う人々に起こった変化

JAPAN絵本よみきかせ協会を立ち上げてから、私の講座や協会に訪れる人々に、絵本の読み聞かせを通して多くの変化が起こっています。

「我が子を愛せないのです」という母親は、本当は我が子を愛しているのだと気づきました。

早期教育のために読み聞かせをしていた母親は、ただやらせるより、子ども自身のやりたい気持ちを育てることの重要性を知り、絵本でそれができることを実感しました。

めまぐるしい情報の変化に翻弄され、いつもイライラして子どもを叱ってばかりいた母親は、絵本の力を使って我が子の可能性を最大限引き出す母親になり、今は笑顔で子どもの力を伸ばしています。

この連載では、このような、人に変化を起こす「絵本の力」をお伝えしていきます。どうぞ、よろしくお願いします。

(参考)
林成之(2011),「子どもの才能は、3歳、7歳、10歳で決まる!脳を鍛える10の方法」,幻冬舎.
エミール・クーエ, C.H.ブルックス(2010),「自己暗示」,法政大学出版局.
A.Mクラズナー(1995),「あなたにもできる『ヒプノセラピー』ー催眠療法」,ヴォイス.