教育を考える 2025.6.12

集中力は「生まれつき」ではない! 短時間でも「好き」に没頭すれば、“脳のスイッチ” が入ります

編集部
集中力は「生まれつき」ではない! 短時間でも「好き」に没頭すれば、“脳のスイッチ” が入ります

「今日も宿題に集中できてない……」そんなわが子を見るたび、心がザワつく保護者の方は多いはず。「うちの子、集中力がないのかも」――その不安、痛いほどわかります。

でも安心してください。集中力は才能ではありません。家庭での関わりと環境づくりで、必ず伸ばせる力なのです。

集中力が育てば、勉強への取り組みはもちろん、あらゆることに向き合う姿勢が変わります。逆に集中できない状態が続くと、せっかくの可能性も花開かないまま……それは避けたいですよね。

今回は、多様な専門家の視点から「本当に効果のある集中力アップの方法」をお届けします。今日から実践できる内容ばかり。お子さんの輝く未来のために、一緒に始めてみませんか?

【子どもの集中力は生まれつき?】集中力がある子の特徴とメリットとは?

「自分は集中力がない」と悩み、「集中力が身につく方法」を一生懸命に実践している人も多いのではないでしょうか。それは大人にかぎらず、小さな子どもでも集中力の重要性を実感する場面はたくさんあります。

集中力が高い子どもは目の前のことに深く没頭しやすいため、学習効率や理解度も自然と高くなります。一方、集中力がないと気が散りやすく、成果が得にくくなるなることも。

しかし、子どもが気を散らさずにひとつのことに集中して取り組むのは、至難の業です。このように「集中力」に対してハードルが高いと思い込んでいる保護者の方には、次の言葉をお伝えしましょう。

「集中力は生まれつきではなく生活習慣や経験で育つ」(北鎌倉女子学園学園長・柳沢幸雄氏)
「集中力とは、脳の “やる気スイッチ” をうまく入れる力。環境や関わり方次第で大きく伸ばせる」(脳科学者・篠原菊紀氏)

まずは集中力の本質を知り、日々の生活のなかで育む意識をもつことが、子どもの可能性を大きく広げる第一歩になるのです。次項では、6名の専門家の見解をもとに「家庭でできる集中力の育て方」について解説していきます。

子どもの集中力を伸ばす02

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「集中」は好奇心の延長線上にある。「集中スイッチ」を見逃すな!【篠原菊紀氏】

集中力と聞くと「じっと机に向かう姿勢」を想像しがちですが、脳科学の観点では少し違います。脳科学者の篠原菊紀氏によると、子どもの集中力は「おもしろい!」と感じた瞬間に高まり、特に遊びのなかにこそ集中の土台があるといいます。

たとえば、積み木やパズル、かけっこなど、熱中しているときの子どもの脳は “前頭前野” が活発に働いています。前頭前野とは、注意力や思考力を司る部位。好きな遊びを通じて、「楽しい!」「おもしろい!」と感情が動いた瞬間、集中のスイッチが入るのだそうです。

「集中力を育てたいなら、まずは “遊び込める環境” を用意してあげましょう」と篠原氏。大人の目線で「ためになるかどうか」を判断するのではなく、子どもが夢中になれることを尊重する視点をもち続けることが大事です。

反対に、苦手なことに取り組まなければならないときは、無理やり集中させるのはNG。口角を上げると快楽物質であるドーパミンの分泌が盛んになる、という現象を利用して、苦手なことや面倒なことはニコニコしながらやるように教えてあげてください。いつのまにか楽しんで取り組めるようになりますよ。

【集中力の伸ばし方】

  • 子どもが夢中になれる遊びを見つけて、思う存分やらせてあげる
  • 子どもの「集中スイッチ」が入った瞬間を見逃さない
  • 苦手なことに集中しなければならないときは “ニコニコ顔” で!

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生活習慣を整えると集中力がぐんぐん伸びる!【宍戸洲美氏】

公立小学校の養護教諭として長年勤務してきた宍戸洲美氏は、保健室を訪れる子どもたちを見続けてきた経験から、「生活習慣の乱れと集中力の低下には明らかな関係がある」と感じています。

寝不足、朝食抜き、長時間のゲームや動画の視聴……。こうした習慣は、脳の働きを鈍らせ、イライラや不安感の原因にもつながります。「落ち着きがない」「すぐ飽きる」という問題を抱えた子の多くは、基本的な生活リズムが乱れている傾向があるため、まずは規則正しい生活習慣を身につけるように心がけましょう。

また宍戸氏は、幼児期から小学生くらいまでは、学習面よりも「集中して遊ぶ・遊びに没頭できる」「好きなことなら夢中になれる」ことが非常に重要だと指摘しています。のびのびと自分の「好き」を見つけるには、大人が遊びを支配したり、禁止事項ばかりを押し付けたりするのはNGです。

健康な体と心を土台にしたうえで、主体的な遊びを楽しむ余裕や、やりたいことに挑戦できる環境があってこそ、子どもの集中力は育まれるでしょう。

【集中力の伸ばし方】

  • 睡眠リズムを整える、栄養バランスのよい食事を意識するなど、正しい生活習慣を意識する
  • デジタル機器の使用時間を決めて “脳の休憩” を確保する
  • 子ども主体の自由な遊びを存分にやらせる

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「親が話をよく聞く」だけで子どもの集中力はアップする!【柳沢幸雄氏】

北鎌倉女子学園学園長の柳沢幸雄氏は、集中力を伸ばすにはまず「親が子どもの話をよく聞くこと」が大切だと語ります。

お子さんは何に興味を持ち、今どんなことを感じているのでしょうか? その思いや言葉にしっかりと耳を傾けることで、子どもは「自分の気持ちを受け止めてもらえた」と安心して、自分の関心ごとに向き合えるようになります。この“安心感”こそが、集中力の土台になるのです。

さらに柳沢氏は、子どもの興味に「ちょい足し」をする関わり方も推奨しています。ちょい足しとは、子どもの興味関心に目を向けて、その延長線上に勉強の要素につながる経験をさせてあげること。

たとえば虫が好きな子に、「この虫はどんな場所に住んでるんだろうね?」と少しだけ問いを加えると、子どもはその世界により深く入り込もうとします。すると、結果的に集中する時間も長くなっていくというわけです。

集中力は決して生まれつきの力ではありません。日々の親子の対話と信頼関係が、子どもの「夢中になれる力」をじわじわと育てていくことを忘れないようにしたいですね。

【集中力の伸ばし方】

  • 忙しくても子どもの話をしっかり聞く
  • 子どもが今なにに興味関心があるのか、把握するように努める
  • 子どもの興味に「ちょい足し」体験をさせる

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短時間でも「好きなこと」に集中する経験を重ねよう【富永雄輔氏】

集中力とは、ただ長時間机に向かっていられることではなく、「短いパートの集中を、繰り返し、たくさんできることである」と進学塾VAMOSの代表である富永雄輔氏は述べています。短い集中を長期間にわたって続ける力があれば、「長期的な集中力」が身につき、長い人生をよりよい方向に進めることができるでしょう。

また富永雄輔氏は、「集中力というものは、好きなことをやることでしか絶対に増やせない」と断言しています。それは知育的なものでなくても、漫画やゲームなどでもかまわないのだそう。頭ごなしに「ゲームは禁止!」などとすると、子どもの集中力の育ちを阻害することになりかねません。

習い事を決めるときも同様に、子どもが好きなことかどうかという軸で判断を。好きでもない習い事をたくさんさせてしまうと、集中するタイミングがまったくない生活になってしまうので注意しましょう。たとえ短時間でも、「好きなことに没頭する経験」こそが、子どもの集中力を育む土台になるのです。

【集中力の伸ばし方】

  • 長時間の集中を求めずに、短いパートの集中を繰り返すことが大事
  • 漫画でもゲームでも「好きなこと」に没頭する時間を大切に
  • 習い事は「親がやらせたいジャンル」よりも「子どもが好きなこと」を優先する

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子どもの集中力を育むなら「ひとり遊び」が効果的【てぃ先生】

メディアでも活躍中のカリスマ保育士・てぃ先生は、「子どもの集中力は、ひとり遊びによって育まれる」と説いています。親からすると、「友だちと仲良く遊べないのかな?」「寂しくないのかな?」と心配になりますが、ひとり遊びこそ集中力の土台を育てるうえで非常に重要なのだそう。

ひとり遊び中の子どもを見て、心配だからといって声をかけたり、ほかの遊びを提案したり、先回りして手を出したりするのはNGです。「友だちと一緒に遊ぶ方がよい」という思い込みで遊びを中断させてしまえば、集中力を育む絶好の機会を逃してしまいかねません。

ひとり遊びによって集中力がしっかりと育まれた子どもは、自然な流れで友だちと上手に遊べるようになります。自分の世界に没頭できる意思の強さと、仲間と協力できる社会性をバランスよく身につけるには、子どもが満足するまでひとり遊びに熱中させてあげるのが吉です。

【集中力の伸ばし方】

  • ひとりで遊んでいるときは「集中力を育むチャンス!」と思って見守る
  • 子どもからのアクションがない限りは、ひとり遊び中に手や口を出さない
  • 「ひとりで遊ぶより友だちと遊ぶほうが楽しい」という思い込みを親自身が捨てる

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せっかくの集中を途切れさせる「ひとり遊びへの介入」に注意!【西剛志氏】

「そもそも、子どもは集中力がなくて当たり前」と語るのは、脳科学者の西剛志氏です。集中力を司る脳の前頭前野は長い年月をかけて発達します。そのため、前頭前野が未発達な子どもの集中力がないのは当然のことなのです。

とはいえ、時折驚くべき集中力を発揮する子もいます。その場合、集中する対象は間違いなく子ども自身が好きなこと。西氏は、「好きなことに集中する経験は、集中力を育む最適なトレーニング」と述べています。

そこで注意すべきは、集中している子どもに “介入” すること。「おもしろそうだね」と一緒に遊ぼうとするなど、親の何気ない介入が子どもの脳の集中を途切れさせてしまうのです。子どもが黙々と何かに取り組んでいるなら、強引にコミュニケーションを取るのではなく、そっと見守るだけにとどめましょう。

また西氏は、「飽きっぽく、集中力が続かない子どものなかには、単純に頭がいいという可能性がある」と指摘します。頭の良さゆえに、おもちゃを与えてもすぐに遊び方を学習してしまうというわけです。なので、「うちの子、新しいおもちゃもすぐに飽きちゃう……」「ひとつの遊びにもっと集中してほしい」など過剰に心配するのではなく、「もっと難しいことに挑戦させてみようかな?」と前向きに考えましょう。

【集中力の伸ばし方】

  • 「子どもはそもそも飽きっぽい」のだと理解して、心配しすぎない
  • 好きなことに集中している子どもに介入しない
  • 飽きっぽい子にはレベルの高いことに挑戦させる

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子どもの集中力を伸ばす04

よくある質問(FAQ)|集中力の育て方

Q1. 子どもがすぐ飽きてしまうのは集中力がないから?

A. 飽きやすさ=集中力がない、とは限りません。興味がない・達成感が得られないと「飽きやすい」状態になるので、興味を引く工夫や声かけを意識しましょう。
ポイント:
・短時間で「できた!」を実感できる課題を用意
・子どもの関心に合わせてテーマや方法をアレンジ

Q2. ゲームやYouTubeには集中できるのに、勉強には集中できないのはなぜ?

A. ゲームや動画に集中できるのは、達成感や刺激がすぐに得られる構造だから。報酬の “わかりやすさ” や “即時性” の違いが背景にあります。
ポイント:
・勉強にも「小さなごほうび」や「できた体験」を盛り込む
・「まずは10分だけやってみよう」などハードルを下げて

Q3. 集中力が身につく年齢はいつごろ?

A. 集中力は年齢とともに少しずつ伸びる力で、個人差があります。
ポイント:
・未就学児は5~10分、小学校低学年は15~20分が一般的な集中の持続時間
・年齢よりも「その子のペース」を尊重してあげて

Q4. 集中力が続かない子に家庭でできるサポートは?

A. 環境づくりと時間の区切り方を工夫して、集中を後押ししましょう!
ポイント:
・おもちゃやゲームなど気が散る物を視界から外し、集中できる空間をつくる
・「あと5分だけやってみよう」など、時間にメリハリをつけると集中しやすい

Q5. 習い事や遊びも、集中力アップに効果はある?

A. もちろんです。「楽しい集中体験」は、自然に集中力を育んでくれるでしょう。
ポイント:
・体を動かす遊びや習い事は、脳を活性化させて集中力の土台を育てる
・じっくり取り組む工作やピアノなども、集中する経験を積み重ねられる

***
子どもの集中力は、生活習慣や心の状態、体のコンディションなど、多面的な要素が絡み合って育まれます。今回ご紹介した専門家の意見を参考に、まずは睡眠や食事、運動といった生活習慣や、集中できる環境を整えましょう。日々の積み重ねが、子どもの集中力を育む大きな力になります。

文/野口燈

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの話をしっかり聞くと「あとが楽」。勉強に必要な集中力の育て方
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの脳が集中力を発揮するメカニズム。脳がホッとする時間も必要です
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「ゲームや漫画は禁止!」が子どもの“集中力の育ち”を阻害する理由
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