参観日の教室で、つい目で追ってしまう子がいます。休み時間になると自然と人が集まり、遊びのルールもその子のひとことで決まっていく。そんな姿を見たあと、教室のすみで本を開いているわが子に目が移ると、胸のあたりが少しざわつくかもしれません。
春に組まれたグループが落ち着いてくる秋は、クラスのなかの「立ち位置」が見えやすくなる季節。「人気者になってほしい」と願う気持ちと、「人気より、やさしい子でいてくれたら」という気持ち。そのあいだで揺れている人も多いのではないでしょうか。
子どもの人間関係を研究する心理学では、「人気がある」ことと「好かれている」ことは、別々のものさしで測られています。そして研究から見えてくるのは、どちらか一方を選ぶ話ではない、ということ。みんなを引っぱる力と、相手を思いやる力。ふたつをあわせもつ子は、友だちから「やさしい」と思われ、同時に「影響力がある」とも見られていました。この記事では、ふたつの力の違いと、家庭で両方を育てるヒントを紹介します。
目次
「人気者」と「好かれる子」は、研究では別々に測られている
心理学で子ども同士の関係を調べるとき、よく使われるのが、クラスメートに名前をあげてもらう方法です。このとき「クラスで人気があるのは誰?」と聞くか、「好きな子は誰?」「一緒に遊びたい子は誰?」と聞くかで、選ばれる子の顔ぶれが変わってきます。
前者で名前があがる子は、目立っていて影響力がある「人気者」。後者で名前があがる子は、まわりから「一緒にいたい」と思われている「好かれる子」。研究では、このふたつを別のものとして扱っています。
片方だけの子には、それぞれに伸びしろがありました。好かれるだけでは場を動かす力が目立たず、人気があるだけでは信頼が追いつかない。両方そろった子だけが、やさしさと影響力の両面で評価されていたことになります。
やさしさと、みんなを引っぱる力は両立できる。どちらかを我慢して、どちらかを伸ばす必要はありません。

「人気者」にも、いろいろなタイプがいる
「人気者」と聞くと、強気で、ときにまわりを振り回す子を思い浮かべる人もいるでしょう。でも、人気者がみんなそうだというわけではありません。
クラスの人気者に多かったのは、リーダー的でありながら協力的で、まわりにも気を配れる子。目立つ力そのものが悪いわけではなく、その力をどう使うかで、まわりからの見え方は大きく変わってきます。
人をまとめる。遊びを盛り上げる。新しいことを提案する。こうした力は、やさしさと組み合わさったとき、クラスのなかで頼られる存在につながっていくもの。引っぱる力も、やさしさと同じくらい大切に育てたい力です。
低学年は、ふたつの力を一緒に育てやすい時期
「でも、それは高学年や中学生の話でしょう?」。幼稚園や低学年の子をもつ親なら、そう感じるのも無理はありません。この違いは、年齢によって見え方が変わることもわかっています。
裏を返せば、年齢が低いうちは、ふたつの人気がまだ重なりやすいと考えられます。幼稚園や低学年のいまは、「目立つ子」と「好かれる子」が同じ子であることも珍しくない時期。ふたつの力を、セットで育てやすいのがいまの時期です。
ふたつの違いを、表にまとめました。
| 人気者(目立つ力) | 好かれる子(一緒にいたい力) | 両方をもつ子 | |
|---|---|---|---|
| どんな力? | みんなを引っぱる、場を動かす | 相手を思いやる、安心させる | やさしさで、みんなを動かせる |
| 研究での聞き方 | 「クラスで人気があるのは誰?」 | 「好きな子は誰?」「一緒に遊びたい子は誰?」 | どちらの質問でも名前があがる |
| まわりからの見え方 | 影響力がある、リーダー的 | やさしい、信頼できる | やさしく信頼でき、影響力もある |
| 幼稚園・低学年では | ふたつはまだ重なりやすく、一緒に育てやすい時期 | ||
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ふたつの力の根っこにあるのは、人と関わる力
では、引っぱる力とやさしさは、どんな土台の上に育つのでしょう。
遊びを提案する。順番をゆずる。困っている子に「どうしたの?」と声をかける。途中で入ってきた子に「いいよ」と言える。どれも、人と関わる力の表れです。目立つ子も物静かな子も、この土台の上で、自分なりのやり方でふたつの力を伸ばしていきます。
人前に出るのが苦手な子にも、引っぱる力は育てられるもの。にぎやかな子にも、やさしさはもっと育てられるもの。性格を変える必要はなく、ふるまいをひとつ足していくイメージで十分です。
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家庭でできる、ふたつの力を育てる3つの足し算
1. 「どうしたい?」と聞いて、子どもの案を採用する場面を足す
週末に行く公園、夕飯のあとに遊ぶゲーム。小さなことでいいので、子どもに「どうしたい?」と聞いて、その案を家族で採用してみてください。
自分の提案でみんなが動いた経験は、「やってみよう」と言える力、つまりまわりを引っぱる力の種になります。物静かな子にこそ、試してほしい足し算です。
2. 家のなかに「どうぞ」の役目をひとつ足す
おやつを家族の人数分に取り分ける。玄関で家族の靴をそろえておく。食卓にお箸を並べる。家のなかに、誰かのために動く役目をひとつつくってみましょう。
順番をゆずる、手を貸すといった教室でのふるまいは、急に身につくものではありません。家族のあいだで「どうぞ」「ありがとう」を交わす経験が、やさしさの土台になっていきます。
3. ふたつが重なった瞬間を、そのまま言葉にして返す
「みんなを誘って、鬼ごっこを始めたんだね」「ルールを考えて、小さい子にも教えてあげたんだね」。引っぱる力とやさしさが一緒に出た場面を見かけたら、見たことをそのまま言葉にして返してみてください。
評価の言葉をつけ足さなくても、親が見ていてくれたという実感が、子どもにとっては何よりの手応えになります。行動力とやさしさが重なった場面に気づいてもらえた子は、次の場面でもまた、同じふるまいを選びやすくなるはずです。
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クラスの真ん中にいる子も、教室のすみで本を開いている子も、それぞれに育ちかけの力をもっています。人気者か、好かれる子か。その二択から一歩離れてみると、わが子のなかにある「引っぱる力」と「やさしさ」の両方が、少しずつ見えてくるかもしれません。今夜、「明日は何して遊びたい?」と聞くところから始めてみませんか。
FAQ(よくある質問)
Q. 幼稚園や低学年でも、「人気者」と「好かれる子」は違うのですか?
A. ふたつの違いを調べた研究の多くは、小学校高学年から中学生を対象にしています。学年が上がるにつれて差が広がることがわかっていて、幼稚園や低学年のうちは、まだ重なりやすいと考えられます。いまのうちから、引っぱる力とやさしさをセットで育てておくと、ふたつが分かれていく時期の支えになります。
Q. うちの子はクラスで目立たないタイプです。心配する必要はありますか?
A. 目立つかどうかと、好かれているかどうかは別のものさしです。うれしそうに名前を出す友だちがいるなら、それは大切な手がかりになります。引っぱる力は、家族で子どもの案を採用するなど、小さな場面から育てていけます。ただ、登園・登校をいやがる、元気のない日が続くといった様子があれば、早めに園や学校の先生に相談してみてください。
Q. うちの子は仕切りたがりで、友だちに強く言ってしまうことがあります。
A. みんなを引っぱろうとする力は、大切な力です。その力に、「みんなはどうしたいかな?」と相手の気持ちを聞くひとことを足してみてください。引っぱる力にやさしさが重なると、まわりからの信頼も得やすくなります。
(参考)
*1 Parkhurst, J. T., & Hopmeyer, A. (1998)|Sociometric popularity and peer-perceived popularity: Two distinct dimensions of peer status. The Journal of Early Adolescence, 18(2), 125-144.
*2 Rodkin, P. C., Farmer, T. W., Pearl, R., & Van Acker, R. (2000)|Heterogeneity of popular boys: Antisocial and prosocial configurations. Developmental Psychology, 36(1), 14-24.
*3 Cillessen, A. H. N., & Mayeux, L. (2004)|From censure to reinforcement: Developmental changes in the association between aggression and social status. Child Development, 75(1), 147-163.
*4 Newcomb, A. F., Bukowski, W. M., & Pattee, L. (1993)|Children’s peer relations: A meta-analytic review of popular, rejected, neglected, controversial, and average sociometric status. Psychological Bulletin, 113(1), 99-128.









