音楽をたのしむ/楽器 2018.9.22

ヴァイオリンを通じて見える「理想の親子関係」――子どもをぐんぐん伸ばす親の特徴

ヴァイオリンを通じて見える「理想の親子関係」――子どもをぐんぐん伸ばす親の特徴

子どもは良くも悪くも、親の影響を大きく受けるものです。子どもの才能が伸びていくかは、親の日頃の言動や子どもへの接し方にかかっていると言ってもいいでしょう。

ヴァイオリンの指導を通じてたくさんの親子関係を見てきた西谷国登さんに、子どもをグングン伸ばしていく親の特徴と、理想の親子関係について教えてもらいました。

構成/岩川悟 文/Tokyo Edit

子どものやることに興味を持つ

ヴァイオリンに限らず、楽器のレッスンでは、「先生」「生徒(子ども)」「親」の三者関係がとても大切になります。子どもにいくら情熱があっても親に理解がなければベストなレッスンはできません。

親の立場としては、「子ども本人にやる気があれば、レッスンすることに支障はないのではないか?」と思いますよね。ですが、教える側の視点からすると、子どもの成長にもっとも重要な「環境」をつくっている親が、子どものやることに興味を持っているかどうかが、上達への重要な条件だと見ています。

小さな子どもはなにかにつけ、親の興味を惹きたがります。「お母さん(お父さん)も、自分のやっていることが好きなんだな」と思えれば、当然モチベーションが上がりますし、そう思えなければやる気をなくしてしまうかもしれません。

ヴァイオリンならば、子どもがレッスンに参加するときや練習をするときは、できるだけ聴いてあげる。「今日はミスなく演奏できて本当に良かったね」と、感想を伝えてあげるのです。「あの箇所は上手くなったんじゃない?」と褒めてあげたり、少し専門家ぶってアドバイスしたりするのもいいですよね(笑)。

要は、子どものしていることに興味を持っているということをアピールするのが大事なのです。先生のアドバイスをメモや録音して覚えておいて、家で練習するときにもその指示を復習させてあげれば、協力的で素晴らしいじゃないですか。このようにして、親御さんがヴァイオリンに興味を持ち深くコミットしていると、その子のヴァイオリンの上達は間違いなく早まります

また、子どもをひとつ上のステップに進ませるには、いまより少しだけ上のレベルの課題に挑戦させることも重要になるでしょう。ヴァイオリンなら、「年上のお友だちが弾いていたあの曲、素敵だね。あんな曲が弾けるといいね!」などと声かけしてあげると良いかもしれませんね。

大事なのは、前向きな言葉でポジティブに声をかけてあげること。間違っても「〇〇ちゃんよりあのお友だちのほうが上手だね」と他の子と比べて批判するような言い方をしたり、「まだその曲をやっているの!?  早く〇〇をできるようにならなきゃ!」などと急かしたりするのは良くありません。

もちろん、ライバルを意識することで伸びる子どもがいることは事実です。ただ、わたしとしては、焦らずに子どもを認めて褒める姿勢をベースにし、「〇〇ちゃんならできる!」と背中を押してあげてほしいと思います。

子どもに伝えたいことは口先よりも態度で示す

子どもは非言語的なメッセージを、想像以上に敏感に受け取ります。口先だけで「〇〇は楽しいからやってみたら?」と言っても、態度や表情から親がそれを楽しんでいない、興味がないとわかれば、積極的に取り組もうとはしません。

わたし自身の子ども時代を振り返ってみても、親の影響はとても大きいものでした。父親は音楽家ではありませんでしたが、音楽が趣味で大好きだった。それこそ、毎日のように音楽を聴いて口ずさみ、譜面を楽しそうに読んでいたものです。そんな父親の姿を見てきたからこそ、わたしは音楽を「楽しい!」と思えましたし、辛いことがあってもくじけなかったのだと思います。

もし、父親が心から音楽を楽しまず、わたしの教育のためにしぶしぶ音楽を聴いていたとしたらどうでしょうか? わたしは、「ヴァイオリンってあまり面白くないな」と思うようになり、練習をすることにも新しい挑戦をすることにも、消極的になっていたかもしれません。

子どもは親のことをよく見ています。子どもに「こうあってほしい」と思うならば、まず自分が実践しようと心掛けることです。

実際にヴァイオリンなら、親がヴァイオリンを先にはじめるのはとっても効果的ですよ。これが子どもにとっていちばん説得力があり、効果的な教育法だと実感しています。実際に楽器をはじめないまでも、親がヴァイオリンの曲をあらかじめリサーチして、知識として持っておくのは大事なことです。わたしの教室に通う生徒を見ていても、親御さんがそのような姿勢でいると、お子さんも楽しくレッスンを受けている印象があります。

けっして難しいことではありません。「怖がらずに新しいことに挑戦してほしい」と思うなら、「お母さん(お父さん)、こんなことをはじめてみようと思っているんだよね」と、自分が挑戦する姿を子どもに見せる。なにかを楽しんでほしいと思うなら、自分が心から楽しむ姿を見せればいいのです。そう考えてみると、自分の世界も広がる気がしてなんだかワクワクしてきませんか?

子どもに将来の選択肢をたくさん見せる

まだ社会に出たことがない子どもは、将来の選択肢を知らないことがほとんどです。「ヴァイオリンが大好きだから、将来はヴァイオリニストになりたい!」とは思っても、ヴァイオリンで生きていく道は演奏家だけではないということは知らないわけです。この選択肢を幼いうちからたくさん見せてあげると、子どもは本当に自分に合った進路に進みやすくなるかもしれません。

ヴァイオリンで生きていく道は、本当にたくさんあります。わたしのように演奏家として活動したり教室を運営したりするのもひとつの道ですし、いまの時代はYouTubeなどで演奏を披露して広告収入を得る人だっています。テレビ番組などに楽曲提供をする人がいれば、スタジオミュージシャンとして活躍する人もいます。

働き方がどんどん多様化する現在、「特定の仕事1本で生きていく」ということにとらわれる必要はないとわたしは考えています。演奏するだけとか教えるだけとかではなく、音楽家だってマルチで仕事を考えるべき時代なのです。音楽家兼イベントプロデューサー、音楽家兼作家、音楽家兼料理人……。音楽の才能と音楽以外の才能を掛け合わせてマルチに活躍する人たちがいても普通だと思います。わたしが留学していたアメリカでは、不動産の仕事をしながら演奏家の仕事をしている人もいましたよ。

せっかく興味を持てるものを見つけたのに、いろいろな選択肢があるということを知らないばかりに途中で辞めてしまうのは、あまりにもったいないこと。音楽家、演奏家を目指して努力するのはとても素晴らしいことですが、演奏家になれなくても音楽に関わって生きていく道はあるのです。もちろんそれは、他の仕事でも同じですよね。子どもに小さいうちからいろいろな大人の仕事風景を見せる。雑談のなかでたくさんの選択肢を話す、体験させるなどして、可能性やチャンスを伝えてあげてほしいと思います。

■ ヴァイオリニスト・西谷国登さん インタビュー一覧
第1回:子どもの音感を伸ばす3つのステップ――音感はトレーニングによって育てられるもの
第2回:幼少期に習うヴァイオリンにある4つのメリット――身体面・精神面にもたらされる良い影響
第3回:子どもが大成していく「褒める」教育――我が子の才能を伸ばすために親がすべきこと
第4回:ヴァイオリンを通じて見える「理想の親子関係」――子どもをぐんぐん伸ばす親の特徴

【プロフィール】
西谷国登(にしたに・くにと)
1983年2月5日生まれ、東京都出身。ヴァイオリニスト・指揮者。ニューヨーク大学大学院修了(M.M.特別奨学金含む)ポートランド州立大学卒業(B.M.4年連続奨学金授与)。大学入学時より大学オーケストラの首席コンサートマスターを務め、2006年7月、2007年6月、2009年5月に米国各地にてリサイタル(いずれも満席)を行う。2010年、日本に帰国。2012年9月、日本帰国後初リサイタル(1日2回公演)を行う。その後、2014年5月より2016年5月、2018年5月と浜離宮朝日ホールにてリサイタルシリーズを行っている。また、日米のさまざまなオーケストラと共演。5枚のCDアルバムを(株)エス・ツウよりリリース。最近では、NHK-BS、TV Asahi、J:COMに出演するなどメディアでも活躍中。在米中、ニューヨーク大学非常勤講師、ポートランド州立大学非常勤講師、ローズ市音楽学院講師を歴任。また、情熱的で的確な後進の指導には定評があり、国際コンクールを含むコンクールやオーディション等でも入賞等の結果を残している。第25回、第26回「日本クラシック音楽コンクール優秀指導者賞」2年連続受賞。2017年4月、名門米国イリノイ大学、ウェスタンイリノイ大学の各大学に招待され、リサイタルや公開レッスンの他講演を行う。これまでに、田中千香士(元・東京芸大名誉教授)、キャロル・シンデル(Yハイフェッツ愛弟子)、マーティン・ビーバー (コルバーン音楽院教授)の各氏に師事。現在、Kunito Int’l String School (KISS) 教室主宰。石神井Int’lオーケストラ音楽監督。クニトInt’lユースオーケストラ音楽監督。池袋コミュニティカレッジ講師。読売・日本テレビ文化センター講師。日米各地でレクチャー講演や公開レッスンを開催。また、各地でコンクール審査員、講座の監修・公共イベントのプロデューサーを務める。著書に『国登ヴァイオリン教本(全4巻)』(サーベル社)※Amazon売れ筋ランキング弦楽器部門第1位獲得。『ヴァイオリン留学愚痴日記@米国オレゴン州ポートランド』(文芸社) などがある。
西谷国登公式サイト https://nkunito.com

【ライタープロフィール】
株式会社Tokyo Edit
金融・経済系を中心としたメディア、コンテンツの企画・制作・運用を行う。運営するチーム「Tokyo Edit」には、ライターや編集者の他、デザイナーやカメラマン、プログラマーなど、幅広い職種のクリエイターが登録。高品質で結果の出るコンテンツづくりを目指している。