教育を考える 2021.2.26

“過保護” はやめなくてもいい!? 子どものために「本当はやらなくていい」7つのこと

長野真弓
“過保護” はやめなくてもいい!? 子どものために「本当はやらなくていい」7つのこと

子どもの幸せ感度に影響を与える要素のひとつが、「親の過干渉」ということをご存じですか。『世界標準の子育て』著者・船津徹氏は、「親の過干渉が子どもの幸福度を下げる」と警鐘を鳴らしています。

2020年9月にユニセフが発表した『レポートカード16-子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か』。この先進・新興国38ヶ国に住む子どもたちへの調査では、日本の子どもの「精神的幸福度」はワースト2位でした。恵まれた環境にありながら、幸せを感じられないというのは深刻な問題です。

もちろん、幸福度を下げる要因は過干渉だけではないでしょう。しかし、子どもに「自分らしい人生を切り開く力」を授けるためにも、過干渉はやめたほうがよさそうです。過干渉育児にならないように「親が本当はやらなくていいこと」を、いま一度見直してみましょう。

親が “本当はやらなくていい” 7つのこと

1. 子どもに早くから読み書きを教えなくていい

多数の著書がある教育学者・齋藤孝氏(明治大学文学部教授)によると、「7歳までは神のうちなので、それまでに生きる力をしっかりと育むことが重要」なのだそう。「親子で共有する時間」を何よりも大切にするべきで、心が十分に育たないうちに詰め込む早期教育はよくないとのこと。読み書きを教えるよりも、絵本の読み聞かせによる情操教育のほうがより大切だと話しています。

また、「塾ソムリエ」として35年以上子どもを指導している中学受験情報局主任相談員・西村則康氏も、「子どもの準備ができていない時期の早期英才教育は、ほとんど役にたたない」と述べています。その理由は、早期教育が人間の脳の成長過程に沿っていないから。早く〇〇できたほうがいいだろうと親は考えがちですが、その考えこそが過干渉になっています。

2. 親は子どもに何でも教えなくてもいい

子どもは「これは何?」「どうして?」など、知らないことは何でも聞いてくるものです。そのとき大人は、その質問に正しく答えなければいけないと思いがち。でも、大人だって知らないことはありますよね。そんなときは、「お父さん(お母さん)もそれは知らないなあ。一緒に調べてみよう」と、子どもの好奇心に寄り添い、一緒に学ぶ時間を共有しましょう。親が調べたことを教えるよりも、何倍も子どもの成長の糧となるのですから。

アメリカの生物学者で、子どもの感性について綴られた名著『センス・オブ・ワンダー』の著者・レイチェル・カーソン氏も、「『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではない」と語っています。大人も心を開いて、子どもとともに感じ、学ぶ姿勢をとることこそ正しい行動と言えるでしょう。

3. しつけ期が過ぎたら、親はしつけを手放していい

心理学者でスクールカウンセラーでもある諸富祥彦氏(明治大学文学部教授)は、小学3年生くらいまでの「しつけ期」が過ぎたら、できるだけ子どもの行動に口出しをしないようにするべきだと話しています。なぜなら、それ以降は子どもの個性を育てる時期に入るから。

「こうしなさい」「これはやめなさい」と言われたら、子どもはどうしても親の指示に引っ張られてしまいます。人間の土台がある程度固まったあとの成長期には、親の干渉は邪魔にさえなるのです。よほどのことがない限りは、口出しはしないようにしましょう。必要なときのみサポート役に徹するという、子育ての方向転換をする時期は10歳頃なのです。

4. 「家庭内ルール」は親が決めなくていい

家庭での過ごし方について、親があれやこれや指示したり、小言を言ったりして、親主導で進めてしまいがちではありませんか? 「全米最優秀女子高生」の母として有名になり、現在はライフコーチとして活躍中のボーク重子氏は、子どもの自己肯定感や自主性の大切さを力説しています。そして、それらを育むためのひとつの方法として、家庭内ルールは親の指示ではなく、「子ども自身で決めさせる」ことをすすめているのです。

ルールの目的は「家族の幸せ」。年齢に応じて、お手伝いや勉強のことなど、子どもが自分ができると思うことは責任をもってやってもらいましょう。しかし、実際にやってみたら、何か違うと思うことや、問題が生じることもあるはず。そんなときは、子ども自身がルールを変更してもOK。物事の改善を重ねて、思考のしなやかさを鍛える絶好のチャンスですよ。

5. 親は「子どもファースト」でなくていい

子どもの学校、習い事など、親の生活は子ども中心になりがち。予定が詰まっているときなどは、子どもの一挙手一投足に口を出したり、次の行動を指示したりしている親御さんは多いのではないでしょうか。ときには、子どもから離れることも必要です。もし、子どもが学校や習い事に遅刻して恥ずかしい思いをしても、それは子どもの責任です。

教育評論家の尾木直樹氏は、「過干渉をやめる手段」として、子どもから意識をほかに向けることをすすめています。「なかなか宿題をしない子どもを目の端に入れながらも、自分の仕事をする」「ときどきは自分の趣味で出かける」など、親が子どもと少し距離をとることで、子どもの自主性は育まれ、親のストレスは減るという、双方によい効果が生まれるとのこと。子どもから目を離す勇気が、子どもを成長させるのです。

6. 夫婦の意見はそろえなくていい

子育て中は、子どもの教育方針や学校の選択など、夫婦で意見がぶつかることもあるでしょう。そんなときでも、「無理して教育方針を一致させなくてもよい」と言うのは、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏です。その理由は、夫婦の意見に幅があったほうが、その幅のぶんだけ子どもの個性が育つから。

たとえば、「今回はお母さんの意見に賛成。英検受けるよ」「英検よりもサッカーを頑張りたいから、今回はお父さんの意見に賛成だな」といった具合に、子どもは自由に未来を選択することができます。広い視野で子どもの将来を考えてあげることが、過干渉を防ぐひとつの手段ともなりそうです。

7. 「過保護」はやめなくてもいい

児童精神科医として40年以上も多くの親御さんの子育てを見てきた故・佐々木正美氏は、「過保護」と「過干渉」は違うと言いきります。一番大きな違いは、行動に子どもの意思や希望が反映されているかどうか。「過干渉」は、子どもの気持ちにかかわらず、親がなんでも「やりなさい」とお膳立てしてしまい、子どもの自主性を置き去りにしてしまうこと。

一方の「過保護」は、子どもがやりたいことがあれば、背中を押したり、サポートしたりすることです。これは、子どもの意思を尊重し、意欲を応援することですので、悪い影響はないと言います。「子どものために」と思う気持ちは同じでも、そこに子どもの心や意欲が介在しているかどうかを、常に意識することがとても大切です。

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子どもとの接し方に迷ったら読みたいおすすめの本

「過干渉かもしれない……でもどうすればいいの?」と、子どもへの接し方で迷ったとき、心をシンプルにしたり、大切なことを再確認させてくれたり、視野を広げてくれたりする、おすすめの本3冊をご紹介します。それぞれ、違った視点から「果たすべき親の役割」について書かれています。過干渉で子どもを縛りつけてしまわないように、ぜひ読んでみてください。

■『センス・オブ・ワンダー』

作者である、海洋生物学者のレイチェル・カーソン氏が、甥のロジャーとの自然を探求した体験を通して、感受性の大切さを語った本です。タイトルの「センス・オブ・ワンダー」とは、「美しいもの、未知なもの、神秘的なものに目を見はる感性」。幼児期には、親子一緒に自然を体験し、体感することが何よりも尊く、大切だと、静かに、しかし毅然と語りかけます。自然といっても、田舎でなければいけないというわけではありません。都会にも “生命” は溢れています。子ども時代に感受性を磨くことは、将来の好奇心や意欲につながり、学びを深め、将来を切り開く力となるでしょう。50年以上も前の本ですが、「子育てにおいて本当に大切なものはなんなのか」、ときどき手にとって再確認したくなるバイブル的名著です。

■『この子はこの子のままでいいと思える本』

親と子ども、双方の心に寄り添う多くの温かい名言を残した児童精神科医の故佐々木正美氏。その佐々木氏に寄せられた子育て相談をまとめた1冊です。「また叱りすぎてしまった……」など、親ならば誰でも抱く悩みそれぞれに、丁寧に対応しています。語りかけるようにつづられた具体的なアドバイスは、親のがんじがらめになっている気持ちを優しく解いてくれます。佐々木先生は、「 “期待” という親の愛情は、子どもにとっては自分を否定されたに等しい」と指摘。 “期待” は過干渉を生む元凶ともなります。子育ては迷いと悩みの連続ですよね。自分の子育てに自信がもてないとき、佐々木氏の言葉が染み入ります。

子どもを幸せにするのなんて
とても簡単なことですよ。
親が笑顔なら
子どもはそれだけで幸せなのです。
自分が親を幸せにしたと思って
自信たっぷりに育っていくのです。

(引用元:佐々木正美(2020), 『この子はこの子のままでいいと思える本』, 主婦の友社.)

■『世界基準の子育て』

世界の教育を紹介し、日本の教育を見つめ直す1冊。日米両国で長年教育に携わってきた著者ならではの視点で、日本の子育ての問題点を指摘します。著者・船津氏が挙げる「世界標準の子育ての条件」は以下の3つ。

  1. 困難に負けない「自信」
  2. 人生を自分で決めていくための「考える力」
  3. 人に愛される「コミュニケーション力」

日本の親がやりがちな過干渉は、このなかでも特に重要な「自信」を子どもから奪うとのこと。勉強ができるだけではなく、自分らしい人生を逞しく生き抜く力をわが子が得るために、親は何をしてあげたらよいのか……。子どもの年齢ごとに、わかりやすく、具体的に語られています。 “子育ての軸” がぶれているなと感じるときこそ、本書を手に取ってみてください。

***
親が必要以上に指図しなくても、子どもは自ら育つ生命力をもっています。その「生きる力」を信じてあげることからスタートして、目指すべきは、目先の小さな目標ではなく、「幸せな人生」という大きな場所であることを忘れずにいたいものですね。

(参考)
Newsweek|親の過干渉が子供の幸福感を下げる
Mind 子どもの心を育てるために|過保護と過干渉 佐々木正美
NHK|過保護やめたいけれど…
unicef|ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング 日本の子どもに関する結果
FQ JAPAN 男の育児バイブル|子供の才能を伸ばせる親、潰してしまう親
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船津徹(2017),『世界標準の子育て』, ダイヤモンド社.
佐々木正美(2020),『この子はこの子のままでいいと思える本』, 主婦の友社.
レイチェル・カーソン 著, 上遠恵子 訳(1996),『センス・オブ・ワンダー』, 新潮社.
齋藤孝(2020),『1日15分の読み聞かせが本当に頭のいい子を育てる』, マガジンハウス.