教育を考える/芸術にふれる 2018.11.6

英語学習だけで大丈夫? 子どもがグローバル社会で活躍するために本当に大切なこと。

編集部
英語学習だけで大丈夫? 子どもがグローバル社会で活躍するために本当に大切なこと。

日本の伝統文化」と聞いて、何を思い浮かべますか?
茶道・華道、歌舞伎、能、狂言、三味線、俳句、百人一首、和食、折り紙……無形文化遺産として海外からの評価も高い伝統芸能から、子どもたちにとって身近な遊びとして現代でも親しまれているものまで、実にさまざまなものが浮かぶのではないでしょうか。

これからも大事に受け継いでいきたい日本文化。近年、子どもへの教育的効果の観点から、改めて注目をされていることはご存知でしょうか? また2020年開催の東京オリンピックを目前に控えて、今後ますます外国の人と交流する機会が増えるでしょう。日本に根付く伝統文化への理解を深めることは、海外の人とコミュニケーションをとる際に非常に役立ちます。

ここでは、日本の伝統文化を学ぶことでどんな良い影響があるのか、具体的に考えていきましょう。

伝統文化を学ぶことで得られるメリット

私たち大人が子どものころに比べて、現代の子どもを取り巻く環境は激変しています。物や情報があふれ、よりスピーディーに、より簡単にと目まぐるしく変化する日常の中で、いつのまにか見過ごされ忘れ去られてしまうものも増えました。とくに、子どもたちが日本の伝統文化について学んだり経験したりする機会が減ってきていると、多くの人が警鐘を鳴らしています。

しかし、日本の伝統文化を学ぶことは、現代を生きる子どもたちにとってとても良い影響があります。将棋や日本伝統文化の素晴らしさを子育てに生かすための情報発信を行なっている「株式会社いつつ」の取締役である尾崎久恵さんは、「子育てにもっと伝統文化を取り入れるべき」と述べます。その理由として、以下のような効果が期待できるそう。

どの年代の人とも話ができる子になる
日本の伝統文化を知ることで、同世代だけではなく年配の方たちとも会話を楽しむことができる。

アイデンティティの確立に役立つ
国際化が進むなか、小さい頃からの実体験に基づいた文化への理解が、自分の言葉で日本の魅力を語れる人間へと成長させる。

日本の歴史に興味を持つようになる
長い歴史がある日本の伝統文化。その時代ごとに意味のある成り立ちがあると知ることで、自然と時代の流れや日本の歴史への興味にもつながっていく。

礼儀作法が身につく
日本の伝統文化には、礼に始まり礼に終わるものや、きちんとした型が決まっているものが多い。伝統文化を学ぶことで礼儀作法が自然と身につき、意識しなくても日常的に礼儀正しい振る舞いができるようになる。

(引用元:株式会社いつつ|日本の伝統文化を利用した子育てが子どもに良い5つの理由

また、オリンピックの開催を控えて、日本の伝統文化の教育を積極的に推進している東京都教育委員会は、その理念を次のように示しています。

日本の伝統・文化理解教育は、子供たち自身が今日的な視点から我が国の伝統や文化をとらえ直し、日本のすばらしさを誇りに思うと同時に、世界の中で日本人としてよりよく生きていくために、何をどのように生かしていくかについて理解し実践する教育のことです。

(引用元:東京都教育委委員会|日本の伝統・文化理解教育の推進

ここで言う「伝統・文化」とは、次のことを指します。
長い年月を経て、日々の中で様々な形で伝わってきたもの
現代において評価され価値あるもの
新たな文化となって未来へと連綿と受け継がれて生き続けるもの

ただ“古いもの”だけではなく、“受け継がれているもの”にはちゃんと理由があります。その価値を再確認し、先人の知恵や意志をありがたく学ばせてもらえるということは、子どもたちがより良い人生を歩むための礎となるでしょう。

国際交流には欠かせない自国文化への理解度

今後ますます国際化が進み、2020年に東京オリンピックが開催されれば、さらに世界中の人々と交流する機会が増えるでしょう。しかし、せっかく英語を勉強して話せるようになったとしても、大切なのは会話の“中身”です。とくに、日本に興味がある外国人にとって、日本の文化・伝統はとても魅力的に映ると聞きます。話をしてみると、一般の日本人よりももっともっと深い知識を持ち合わせていることもあります。

日本に根付いている風習を紹介する図鑑『にっぽんの図鑑』(小学館)を監修した信州大学の藤森裕治教授は次のように述べています。

海外で異なる文化的背景を持つ人と接するとき、祖国に関する知識と誇りがなければ相手にされない。伝統文化に触れることは『日本とは何か』と考えるきっかけであり、それがあってこそ他者を理解しようとする姿勢が生まれる。

(引用元:産経ニュース|知ってますか?!日本の伝統文化 子供向け図鑑や紹介本、刊行相次ぐ

異なる慣習や文化の違いを受け入れることができる“多様性”を身につけるためには、海外に目を向けると同時に自分が生まれ育った日本の文化や伝統についても知る必要がありますね。

異文化を理解し大切にしようとする心は、自国の文化理解が基盤となって、はぐくまれるものです。そのために、学校は、子どもたちが日本の伝統・文化のよさや豊かさに気づき、その価値や意義を理解するとともに、自分の生まれ育った郷土や自国に誇りと愛着をもち、自分が日本人であるというアイデンティティを確立する教育を推進することが必要です。

(引用元:東京都教育委委員会|日本の伝統・文化理解教育の推進

外国のお友だちから学ぶこと、そして日本の子どもたちから海外に向けて伝えられる文化や伝統を守り抜くためにも、大人として教えるべきことはたくさんあります。子どもたちが日本の伝統文化に興味をもつきっかけを作ってあげることも、大人の大事な役目なのではないでしょうか。

世界で人気の日本アニメ。ルーツは鳥獣戯画と葛飾北斎!?

世界中で高い評価を得ている日本のアニメーション。毎年フランスで開催される世界最大規模の日本ポップカルチャーイベント「ジャパンエキスポ」では、日本アニメのコスプレをする外国人は後を絶たず、ショーやコンペを取り入れるなど、その盛況ぶりは年々加熱しています。

海外の人と仲良くなるきっかけとして、日本のアニメや漫画の話をすると盛り上がると聞きますが、文化的な視点からさらに深い知識を伝えることができたら素敵だと思いませんか?

一説によると、日本のアニメの起源はなんと「絵巻物」にさかのぼるとも言われています。日本の代表的な絵巻物と言えば「鳥獣戯画」。平安末期に描かれたと伝えられる鳥獣戯画は、猿や兎や蛙たちが擬人化され、相撲や年中行事などを繰り広げます。

また、モネやゴッホらの印象派の画家たちに大きな影響を与えたとされる葛飾北斎。浮世絵で有名な北斎は、河童や妖怪などのキャラクターを登場させたり、庶民の生活を巧みに描写したりと、日本のアニメーションのルーツともされている「北斎漫画」を生み出しました。このように、古くから日本人の独特の発想や表現力は世界の人たちから認められていたのです。

「日本のアニメが好き」と話してくれた外国のお友だちに、鳥獣戯画や北斎について教えてあげたらきっと喜ばれるはずです。その経験は、伝える手段として英語を学ぶ原動力になるだけではなく、日本が誇る素晴らしい文化を世界の人たちに伝えたい、という意欲にもつながるでしょう。

***
国際化が急速に進む中、英語をマスターさせることばかりに気を取られて、肝心の「英語で話す内容」については気が回らないのが現実です。外国のお友だちと積極的に意見交換ができるように、また日本の良いところをたくさん伝えられるように、伝統文化に触れる機会があれば積極的に学ばせてあげたいものですね。

(参考)
株式会社いつつ|日本の伝統文化を利用した子育てが子どもに良い5つの理由
東京都教育委委員会|日本の伝統・文化理解教育の推進
産経ニュース|知ってますか?!日本の伝統文化 子供向け図鑑や紹介本、刊行相次ぐ
東京都教育委員会|「日本の伝統・文化」教材集|〔体験・創出的な単元〕
Japan Expo公式サイト|Japan Expoとは