あたまを使う 2026.10.9

「クラスの人気者」と「みんなに好かれる子」は、じつは別の子です

「クラスの人気者」と「みんなに好かれる子」は、じつは別の子です

参観日の教室で、つい目で追ってしまう子がいます。休み時間になると自然と人が集まり、遊びのルールもその子のひとことで決まっていく。そんな姿を見たあと、教室のすみで本を開いているわが子に目が移ると、胸のあたりが少しざわつくかもしれません。

春に組まれたグループが落ち着いてくる秋は、クラスのなかの「立ち位置」が見えやすくなる季節。「人気者になってほしい」と願う気持ちと、「人気より、やさしい子でいてくれたら」という気持ち。そのあいだで揺れている人も多いのではないでしょうか。

子どもの人間関係を研究する心理学では、「人気がある」ことと「好かれている」ことは、別々のものさしで測られています。そして研究から見えてくるのは、どちらか一方を選ぶ話ではない、ということ。みんなを引っぱる力と、相手を思いやる力。ふたつをあわせもつ子は、友だちから「やさしい」と思われ、同時に「影響力がある」とも見られていました。この記事では、ふたつの力の違いと、家庭で両方を育てるヒントを紹介します。

「人気者」と「好かれる子」は、研究では別々に測られている

心理学で子ども同士の関係を調べるとき、よく使われるのが、クラスメートに名前をあげてもらう方法です。このとき「クラスで人気があるのは誰?」と聞くか、「好きな子は誰?」「一緒に遊びたい子は誰?」と聞くかで、選ばれる子の顔ぶれが変わってきます。

前者で名前があがる子は、目立っていて影響力がある「人気者」。後者で名前があがる子は、まわりから「一緒にいたい」と思われている「好かれる子」。研究では、このふたつを別のものとして扱っています。

アメリカの中学生(7〜8年生)727人を対象にした調査では、「好かれる子」の多くは「人気者」とは見られておらず、「人気者」の多くも「好かれる子」には入っていませんでした。好かれているだけの生徒は「やさしい」「信頼できる」と見られる一方、場を仕切るタイプとは見られていませんでした。人気があるだけの生徒は、場を仕切る力はあっても「攻撃的」「お高くとまっている」と見られがちだったといいます。そして両方で高く評価された生徒は、「やさしく信頼できる」うえに影響力もあり、攻撃的とは見られていなかったと報告されています。(イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校、心理学者のジェニファー・パークハースト氏ら)*1

片方だけの子には、それぞれに伸びしろがありました。好かれるだけでは場を動かす力が目立たず、人気があるだけでは信頼が追いつかない。両方そろった子だけが、やさしさと影響力の両面で評価されていたことになります。

やさしさと、みんなを引っぱる力は両立できる。どちらかを我慢して、どちらかを伸ばす必要はありません。

宇宙の絵が描かれた黒板の前で、手づくりのロケットを掲げる子ども

「人気者」にも、いろいろなタイプがいる

「人気者」と聞くと、強気で、ときにまわりを振り回す子を思い浮かべる人もいるでしょう。でも、人気者がみんなそうだというわけではありません。

アメリカの小学4〜6年生の男の子452人を対象にした研究では、人気者と見られている子のなかに、ふたつのタイプがいることがわかりました。ひとつは、かっこよくて運動が得意、リーダー的でありながら、協力的でまじめ、攻撃的ではないと見られていたタイプ。もうひとつは、かっこよくて運動が得意だけれど、攻撃的と見られていたタイプです。前者に当てはまる子は、後者のおよそ2倍いたと報告されています。(デューク大学、心理学者のフィリップ・ロドキン氏ら)*2

クラスの人気者に多かったのは、リーダー的でありながら協力的で、まわりにも気を配れる子。目立つ力そのものが悪いわけではなく、その力をどう使うかで、まわりからの見え方は大きく変わってきます。

人をまとめる。遊びを盛り上げる。新しいことを提案する。こうした力は、やさしさと組み合わさったとき、クラスのなかで頼られる存在につながっていくもの。引っぱる力も、やさしさと同じくらい大切に育てたい力です。

低学年は、ふたつの力を一緒に育てやすい時期

「でも、それは高学年や中学生の話でしょう?」。幼稚園や低学年の子をもつ親なら、そう感じるのも無理はありません。この違いは、年齢によって見え方が変わることもわかっています。

905人の子どもを10歳から14歳まで(5〜9年生)追いかけた研究では、学年が上がるにつれて、「人気者であること」と「好かれていること」の結びつきが弱まっていくことが示されました。(コネチカット大学、心理学者のアントニウス・シレッセン氏ら)*3

裏を返せば、年齢が低いうちは、ふたつの人気がまだ重なりやすいと考えられます。幼稚園や低学年のいまは、「目立つ子」と「好かれる子」が同じ子であることも珍しくない時期。ふたつの力を、セットで育てやすいのがいまの時期です。

ふたつの違いを、表にまとめました。

人気者(目立つ力) 好かれる子(一緒にいたい力) 両方をもつ子
どんな力? みんなを引っぱる、場を動かす 相手を思いやる、安心させる やさしさで、みんなを動かせる
研究での聞き方 「クラスで人気があるのは誰?」 「好きな子は誰?」「一緒に遊びたい子は誰?」 どちらの質問でも名前があがる
まわりからの見え方 影響力がある、リーダー的 やさしい、信頼できる やさしく信頼でき、影響力もある
幼稚園・低学年では ふたつはまだ重なりやすく、一緒に育てやすい時期

住宅街の道路を歩く、赤いランドセルを背負った小学生の女の子の背後からの姿

ふたつの力の根っこにあるのは、人と関わる力

では、引っぱる力とやさしさは、どんな土台の上に育つのでしょう。

子どもの仲間関係に関する多くの研究をまとめて分析した結果、友だちから好かれている子どもは、人と関わる力(社交性)が高く、考える力も備えていて、攻撃的なふるまいやひとりで引きこもる様子が少ない傾向が見られました。(リッチモンド大学、心理学教授のアンドリュー・ニューカム氏ら)*4

遊びを提案する。順番をゆずる。困っている子に「どうしたの?」と声をかける。途中で入ってきた子に「いいよ」と言える。どれも、人と関わる力の表れです。目立つ子も物静かな子も、この土台の上で、自分なりのやり方でふたつの力を伸ばしていきます。

人前に出るのが苦手な子にも、引っぱる力は育てられるもの。にぎやかな子にも、やさしさはもっと育てられるもの。性格を変える必要はなく、ふるまいをひとつ足していくイメージで十分です。

家庭でできる、ふたつの力を育てる3つの足し算

1. 「どうしたい?」と聞いて、子どもの案を採用する場面を足す

週末に行く公園、夕飯のあとに遊ぶゲーム。小さなことでいいので、子どもに「どうしたい?」と聞いて、その案を家族で採用してみてください。

自分の提案でみんなが動いた経験は、「やってみよう」と言える力、つまりまわりを引っぱる力の種になります。物静かな子にこそ、試してほしい足し算です。

2. 家のなかに「どうぞ」の役目をひとつ足す

おやつを家族の人数分に取り分ける。玄関で家族の靴をそろえておく。食卓にお箸を並べる。家のなかに、誰かのために動く役目をひとつつくってみましょう。

順番をゆずる、手を貸すといった教室でのふるまいは、急に身につくものではありません。家族のあいだで「どうぞ」「ありがとう」を交わす経験が、やさしさの土台になっていきます。

3. ふたつが重なった瞬間を、そのまま言葉にして返す

「みんなを誘って、鬼ごっこを始めたんだね」「ルールを考えて、小さい子にも教えてあげたんだね」。引っぱる力とやさしさが一緒に出た場面を見かけたら、見たことをそのまま言葉にして返してみてください。

評価の言葉をつけ足さなくても、親が見ていてくれたという実感が、子どもにとっては何よりの手応えになります。行動力とやさしさが重なった場面に気づいてもらえた子は、次の場面でもまた、同じふるまいを選びやすくなるはずです。

***

クラスの真ん中にいる子も、教室のすみで本を開いている子も、それぞれに育ちかけの力をもっています。人気者か、好かれる子か。その二択から一歩離れてみると、わが子のなかにある「引っぱる力」と「やさしさ」の両方が、少しずつ見えてくるかもしれません。今夜、「明日は何して遊びたい?」と聞くところから始めてみませんか。

FAQ(よくある質問)

Q. 幼稚園や低学年でも、「人気者」と「好かれる子」は違うのですか?

A. ふたつの違いを調べた研究の多くは、小学校高学年から中学生を対象にしています。学年が上がるにつれて差が広がることがわかっていて、幼稚園や低学年のうちは、まだ重なりやすいと考えられます。いまのうちから、引っぱる力とやさしさをセットで育てておくと、ふたつが分かれていく時期の支えになります。

Q. うちの子はクラスで目立たないタイプです。心配する必要はありますか?

A. 目立つかどうかと、好かれているかどうかは別のものさしです。うれしそうに名前を出す友だちがいるなら、それは大切な手がかりになります。引っぱる力は、家族で子どもの案を採用するなど、小さな場面から育てていけます。ただ、登園・登校をいやがる、元気のない日が続くといった様子があれば、早めに園や学校の先生に相談してみてください。

Q. うちの子は仕切りたがりで、友だちに強く言ってしまうことがあります。

A. みんなを引っぱろうとする力は、大切な力です。その力に、「みんなはどうしたいかな?」と相手の気持ちを聞くひとことを足してみてください。引っぱる力にやさしさが重なると、まわりからの信頼も得やすくなります。

(参考)
*1 Parkhurst, J. T., & Hopmeyer, A. (1998)|Sociometric popularity and peer-perceived popularity: Two distinct dimensions of peer status. The Journal of Early Adolescence, 18(2), 125-144.
*2 Rodkin, P. C., Farmer, T. W., Pearl, R., & Van Acker, R. (2000)|Heterogeneity of popular boys: Antisocial and prosocial configurations. Developmental Psychology, 36(1), 14-24.
*3 Cillessen, A. H. N., & Mayeux, L. (2004)|From censure to reinforcement: Developmental changes in the association between aggression and social status. Child Development, 75(1), 147-163.
*4 Newcomb, A. F., Bukowski, W. M., & Pattee, L. (1993)|Children’s peer relations: A meta-analytic review of popular, rejected, neglected, controversial, and average sociometric status. Psychological Bulletin, 113(1), 99-128.