2018.10.6

運動オンチは遺伝しない! 子どもの身体能力向上のために、運動が苦手な親でもできること

[PR]
運動オンチは遺伝しない! 子どもの身体能力向上のために、運動が苦手な親でもできること

トップアスリートの親に、元オリンピック選手やスポーツのコーチが多いのは周知の事実。その印象も影響してか、親である自分が「運動オンチ」の場合、子どもにも期待はできない……と端から諦めてしまう親御さんも少なくないようです。

しかし、たとえ親が運動が苦手だとしても、のびのびと体を動かす環境を整えてあげさえすれば、子どもなら誰しも運動ができるようになる素質を持っているんだとか。

“運動ができる”子は、“よく運動をしている”子

そもそも「運動神経」が「良い」だとか「悪い」だとかいう言い方は、実は俗語であると東京大学大学院総合文化研究科教授の深代千之氏は言っています。

「運動神経」は脳の発する信号が筋肉まで行く神経系の途中に必ずあるもので、そこには電気信号が通るだけ。その通り方に良いも悪いもないそう。そして、運動のうまい、下手も生まれつき備わったものではなくて、練習で後天的に獲得されたものだといいます。

練習で培った技術やトレーニングで身につけた成果は遺伝しません。つまり、運動能力はその人が育った環境によって、発達の度合いが大きく変わってくるのです。これらを前提に話を進めると、運動が得意か苦手かは、運動を「しているか」「していないか」によるといえます。

(引用元:谷けいじ(2018),『12歳までの最強トレーニング』,株式会社実業之日本社.)太字は編集部にて施した

授業や運動会で活躍する子はよく目立ちます。それを見て、あの子はもともと運動のセンスがあるのね、と決めつけてしまうのは大きな間違い。

苦手意識がある子との違いは、できるようになるまでの時間的な個人差があるだけで、どんな子も練習すれば上達するのです。

子どもの身体能力向上のために、運動が苦手な親でもできること2

遊びの経験が豊富であればあるほど、運動の上達も早い?

深代千之氏は、ボール投げや縄跳びなど、すぐにできる子は目立つけれど、その子はそれに近い動作を無意識のうちに過去にやっていて、その経験を「アッあれだ」と思い出して適応しているのだと言います。

運動において大切なのは「基本操作」を身につけること。「基本動作」には「立つ」「乗る」「歩く」など、日常生活に必要な動きもあれば、「投げる」「走る」「跳ぶ」「蹴る」など運動に関係する動きもあります。それを、神経系の発達が著しい幼児期に、なるべく数多く経験してその回路をつくっておけば、毎日の生活をスムーズに行えるようになり、将来、スポーツも上手にできるようになるというわけです。

(引用元:遠山健太(2006),『ママだからできる 運動神経がどんどんよくなる 子育ての本』,株式会社 学研パブリッシング.)

スポーツに役立つ「基本動作」を子どもが自然に身につけやすいのは、以下のような自由な外遊びです。

〇鬼ごっこ

  • 走る
  • かわす
  • 追いかける

〇相撲ごっこ

  • 押す
  • 引く

〇ボール遊び

  • 投げる
  • つかむ
  • 蹴る

〇砂場遊び

  • 立つ
  • 座る

このような動きを、子どもが自主的に自分のものにしていくことができるのであれば、どんどん外遊びをさせたいものですね。

幼い頃には、いろいろな運動を楽しんで

また、活躍するテニス選手が「2歳の頃からラケットを握っていた」などと聞くと、早くから専門的に習わせないことには、人よりうまくなることはできないのだ! と思ってしまいがち。

けれども、上記のことからもわかるように、幼いころに大切なのは「基本動作」ができるようになること。たとえアスリートに育ってほしいとしても、幼児期にはひとつだけのスポーツを極めるべき、というわけではないようです。

脳・神経系の発達は10歳でほぼ完成するので、運動の基礎となる協調性や反射的な身のこなしなどはこの時期までに身につけておくことが理想的です。この時期を過ぎるまでは、特定のスポーツに専念するよりも、いろいろな運動を経験することが大切です。

(引用元:山口典孝(2013),『全解剖 体を動かす「骨と筋肉」のしくみ 知ればスポーツがうまくなる!』,株式会社 誠文堂新光社.)

経験を重ねていくうちに、「サッカーが得意」「マラソンは苦手」などの競技の適性が出てくるものですが、その適性を生かし特定の専門的なトレーニングを始めるには、高校生くらいでも十分なんだとか。

たとえば北京オリンピック男子400メートルリレー銅メダリストの朝原宣治さんは、中学時代はハンドボール部に所属し、高校に入学してから本格的に陸上競技を始めたそう。また、トリノオリンピックフィギュアスケート金メダリストの荒川静香さんは、子どものころは水泳と体操をやっていたといいます。

早くからひとつの競技ばかりを続けていると、筋力の偏りや故障の原因にもなりかねません。お父さんとキャッチボール、友だちと放課後にサッカー、休み時間は登り棒、習い事はスイミングといったように、幼少期にはいろいろなスポーツを体験し、基礎となる運動能力の習得に励むことがベストです。

***
運動能力が高まると、まず正しい姿勢が取れるようになり、想像力や協調性を身につけることができるようなるなど、将来の役に立つこともいっぱい。学力の向上につながるとも言われています。まさに、運動はやっておいて損はなし。子どもがなるべく小さなうちから、遊びながらのびのびと体を動かす習慣をつけていけるといいですね。

文/酒井絢子

(参考)
ウーマンエキサイト|運動神経は遺伝するの?
ベネッセ 教育情報サイト|運動神経がよい子に育つ運動環境とは? 幼児期にやらせておきたい運動
谷けいじ(2018),『12歳までの最強トレーニング』,株式会社実業之日本社.
遠山健太(2006),『ママだからできる 運動神経がどんどんよくなる 子育ての本』,株式会社 学研パブリッシング.
中村和彦(2011),『運動神経がよくなる本』,マキノ出版.
深代千之+長田渚左(2012),『スポーツのできる子どもは勉強もできる』,株式会社 幻冬舎.
こどもまなび☆ラボ|一生に一度のゴールデンエイジに運動能力を一気に伸ばす! 幼児期に重要な3つの外遊び。