あたまを使う/国語 2019.1.9

「もしも」で想像力&発想力に火をつける!――個性的な作文がスラスラ書ける魔法の言葉

山口 拓朗
「もしも」で想像力&発想力に火をつける!――個性的な作文がスラスラ書ける魔法の言葉

「もしも」を使うと作文が書きやすくなる!?

途中で書くことに詰まってしまう。子どもにはよくあることです。そんなときは、子どもに魔法の言葉もしもをふりかけてあげてください。「もしも」をきっかけに想像の世界へ飛び立つことで、意識下にある、その子の考えや気持ちが表に出てくることも少なくありません。そうして表に出てきたものが、作文を魅力的なものにしていきます。

魔法の言葉「もしも」には、大きく変身する役割願望達成の役割のふたつがあります。どちらも、作文を書くうえで有効です。作文を書く子どもの手が止まったら「もしも」を使って、親がさり気なく誘導してあげてください。

「もしも」で他の誰かに大変身!?

ひとつ目の「もしも」は“変身するためのものです。あたり前のことですが、子どもは、子ども自身の視点で物事を考えようとします。そうすると、自分の意見や考えを書いた段階で「もう十分に書いた」「もうこれ以上は書けない」とブレーキをかけ始めます。そんなときに、変身の「もしも」を使えば、子どもは迷い込んだ袋小路から抜け出して、新たな世界へと旅立つことができます。

「もしも」を使った変身例

・もしも、わたしがママだったら〜
・もしも、わたしがこの本の作者だったら〜
・もしも、わたしが、ケーキ屋さんの店長だったら〜
・もしも、ボクが日本でいちばんえらい人だったら〜
・もしも、ボクが宇宙飛行士だったら〜
・もしも、わたしが校長先生だったら〜
・もしも、わたしが動物園の飼育員さんだったら〜
・もしも、わたしがディズニーランドのスタッフだったら〜
・もしも、ボクがユーチューバーだったら〜
・もしも、わたしがAKB48のメンバーだったら〜

「もしも」を使って、自分以外の何者かに変身することで、子どもの想像力が一気に活性化します。変身した立場から、それぞれ個性的な考えや提案を書き始めることでしょう。

もしもボクが、日本でいちばんえらい人だったら、おじいちゃんとおばあちゃんに、広くて安全なおうちをプレゼントします。おじいちゃんやおばあちゃんが転ばないようにせっけいした家で、ボクやお父さん、お母さんともいっしょにくらせる大きなおうちです。
それから、まちにゴミをすてる人からは「ばっ金」をとります。ふけつな町になると、みんなが気もちよくないからです。
あと、歩きながらスマートフォンをいじっている人からはスマートフォンをとりあげます。じこがおきるとあぶないからです。
もしも、ボクがユーチューバーだったら、まい日、コンビニやスーパーでうっているおかしを食べて、しょうかいしたいと思います。
日本のおかしを食べつくしたら世界のおかしもしょうかいしたいです。今までに見たこともないおかしをしょうかいできたら、見てくれる人たちも楽しいと思います。
味だけではなく、おかしの形や、おかしの入ったふくろや箱、おかしの名前なども、しょうかいしたいです。

どちらの作文も、変身先の世界で、自由に想像力を発揮しています。作文を読んだ親は、作文の内容がどうであれ、ホメてあげてください。「スマートフォンを取り上げるのは、ちょっと厳しいんじゃない?」「毎日、お菓子を食べたらお金がかかるよ」などという正論やジャッジは無粋です。子どもの想像力を讃えて共感してあげることが大切です。

「もしも」で願望が達成する!?

もうひとつの「もしも」は“願望を叶えるためのものです。どんな子どもにも「こうなったらいいなあ」と思っている願望があるはずです。「もしも」を使って、その願望が満たされた状態を作り出します。すると、子どもの感情が動き、新たな発想が生まれやすくなります。

「もしも」を使った願望達成例

・もしも、ママがボクにガミガミおこらなくなったら〜
・もしも、九九がすらすらと言えるようになったら〜
・もしも、かん字テストで100点とれるようになったら〜
・もしも、クラスでいちばん背が大きくなったら〜
・もしも、かけっこがはやくなったら〜
・もしも、夏休みのしゅくだいがひとつもなかったら〜
・もしも、学校に行かず、一日中、好きなだけゲームをしてもいいなら〜
・もしも、わたしがお姫さまだったら〜
・もしも、お兄ちゃんと別々の、自分だけの部屋があったら〜
・もしも、この世からびょうきがなくなったら〜

願望の裏側にあるのは、その子の思想・価値観のようなものです。「もしも」で願望を叶えることによって、その子が大切にしている“宝物”が見えてきます。もちろん、願望が達成した状態ですので、子どもも活き活きと言葉を紡いでいくはずです。

もしも、夏休みのしゅくだいがひとつもなかったら、ボクは朝から晩まで野山をかけまわりたいです。昆虫さいしゅうをするためです。
まい日、山や林に行ってカブトムシやクワガタをつかまえます。お昼はおにぎりをたべます。川ではザリガニやカエルをつかまえます。
海に行くことができたら、パパといっしょにつりをしたいです。海にもぐって貝をとるのも楽しそう。おおきな魚をつったら家にもちかえって、おさしみにしてみんなに食べてもらいます。
もしも、お兄ちゃんと別々の、自分だけの部屋があったら、どんなにうれしいかわかりません。本だなには、大好きな「ワンピース」のマンガをならべます。
いっしょうけんめいに作ったひこうきとクルマのプラモデルはつくえの上におきます。青色が好きなので、カーテンとまくらは青色にしたいです。
ともだちがあそびにきたら、いっしょにマリオのゲームをします。お兄ちゃんに「うるさい!」「外であそんでこい!」といわれるしんぱいがありません。そうなったらうれしいです。

いずれの作文も“その子らしい”言葉で書かれています。願望が達成した状態をイメージすることは、大人だけでなく、子どもにとってもワクワクすることなのです。それゆえ筆も進みやすくなります。

「もしも」という乗り物で自由に旅させよう!

もちろん、「もしも」は、ネガティブなアプローチで使うこともできます。たとえば、「もしも、大きなじしんがおきたら〜」「もしも、おさいふをおとしてしまったら〜」「もしも、たいようが消えてなくなってしまったら〜」「もしも、テストで0点をとってしまったら〜」という具合です。

親としては少しドキっとするかもしれませんが、ネガティブなアプローチも“その子らしさ”であり、“個性の片鱗”に違いありません。したがって、ネガティブなアプローチで「もしも」を使ったとしても、とがめずに見守ってあげてください。くり返しになりますが、子どもが「もしも」という乗り物でどこへ行こうとも、大人がその事実を受け止めてあげることが肝心です。

「もしも」には、子どもの想像力や発想力のスイッチを“オン”にするパワーがあります。ふだんから「もしも」で考えるクセをつけておくと、いざというきに(作文を書くときに)オリジナリティが生まれやすくなります。「もしも」という乗り物で旅することは、子ども自身にとっても、楽しく刺激的なはず。きっと今まで以上にワクワクしながら作文を書くようになるでしょう。