教育を考える 2019.3.26

我慢ができない子どもは “親の愛” を試してる!? 「自制心」が育つ親の言葉

編集部
我慢ができない子どもは “親の愛” を試してる!? 「自制心」が育つ親の言葉

公園で遊具を使う順番が守れない、お店でおもちゃが欲しいと駄々をこねる——そんな我が子の行動を見ると、「我慢が足りないのでは?」と心配になるでしょう。

「我慢する力」とは「自制心」とも言い換えられますね。この自制心は将来の学力や社会的成功に影響するといわれています。であれば、幼少期のうちにしっかり身につけさせておきたいものです。

今回は、「我慢する力」の必要性と、不足する原因を明らかにしたうえで、子どもの自制心を養うコツについてお話しします。

子どもの自制心を問う「マシュマロ実験」。学力との関係性は?

読者のみなさんは、「マシュマロ実験」をご存知でしょうか。この実験は、子ども時代の自制心と、将来の社会的成果の関連性を調査するため、1970年にアメリカのスタンフォード大学で実施されました。実験方法は次のとおりです。

職員の子どもたちが通う、学内の付属幼稚園の4歳の子ども186人が実験に参加した。被験者である子どもは、気が散るようなものが何もない机と椅子だけの部屋に通され、椅子に座るよう言われる。机の上には皿があり、マシュマロが一個載っている。実験者は「私はちょっと用がある。それはキミにあげるけど、私が戻ってくるまで15分の間食べるのを我慢してたら、マシュマロをもうひとつあげる。私がいない間にそれを食べたら、ふたつ目はなしだよ」と言って部屋を出ていく。

(引用元:ウィキペディア|マシュマロ実験

おいしそうなマシュマロを目の前にした子どもたちは、あえて目を伏せたり、自分の髪に触れたりして、自分の欲求と戦っていたそうです。しかし、最後まで我慢し続け、見事2つ目のマシュマロを獲得した子どもは、全体のわずか3分の1ほどだったといいます。

注目すべきは、その後1988年に行われた追跡調査です。最初の調査が実施されたとき4歳だった被験者たちは、このとき20代になっています。この追跡調査では、マシュマロを食べなかった被験者グループにいたメンバーが、その後の人生で周囲から優秀と評価されていること、大学進学適性試験(SAT)の点数がマシュマロを食べたグループのメンバーより210点も高いことが認められたそうです。また、最初の調査実施時の自制心の有無が、そのまま持続していることも明らかにされました。

そして、実験から40年後に実施された脳神経を調べる調査でも、「マシュマロを食べなかった子ども」は大人になってからも、感情的刺激による衝動に影響されにくいという結果が出ました。

つまり、幼少期に身につけた「我慢する力」は、学力向上につながること、大人になっても活かされ続けることがわかったのです。

我慢ができない子どもは“親の愛”を試してる!?

とはいえ、マシュマロ実験でも大半の被験者が2つ目のマシュマロに辿り着けなかったように、「我慢する力」が備わっている子どもは少数派です。多くの子どもは、なぜ我慢できないのでしょうか。

その原因のひとつとして考えられるのは、「我慢しなくてはならない理由がわからない」「我慢する必要がないと感じている」といったことです。マシュマロ実験の例で言えば、被験者である子ども自身が実験自体のルールを理解できていなかったり、「より多くのマシュマロが食べたい」という欲求より「より早くマシュマロが食べたい」という欲求のほうが強かったりするのかもしれません。

一方で、「愛情不足のサイン」という説もあります。例えば、わざと親に「◯◯して」と駄々をこねたり、「待って」と言われても走り出したりする行動——これらは、親に注目して欲しいから、もしくは、親の愛情を試したくてやっている可能性があります。

いずれにしても、子どもに「我慢する力」を身につけさせたいなら、日頃から愛情をもって接し、なぜ我慢しなくてはならないかを根気強く説明してあげる必要がありそうです。

「我慢する力」を育てるには、成長に合わせた声かけを

では、子どもの「我慢する力」を育てるために、親はどんな態度で、どんな言葉をかけてあげればいいのでしょうか。子どもの成長段階別に考えていきましょう。

【3歳】
大人の言うことをわかっているような、わかっていないような、微妙な時期です。それでも、我慢が必要な場面では、なぜ必要なのか丁寧に説明してあげましょう。特に、危険を伴う場面では、親が毅然とした態度で、しっかり言い聞かせなくてはなりません。このとき、忘れてはならないのが、子どもの言い分にも耳を傾けること。この頃の子どもは、自我が芽生え、反抗することも多くなります。その気持ちを汲み取ってあげることが必要です。子どもの気持ちを理解したうえで、親としての気持ちや考えを話してあげましょう。
<例>
シチュエーション:公園で子どもが「もっと遊びたい」と泣いたとき
おすすめの声かけ:「公園楽しいから、もっと遊びたいよね。でもね、これから暗くなって寒くなるよ。〇〇ちゃんが風邪引いちゃったら、お母さん悲しいな」
【4〜5歳】
4歳を過ぎると、基本的な生活習慣が確立されてきます。社会にルールや決まりごとがあることを理解できるのも、この時期です。また、自分と他者の違いに気づき、少しずつ周りの人の気持ちや状況もわかるようになってきます。自分の行動が周囲にどう影響するか、わかりやすく伝えてあげるといいでしょう。
<例>
シチュエーション:病院の待合室で子どもが騒いだとき
おすすめの声がけ:「ここには、病気で頭が痛い人や、お熱のある人がたくさんいるんだよ。〇〇ちゃんがうるさくすると、その人たちがもっと辛くなっちゃうから、静かにしていようね」
【6〜7歳】
小学校に上がると、先生や友人たちと人間関係を構築し、社交性が身についてきます。また、行動範囲も広がり、心身ともに成長する時期でもあります。物事の因果関係を理解し、「今これをやると、後でどうなるか」という未来をイメージできるようになっているはずです。この時期に、子どもに我慢することを教えるコツは、その我慢の先にどんな“よいこと”があるのか丁寧に説明することです。そして、その“よいこと”を子ども自身にイメージさせ、未来の目標や楽しみを作らせます。
<例>
シチュエーション:「もっとお菓子を食べたい」と子どもが駄々をこねたとき
おすすめの声がけ:「今これ以上食べたら、お菓子なくなっちゃうよ。我慢すれば、明日もまたおいしく食べられるから、楽しみにしていてね」
【8歳以上】
8歳頃から、子どもは親に口答えするようになります。そのため、頭ごなしに叱ったり、我慢を押しつけたりすると、逆効果になることもあるでしょう。目指すは、子ども自身が判断し、セルフコントロールできるようになることです。子どもが自分の意思で我慢できるよう、意識を高めるような言動を心がけましょう。例えば、実際に子どもが何かを我慢できたとき、「よく我慢できたね」と、褒めてあげましょう。褒められたことの喜びは、自然と次の我慢につながります。大切なのは、親が子どもを抑圧するのではなく、信じて寄り添ってあげること。そこから生まれる信頼関係と安心感のなかで、子どもの我慢する力は育っていきます。

***
「うちの子には我慢が足りない」と嘆く前に、我慢が必要なシーンで、親子でどんな会話があったか思い出してみましょう。成長段階に応じた、適切な声がけができていたでしょうか?

子どもの将来を左右する可能性のある「我慢する力」。親子で寄り添いながら、一緒に高められたら、それが一生ものの大切なプレゼントになるかもしれません。

(参考)
ウィキペディア|マシュマロ実験
PNAS|Behavioral and neural correlates of delay of gratification 40 years later
All About暮らし|我慢ができない、待てない子供を変えるしつけのコツ5
PHPのびのび子育て 2017年9月号,PHP研究所
PHPのびのび子育て 2018年8月号,PHP研究所