いつも笑顔で話しかけてくれる。子どもの情報も教えてくれる。なのに、別れたあとにどっと疲れている。よく思い返せば、さりげないマウント、探るような質問、ほかのママの悪口。友達のようで、どこか敵のようでもある相手は、friend(友達)とenemy(敵)を組み合わせて「フレネミー」と呼ばれます。
ママ友の世界は、このフレネミー関係が生まれやすい場所。今回は、なぜママ友関係は消耗しやすいのか、そしてどう距離をとればいいのかを、研究知見をもとに考えます。「私が神経質なだけかな」と自分を責めているママにこそ、読んでほしい内容です。
目次
「会うと疲れる」は、気のせいではありません
まずお伝えしたいのは、その疲れは決して気のせいではない、ということです。大人107名を対象にした実験では、好意と嫌悪が入り混じった「アンビバレントな友人」とペアになった参加者は、支えになってくれる友人とペアになった場合と比べて、嫌な出来事を話す場面での血圧の反応が大きく、そばにいるだけでも心拍数が高く、不安も高まることが示されました。(ブリガムヤング大学、心理学教授のジュリアン・ホルト=ランスタッド氏ら)*1
注目したいのは、明らかな敵よりも、「好き」と「イヤ」が同居する相手のほうが、体への負担が大きい場合があるという点です。「いい人なんだけど、なんか疲れる」。その「なんか」の正体を、体は正直に教えてくれていたのです。
だから、「せっかく仲良くしてくれてるのに、疲れるなんて思う私が悪い」と自分を責める必要はありません。疲れを感じとれるあなたのセンサーは、正常に働いています。
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親しくなるほど、モヤモヤは生まれやすい
「距離を置けばいいだけでは?」と思うかもしれません。でも、ママ友関係がやっかいなのは、単純に切れない構造のなかにあることです。
13歳から99歳までの187名に、自分の人間関係を「近い」「問題がある」の両面から整理してもらった調査では、配偶者や親など親しい関係ほど、「大切だけど困った面もある」というアンビバレントな見方をされやすいことが示されました。(パデュー大学、発達心理学者のカレン・フィンガーマン氏ら)*2
つまり、関わりが深くなるほど、モヤモヤは混ざりやすくなるのです。毎日の送迎で顔を合わせ、子どもどうしが仲良しで、行事もクラスLINEも一緒。ママ友は「知り合い」と呼ぶには近すぎる存在になりがちだからこそ、フレネミー的なモヤモヤの温床になりやすいのです。
さらに、1,100名以上を対象にした人間関係の調査では、「ときどき面倒だ、難しい」と感じる相手は人間関係全体の約15%を占め、そうした関係は、相手を自由に選べない場面でこそ維持されやすいことが報告されています。(カリフォルニア大学バークレー校、社会学教授のクロード・フィッシャー氏ら)*3
ママ友は、まさに「自由に選べない関係」の代表格。子どもの学校、住んでいる地域、役員の割り当て。自分で選んだわけではない縁のなかで付き合いが続くから、合わない相手とも関係が切れない。あなたの対人スキルの問題ではなく、構造の問題なのです。では、どうすればいいのでしょうか? ヒントは「3つの足し算」にあります。
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今日からできる、3つの「足し算」
関係を断ち切る宣言も、我慢し続けることも必要ありません。いまの付き合いに、次の3つを足してみるのはいかがでしょうか。
1. 「会う場面」を選ぶ
関係そのものを切らなくても、接点の種類は選べます。ふたりきりのランチは疲れるけれど、複数人での立ち話なら平気。長電話はしんどいけれど、LINEの返信なら負担がない。「この人とは、この場面でだけ会う」と決めるだけで、消耗はぐっと減ります。関係は続いているので、角も立ちません。
2. 「情報の窓」を少し閉める
フレネミー的な関係で燃料になりやすいのが、こちらの情報です。子どもの成績、習いごと、家庭の事情。話したくないことは「うちはまだ全然決めてなくて」とふんわり返すだけで充分。嘘をつく必要はなく、窓のカーテンを少し閉めるイメージです。比べる材料が減れば、マウントの機会も自然と減っていきます。
3. 「ママ友以外の時間」をひとつ足す
ママ友の世界が人間関係のすべてになると、そこでのモヤモヤが心の全部を占めてしまいます。昔からの友人との連絡、趣味のつながり、あるいはひとりで過ごすカフェの時間。評価も比較もない場所をひとつもっておくことが、フレネミー関係を「気にしすぎない」ための土台になります。
***
ママ友との付き合いは、子どもの卒園・卒業とともに、驚くほどあっさり形を変えていくものです。いま目の前の関係がすべてに見えても、それは人生のなかの一区間に過ぎないのかもしれません。無理に好きにならなくていいし、無理に嫌いにならなくてもいい。ちょうどいい距離を自分で選べたら、それで充分です。今日も送り迎え、おつかれさまでした。
FAQ(よくある質問)
Q. 「フレネミー」とは、どんな相手のことですか?
A. friend(友達)とenemy(敵)を組み合わせた言葉で、親しく振る舞いながら、マウント、詮索、陰口などの敵対的な言動もとる相手を指します。心理学でいう「アンビバレントな関係」に近い概念です。
Q. 距離を置いたら、子どもの友達関係に影響しませんか?
A. 親どうしの距離と子どもどうしの仲は、必ずしも連動しません。挨拶と連絡事項のやりとりを丁寧に続けていれば、親密な付き合いを減らしても、子どもの関係に大きな影響が出ることは少ないと考えられます。
Q. 悪口や噂話に巻き込まれそうなときは、どうすれば?
A. 同意も否定もせず、「そうなんだ、知らなかった」と受け流して話題を変えるのが安全です。同調すると「あの人も言っていた」と伝わるリスクがあります。その場を離れる口実(お迎え、買い物など)をいくつか用意しておくのも有効です。ただし、明らかに誰かを傷つける内容が続く場合は、その輪から離れる選択を考えてもよいでしょう。
(参考)
*1 Holt-Lunstad, J., Uchino, B. N., Smith, T. W., & Hicks, A. (2007)|On the importance of relationship quality: The impact of ambivalence in friendships on cardiovascular functioning. Annals of Behavioral Medicine, 33(3), 278-290.
*2 Fingerman, K. L., Hay, E. L., & Birditt, K. S. (2004)|The best of ties, the worst of ties: Close, problematic, and ambivalent social relationships. Journal of Marriage and Family, 66(3), 792-808.
*3 Offer, S., & Fischer, C. S. (2018)|Difficult people: Who is perceived to be demanding in personal networks and why are they there? American Sociological Review, 83(1), 111-142.









