あたまを使う 2026.2.5

「考えて行動できない」は普通だった――シュタイナー教育が示す「7年周期」の子ども発達と親の関わり方

編集部
「考えて行動できない」は普通だった――シュタイナー教育が示す「7年周期」の子ども発達と親の関わり方

「うちの子、もっと考えて行動してほしい」「感情的になりやすくて困る」——そんな悩みを抱えている親は少なくありません。でも、子どもの発達には順序があり、それぞれの時期に育てるべき力があることをご存じでしょうか?

世界中で実践されているシュタイナー教育では、「7年周期」で子どもの発達を捉え、それぞれの段階に合わせた教育を行っています。

今回は、東京都立川市にある東京賢治シュタイナー学校の池田真紀氏(幼児部教師)と鴻巣理香氏(学校教師)へのインタビューをもとに、この発達観と具体的な教育実践をご紹介します。学校に通わせなくても、この視点は子育てに活かせるはずです。

シュタイナー教育が考える「7年周期」とは

発達段階の3つの時期

シュタイナー教育では、人間の成長を7年ごとに区切って考えます。

0〜7歳:「意志を育てる時期」

体全体で世界を吸収し、「やってみたい!」という意欲が原動力となります。

7〜14歳:「感情を育てる時期」

美しいものに心を動かされ、感情が豊かになり、体験を通じて学ぶ力が最も伸びます。

14〜21歳:「思考を育てる時期」

抽象的な思考ができるようになり、自分の意見を持ち、批判的に考える力が芽生えます。

なぜこの順序が大切か

池田氏はこの発達観について、「それぞれの段階で必要な力を丁寧に育てることが、その後の学びの土台になります」と説明しています。

早期に思考教育を詰め込もうとすると、意志や感情が未発達なまま頭だけで学ぶことになり、かえって学びが浅くなってしまうのです。

🏠 親が意識できること

  • いまの時期、わが子は「何を育てる段階」なのかを知る:発達段階を理解するだけで、焦りが減る
  • 「まだ考えて行動できない」は自然なこと:発達段階として当たり前だと受け止める

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両手を上げて喜ぶ兄弟

【0〜7歳】意志の時期—体で学ぶ土台づくり

この時期に大切にしていること

0〜7歳の時期、シュタイナー学校では、自然素材の教材を使うことを重視しています。木、布、羊毛など、触ったときの感触が豊かな素材が、子どもの感覚を育てるのです。

プラスチックの既製品おもちゃではなく、想像力を働かせて遊べるシンプルな道具を選ぶことで、子ども自身が「どう使おうか」と考える余地が生まれます。 また、メディアとの距離を保つことも大切にされています。

池田氏はこう語ります。 「この時期の子どもには、受動的な刺激よりも、自分で体を動かし、手を使って遊ぶ体験が大切です」 ーー。代わりに、大人の行動を「模倣」することで学ぶ機会を大切にしているのです。

🏠 家庭で意識できること

  • おもちゃや遊び道具を見直してみる:自然素材、シンプルな形のものを選ぶ
  • メディア時間を意識的に調整する:受動的な刺激よりも、体を動かす遊びを優先
  • 「大人の背中を見せる」場面を増やす:料理や掃除など、模倣する機会を作る

⚠️ 注意点:環境を整えることの大切さ

この時期の子どもは、環境から多くを吸収します。だからこそ、シンプルで落ち着いた環境を整えることが大切です。

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おもちゃの木琴で遊ぶ父と姉妹

【7〜10歳頃】感情の時期へ—芸術と体験を通じた学び

7歳を過ぎると、子どもは「感情の時期」に入ります。この時期、シュタイナー学校ではどんな教育実践をしているのでしょうか。インタビューから具体的に見ていきましょう。

フォルメン線描

シュタイナー学校独自の活動のひとつが「フォルメン線描」です。美しい曲線や直線のパターンを、ゆっくりと丁寧に描いていく活動で、集中力と感性を同時に育てます。単なるお絵描きではなく、「形の美しさ」を体験することが目的です。

エポック授業

「エポック授業」とは、同じ科目を3〜4週間、毎日集中して学ぶ方式です。たとえば算数なら、3週間ずっと算数だけを学びます。「ひとつのテーマに深く向き合うことで、知識が断片的にならず、その教科全体への理解が深まる」と鴻巣氏は説明。

一般的な学校のように毎日違う科目を切り替えるのではなく、じっくり取り組むことで、子どもは学びに対する集中力と持続力を育てていきます。

芸術活動(水彩画、音楽、手仕事)

シュタイナー教育では、芸術活動が教育の中核に位置づけられています。水彩画では、色彩を体験することで情緒を育て、音楽では、リコーダーや合唱を通じて協調性と表現力を育む。

そして手仕事——編み物、木工、縫い物などを通じて、「形にする喜び」を体験します。「手を動かして何かを作り上げる体験は、忍耐力や段取りを考える力も育てる」と鴻巣氏も断言しています。

体を使って学ぶ

算数の授業でも、体を動かします。たとえば足し算を学ぶとき、実際に体を使ってジャンプしたり、歩いたりしながら数を数えることもあるそうです。

「体験を通じて学ぶことで、より深く理解できる」から。五感を使った学びは、この時期の子どもに特に効果的です。

評価しない教育

シュタイナー学校には、テストや成績表がありません。その代わり、教師が一人ひとりの子どもについて丁寧な所見を書きます。

鴻巣氏はこう語ります。「比較されない環境だからこそ、子どもは安心して自分のペースで成長できます」とーー。数値化された評価に一喜一憂するのではなく、その子自身の成長を長い目で見守る姿勢が貫かれています。

8年間同じ担任

東京賢治シュタイナー学校では、1年生から8年生(中学2年生相当)まで、同じ担任が持ち上がります。

「8年という時間をかけて関わることで、子どもの個性や成長のリズムを深く理解できます。子どもにとっても、『この先生は自分のことをわかってくれている』という安心感が成長を支えます」(鴻巣氏)

信頼関係を築くには時間がかかるからこそ、長いスパンで関わることの価値がここにあります。

🏠 家庭で意識できること

  • 何かひとつのことに短期集中で取り組む経験を作る:工作、料理、プロジェクトなど
  • 芸術体験の機会を増やす:美術館、音楽会、工作、絵を描くなど
  • きょうだいや他の子と比較しない声かけを心がける:「○○ちゃんはできるのに」をやめる
  • 長い目で子どもの成長を見守る姿勢をもつ:いまできないことも、時間をかけて育つと考える

💡 学力面での心配は少ない

シュタイナー学校の卒業生は、公立高校、シュタイナー高等部、海外留学など、多様な進路を選択。テストや評価がなくても、自主性と創造性が育ち、学力面での心配は少ないと言います。

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勉強中に大爆笑する子どもたち

FAQ:よくある質問

Q1. 7年周期の発達観は、すべての子どもに当てはまるのですか?

A. シュタイナー教育の7年周期は、あくまで一つの発達の見方です。個人差はありますが、「いまの時期に何を育てるべきか」を意識することで、焦らず子どもを見守ることができます。

Q2. 早期教育とどう違うのですか?

A. 早期教育が「早く知識を詰め込む」ことを重視するのに対し、シュタイナー教育は「発達段階に合わせて、土台から順に育てる」ことを重視します。意志や感情が育っていない段階で思考教育を詰め込むと、学びが浅くなってしまうという考え方です。

Q3. 家庭でシュタイナー教育を取り入れるには、何から始めればいいですか?

A. まずは「いま、わが子は何を育てる時期か」を意識することから始めましょう。0〜7歳なら自然素材のおもちゃやメディアとの距離、7〜10歳なら芸術体験や比較しない声かけなど、できることから取り入れてみてください。

Q4. テストや評価がないと、学力が心配です

A. シュタイナー学校の卒業生は、多様な進路を選び、学力面での心配は少ないと言います。体験を通じた深い学びと、自主性・創造性が、その後の学びを支えます。

Q5. エポック授業のように、家庭でも集中して学ぶ時間を作るべきですか?

A. 家庭では、工作や料理など、何かひとつのことに短期集中で取り組む経験を作ることが有効です。深く没頭する体験が、集中力と持続力を育てます。

Q6. 「考えて行動できない」のは、本当に発達段階の問題ですか?

A. 7歳までは「意志の時期」で、思考力はまだ発達途上です。「考えて行動する」力は7歳以降に育ち始めます。焦らず、いまの時期に必要な「やってみたい」という意欲を大切にしましょう。

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「意志→感情→思考」という順序で育てることには、深い意味があります。それぞれの時期に必要な力を丁寧に育てることが、その後の学びや人生の土台になるのです。

シュタイナー学校に通わせることはできなくても、この発達観は日々の子育てに活かせます。「いま、何を育てる時期か」を意識するだけで、親の関わり方が変わり、焦りも減るはずです。完璧を目指す必要はありません。できることから、少しずつ。

子どもの発達段階を理解することで、親自身も安心して見守ることができるのではないでしょうか。

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「点数」で子どもを評価しない――力強い意志を育む「シュタイナー教育」の本質
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「模倣となりきり」で想像力が伸びる――感覚がフル稼働する「シュタイナー教育の1日」
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