「地頭がいい」と聞くと、どのような人をイメージしますか?
語彙が豊富な人、頭の回転が速い人、話していて楽しい人などが思い浮かぶのではないでしょうか。そもそも、「地頭」とはなんなのでしょう。
ちなみに辞書では次のように説明されています。
大学などでの教育で与えられたのでない、その人本来の頭のよさ。一般に知識の多寡でなく、論理的思考力やコミュニケーション能力などをいう。
(引用元:デジタル大辞泉|じ-あたま〔ヂ-〕【地頭】)
つまり、地頭の良し悪しはテストの点数だけで判断できるものではないのです。そしてじつは、地頭は、まわりの環境次第でぐんぐん伸ばすことができます。わが子の地頭をよくしたいと考えている親御さんは、ぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
今回は、専門家の意見を参考にしながら、 “地頭がいい子” の5つの特徴をピックアップしました。お子さんはいくつ当てはまりますか?
地頭がいい子の特徴1:観察力がある
教育デザインラボの代表理事である石田勝紀氏によると、地頭のいい子は、未就学児のうちから「人はなんのために生きているの?」などと哲学的な質問をぶつけてくるのだそう。たとえば普通の子どもなら、「この虫の名前はなに?」「魔女ってなに?」など、大人への質問はシンプルかつ具体的です。しかし地頭のいい子は、幼いうちから哲学的、抽象的な質問をしてくるのだと言います。抽象度の高い質問ができる子は、俯瞰で物事を眺める習慣が身についています。つまり、観察力が優れているのです。
石田氏によると、「地頭のいい子は、勉強と日常のボーダーが曖昧」なのだそう。それは、勉強以外の時間にも多くのものを観察して思考しているという状態を指します。子どもの地頭をよくしたいなら、このように学びのスイッチが常にオンになっているのが理想的です。そのためにも、日常的にさまざまなものに興味をもたせるように働きかけるといいでしょう。どんなに小さなことでも、身の回まわりのものに興味をもっているとすべてが学びにつながります。
観察力を鍛えるには、「いつもとは違う」ことに気づかせるクイズを出すのがおすすめ。
- 「今日のカレーにはいつもとは違う具が入ってるよ。なーんだ?」
- 「(模様替えをして)お部屋のなかがいつもと違うと思わない? どこが変わったかわかるかな?」
ポイントは「子どもの探究心をくすぐるようなクイズを出してあげること」だと石田氏は言います。ただし、そこで返ってくる答えが間違っていても、責めたりあきれたりしないように注意してください。「なるほど~」「そう思うんだね」と楽しく会話が続くような声かけを意識しましょう。
地頭がいい子の特徴2:判断力がある
私たちを取り巻く環境は、日々変化しています。特に近年では、社会の仕組みや価値観を大きく揺るがすような出来事が頻繁に起こり、そのつど柔軟に対応する力が求められています。脳科学者の茂木健一郎氏いわく、「地頭の良さは『変化に適応できる』ということ」なのだそう。この「変化への適応」というのは、ただ流れに身を任せることではありません。変化する状況に対して、自分はどうすればいいのかを考えて、判断できる力がついているという意味です。
幼児教室講師を経て、親子向けの食育プログラムを提供している高橋未来氏は、たくさんの親子と接した経験から「頭のいい子」と「地頭のいい子」には決定的な違いがあると言います。それは、偏差値の高い学校へ通っているいわゆる「頭のいい子」が教えられているのは、「正解に最短でたどり着く方法」であるのに対し、「地頭がいい子」は「正解を見つける機会を提供されてきた」という点。地頭がいい子の親に話を聞くと、子どもにたくさんの遊びを体験させるなかで、「あなたはどう思うの?」の問いをとても大事にしていたそうです。
「今日着る服は、これにしなさい」と一方的に決めたり、子どもがレストランでメニューを見ながら迷っているときに「まだ決められないの? ハンバーグでいいよね」と勝手に選んだりと、本人が考える機会を奪っていませんか? 子どもの地頭を鍛えたいと思うなら、子どもの判断を急かさず、たくさんの考える機会を与えましょう。自分なりの「正解を見つける機会」が多ければ多いほど、思考の幅が広がり、判断力が育つそうですよ。
地頭がいい子の特徴3:知的好奇心が旺盛
家庭教育研究家の田宮由美氏は「『どうして?』を突き詰めていく姿勢が、地頭を鍛えることにつながる」と述べています。さらに教育評論家の親野智可等氏も、「地頭がいいなあと感じる子は、知的好奇心が旺盛なことが多い」と指摘しています。わざわざ「勉強するぞ!」と意識せずとも、日常生活や遊びのなかで、「これはどういうことなんだろう?」「どうしてこうなったんだろう?」と好奇心が刺激される場面が多く、さらにその繰り返しによって知的に鍛えられた結果、地頭が育まれていくのです。
「親が『子どもを伸ばすためにいい環境を整えよう』と、意識しているのといないのとでは大きな違いが出てくる」と親野氏が述べるように、知的好奇心を育む環境づくりで最も効果的なのは、 “本物体験” を与えてあげること。虫や草花に興味があるのなら、野山など自然に囲まれた場所へ連れて行ったり、遠出するのが難しければ、ベランダで植物や野菜を育てたりするなど、とにかく「本物に触れる機会」を用意してあげましょう。
親野氏によると、「一度でも本物体験をすると、『知識の杭(くい)』ができる」のだそう。たとえば、子どもが魚に興味をもち始めたとき、水族館へ連れて行ったり、スーパーの鮮魚コーナーで一緒に買い物をしたり、図鑑や動画などで魚の姿を眺めたりすることで、記憶や心に「魚」という杭ができます。すると、生活のなかで目や耳にする魚に関する情報が自然に引っかかるようになり、知識がどんどん蓄積されていきます。地頭がいい子は、この「知識の杭」がたくさんあるのです。
地頭がいい子の特徴4:努力ができる
「『地頭がいい』と思うのは、愚直にひとつのことを続けられ、成功するまで諦めずに何度でもトライできる人間」と話すのは、遺伝についての著書を数多く出している、東京大学名誉教授の石浦章一氏です。石浦氏は、多くの東大生を見ていくなかで、「ほとんどの学生の遺伝子や脳の機能は平均的」としながらも、「そのなかで優秀になれるかどうかは、結局『努力できるかどうか』」だと気づいたと言います。
教科書には出てこない、地頭が試されるような問題に直面したとき、最適な答えを導き出せるかどうかは「応用力」にかかっています。それまでの自分の知識や経験を総動員して、「これとこれを組み合わせたらどうだろう」「このケースではこの結果が出るから、違う方法を試してみよう」というように、身につけた知識を判断材料にして有効に活用できる人こそが、「地頭のいい人」なのだそう。その応用力を発揮するには、豊富な知識が必要不可欠なのです。
たくさんの知識を得るためには、飽きずにコツコツ学ぶ姿勢が求められます。その努力ができれば、地頭は飛躍的に鍛えられるでしょう。親は「もっと頑張りなさい!」と努力を強要するのではなく、「1週間前よりも進んだね」「前回よりも上手にできるようになったね」と言うべきだと石浦氏は強調します。子どもには、「一生懸命に頑張ってやれば成果がある」と実感させてあげましょう。
地頭がいい子の特徴5:コミュニケーション能力が高い
地頭の良さを判断するのに、「コミュニケーション能力の高さ」も重要です。脳科学者の瀧靖之氏によると、「地頭がいい人はコミュニケーション能力が磨かれている」のだそう。他人とコミュニケーションをとることは意外と頭を使います。「コミュニケーション能力が高い人は、常に頭のなかで考えながら発言している。これこそ『地頭がよい』ということ」と瀧氏が指摘するように、相手に合わせたテーマ選びや間のとり方、リアクションなど、地頭の良さが如実に表れるのがコミュニケーション能力なのです。
また前出の田宮氏も、地頭の良さは「その場の空気を読むことができ、人と打ち解けやすいコミュニケーション能力の高さ」から感じ取れると述べています。空気を読めるのは、まさに観察力の高さゆえ。「洗濯物を取り込んで」とだけお願いしたのに、畳んでタンスに収納するといった行動ができてしまうような子は地頭がよいと言えます。少ない情報からその先を推測できる力があるからこそです。このような行動を自然とできる子は、間違いなくまわりの人と上手にコミュニケーションがとれるのだそう。
ただし、もしお子さんがコミュニケーションが苦手でも、決して「地頭が悪い」というわけではありません。「機会を増やして慣れていくことで、コミュニケーションも円滑にできるようになる」と瀧氏が話すように、年齢性別関係なくたくさんの人と触れ合う機会をつくってあげましょう。そうすることで、確実に地頭が鍛えられます。
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数値では測れない「地頭の良さ」を伸ばすための方法をまとめました。どれも決して難しいことではありません。日常のちょっとした声かけや環境づくりを工夫するだけで、着実にお子さんの地頭を鍛えることができます。ぜひ試してみてくださいね。
(参考)
デジタル大辞泉|じ-あたま〔ヂ-〕【地頭】
石田勝紀(2020),『同じ勉強をしていて、なぜ差がつくのか?「自分の頭で考える子」に変わる10のマジックワード(小学校1年生~小学校6年生対象)』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
日経DUAL|地頭のいい子は観察力が違う 視点を変える親の声かけ
日経DUAL|茂木健一郎 「理三を目指すような子には育てるな」
日経xwoman Terrace|頭の良さと地頭の良さは違う。幼児教育の現場で見た、地頭の良い子の育て方
東洋経済オンライン|「地頭のいい子」は家庭内の習慣でつくられる!
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