あたまを使う/国語 2019.5.30

「文字を見るのも嫌!」子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫

「文字を見るのも嫌!」子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫

(この記事はアフィリエイトを含みます)

「子どもの理科離れ」――。もう何年も前から聞かれる言葉です。では、「国語」の場合はどうなのでしょうか? とくに、子どもの頃に国語が苦手だったという親御さんの場合、自分の子どもも国語を敬遠するようにならないかと心配していることでしょう。

お話を聞いたのは、全国国語授業研究会会長や教育出版国語教科書編著者も務める筑波大学附属小学校の青木伸生先生。国語に対する子どもの接し方の現状、さらに、子どもを国語嫌いにさせないための方法を教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

二極化している子どもの国語好きと国語嫌い

いま、子どもたちの国語に対する好き嫌いは、二極化しているように感じますね。国語が好きな子どもは自分でどんどん本を読んでいますし、逆に教科書の文字を見るのも嫌だという子どももいます。その差が大きく広がっていくと、後者の子どもは学年が上がるほど身につけるべき国語力を取り返すのが難しくなりますから、とても心配しているところです。

子どもの国語離れを進行させないためにも、教科書のつくり手もいろいろと工夫はしています。お子さんがいる人なら、以前と比べていまの教科書はイラストや写真が豊富ですごくカラフルになっていることはご存じでしょう。というのも、いまの子どもは生まれながらにして映像などさまざまに刺激的な情報のなかで生きていますから、教科書にもある程度の刺激がないと心が惹かれないからです。

ただ、入り口はそれでもいいとは思いますが、そこからいかに文字に意識を向けさせるかということが重要な課題だと感じています。読むことそのものの面白さや楽しさといったものを感じられないと、学年が上がり、教科書がシンプルになって文字が増えたときに拒絶反応を起こしかねないからです。

もちろん、そうさせないための努力は小学校でもしています。たとえば、図書室で教員が読み聞かせをして、その本に関連する別の本をみんなで探して読むといった、「図書」の時間の活動もそのひとつ。「今回は昔話を探そう」「『繰り返し』があるお話を探そう」といったふうに、あるテーマを持って読むことの面白さを感じさせるための活動です。

子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫2

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
PR

教科書の「本の紹介コーナー」に注目

こういうことが必要となっている背景には、家庭環境が以前と変わってきたことも大きいように思いますね。いまは誰もがスマホやタブレットを持っています。それらの端末で本を読んでいる親御さんの家庭なら、以前の一般家庭より本や雑誌の数は減っている。新聞を取っていないという家庭も多いでしょう。そうすると、家庭で子どもが文字に触れる機会も自然に減っているはずです。

だからこそ、子どもを国語嫌いにしたくないのであれば、家庭でいかに本に親しませるかということが大切になります。そのスタートとしては、やはりむかしながらの絵本の読み聞かせがいちばんでしょうね。

親御さんのひざに抱えられて絵本を読んでもらえれば、子どもは間違いなく本に興味を持つようになります。お父さん、お母さんに絵本を読んでもらったという記憶は強く残るものです。みなさんにも、そういう記憶がある人も多いのではないですか? その経験によって、子どもは本の面白さに惹かれるようになっていきます。

子どもがもう少し大きくなって小学生になったら、国語の教科書に注目するのもおすすめです。というのも、学習指導要領自体が読書に力を入れているため、いまの教科書には「本の紹介コーナー」がたくさんあるからです。たとえば、宮沢賢治の作品のページなら、宮沢賢治の他の作品がいくつも紹介されています。

気に入った作家や作品に関連する作品、シリーズ作品を読んでいくというのは、まさに本が好きな人間の典型的な読書法ですよね。そういったことを教科書が手助けしてくれているわけですから、それを活用しない手はありません。

子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫3

読書を通じた「親との対話」でもっと本が好きになる

また、小学生になってひとりで本を読めるようになったからといって、親が「これを読んでごらん」と押しつけるだけということは避けましょう。そうではなく、子どもが自ら興味を持って読む本に対して、親御さんもしっかり興味を示してあげてほしいのです。日常の読書によって子どもがさらに本に興味を持てるかどうかは、そういった場面での「親子の対話」によって大きくちがってきます。

子どもが音読をしてくれたのなら、思ったことを子どもに伝えてみてください。「いま読んでもらったお話、お父さんも子どもの頃に読んだよ」とか「子どもの頃に読んだときと感じ方がちょっとちがったなあ」といったささいなことで十分です。子どもは「むかし、お父さんも読んだんだ」とか「お母さんはそういうふうに思ったんだ」といったことを感じます。

そうやって、自分が本を読んだことでお父さんやお母さんがなんらかの反応を示してくれたのなら、子どもは「もっと上手に読みたい」と思うものですし、さらには、自分なりの感想を持っていないと「お父さんやお母さんとちゃんとお話ができないぞ」とも思うもの。親がきちんと反応を示すことで、子どもは本の中身をもっときちんと読もうとするようになるのです。

このようにして親と対話をしながら本に親しむうち、子どもはセリフのいいまわしや物語の伏線といったものに自分なりに面白さを感じられるようになっていきます。それは、「自ら発見する」ということに他なりません。これまでの学校の勉強にありがちだった受け身の姿勢ではなく、能動的な姿勢を手に入れるということなのです。その姿勢こそが、国語という教科に限らず、のちのちの学力の向上につながるということは容易に想像できるのではないでしょうか。

子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫4

青木伸生の国語授業 3ステップで深い学びを実現! 思考と表現の枠組みをつくるフレームリーディング
青木伸生 著/明治図書出版(2017)
青木伸生の国語授業 3ステップで深い学びを実現! 思考と表現の枠組みをつくるフレームリーディング

■ 筑波大学附属小学校教諭・青木伸生先生 インタビュー一覧
第1回:子どもの主張はくみ取らなくていい! 親だからこそできる、我が子の国語力アップ法
第2回:「宿題の定番」になるのも頷ける。意外だけどすごく重要な「音読」の4つの狙い
第3回:「文字を見るのも嫌!」子どもを国語嫌いにさせないために、親がすべき低学年からの工夫
第4回:作文力アップも期待できる! 文章の読み方の新習慣「フレームリーディング」とは

【プロフィール】
青木伸生(あおき・のぶお)
1965年生まれ、千葉県出身。東京学芸大学卒業後、東京都の教員を経て現在は筑波大学附属小学校教諭。全国国語授業研究会会長、教育出版国語教科書編著者、日本国語教育学会常任理事、筑波大学非常勤講師なども務める。近年はフレームリーディングの専門家としても注目を浴びる。『ことばの事典365日』(小峰書店)、『青木伸生の国語授業 フレームリーディングで説明文の授業づくり』(明治図書出版)、『青木伸生の国語授業 フレームリーディングで文学の授業づくり』(明治図書出版)、『ゼロから学べる小学校国語科授業づくり』(明治図書出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。