芸術にふれる/書道 2018.2.28

自分の字に真剣に向き合える。『書道書育のKASEN』に潜入取材!

編集部
自分の字に真剣に向き合える。『書道書育のKASEN』に潜入取材!

「字を上手に書けるようになってほしい」
子どもをお持ちの親御さまであれば、誰もがみんな、こう考えたことがあるのではないでしょうか。

今回は、“書道書育士” 和田華仙(わだ・かせん)先生が2012年より主宰する書道教室『書道書育のKASEN』の「日曜教室 子どもの部」に潜入取材いたしました。

子どもたちが目の前の半紙に一心不乱に向き合っている姿、そして教室が終わりお友だちどうしで楽しくおしゃべりをしている姿を見ると、ただ “字を上手に書けるようになる” だけにとどまらない、書道教室が持つ役割が見えてきます。

お道具の準備、筆の持ち方、骨書きの仕方……学ぶポイントはたくさん!

書道はお道具がなければできないもの。机の上に新聞紙を敷き、硯や筆などを自分で準備するところから始まります。この日も教室開始は午前10時からでしたが、30分も前の9時半に来て準備を開始する生徒さんも。意欲の高さがうかがえますね。

各学年ごとに、毎月のお題の字が定められています。取材をした2018年1月は、1年生が「れつ」、2年生が「月日」、3年生が「歌の本」、4年生が「安定感」、5年生が「愛国心」。意外と難しい字を書いているのですね!

実際に墨を使って筆で書いていく前に「骨書き」を行ないます。これは、お手本の紙の上に半紙を置き、それぞれの画線の中心に鉛筆で線を引いていくというもの。半紙に対する文字の大きさを知ったり、半紙に対する文字の配置・バランスを知ったりするために、とても大切な作業であるそうです。

この「骨書き」が終わったら、お手本を外して半紙の左側に置き、骨書きに沿って筆で書いていきます。ただなぞるのではなく、「細い線」「太い線」「筆の角度」など、意識するべきことはたくさんあります。

「愛」という字を書いている子ども

まだ筆に慣れていない生徒さんや、書道を習い始めたばかりの生徒さんに対しては、先生が一緒に書いてくれます。筆の持ち方や運び方はもちろん、椅子の位置や、身体と机の距離、墨をつけるタイミング、硯で筆を整える方法など、非常に細かい部分まで丁寧に指導されていました。

子どもに書道を教える和田華仙氏

筆で何枚か書いたら、自分が「最もよくできた!」と感じたものを1枚選び、先生のところへ添削指導を受けに行きます。

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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先生による丁寧な添削

朱液(※添削用に使われるオレンジ色の墨)を使って、先生が1枚1枚丁寧に添削していきます。画線の太さ、字画のバランス、墨の量など、改善すべき箇所があれば、先生が朱液で半紙に書き込んでいきます。みんな真剣に、先生の筆使いを見たりアドバイスに耳を傾けたりしています。時には「ここはどうすればいいと思う?」など、先生が生徒さんに問いかける場面も。先生からの添削を受け身の姿勢で待つだけでなく、自分の文字を自分で分析する良い機会になりますね。

子どもの字に赤を入れる和田華仙氏

そしてもちろん、上手に書けた文字があると、先生が二重マルや花マルをつけて徹底的にほめてくれます。ほめられた子どもたちは、ちょっと恥ずかしそうだけれどもやっぱり嬉しそう。休憩時間に入っていたのに「もう1枚やる!」と意欲を見せてくれた子もいましたよ。

「愛」の字に二重丸がつけられた

そして和田先生は普段から、添削で指導を受けた箇所を “お手本に必ずメモする” ように指導しているのだそう。「このメモの書き方ひとつによって、その後の成長の度合いも違ってくる」と、これまでのご指導の経験から強く断言されています。添削されっぱなしで終わらせず、添削された内容を自分なりに消化して “新しい気づき” を得ようとする。その気づきを、次に書くときの糧にする。こういった姿勢がとても大切なのですね。

先生が「成長いちじるしい」と太鼓判を押す生徒さんのお手本は、このように鉛筆で細かくメモ書きが施されていました。

成長の著しい生徒の手本には、鉛筆で細かいメモが書かれている

生徒さんの声

小学校2年生の女の子は「お姉ちゃんが最初にやっていて、わたしが年長さんのときにお母さんに誘われて始めました。書道は普段はやらないから、それがここでできるのが楽しい。今は2文字(編集部注:このときは「月日」がお題の字でした)だから、これからは3文字とか4文字とかを書けるようになりたいです。これからも書道はずっと続けていきたい!」と語ってくれました。なんとこの子は、狭き門である都展にこのたび入選されたそうですよ。

「がんばれば「級」が上がるし、それが刺激になってやりがいを感じます。あと、教えてくれるときは真剣な先生も、休憩時間には笑わせてくれたりするから、全然飽きなくて楽しい!」と語ってくれたのは、小学校4年生の女の子。

また、つい1ヶ月ほど前から小学校1年生の女の子を通わせ始めたお母さまは、「鉛筆で今すごく丁寧に字を書けているので、もっとうまくなって自分の得意なところを伸ばしてくれればなと思って、通わせ始めました。まだ1年生なので集中力が続く時間には限界がありますが、書道は今後も続けていけるんじゃないかと感じています」と笑顔で語ってくれました。

“書を育み 書にはぐくむ”

和田華仙先生は、『書道書育のKASEN』を立ち上げられた目的のひとつとして “地域貢献” を挙げています。

「少子高齢化が進み、子どもたちと地域との結びつきも弱くなってきているこの時代。子どもたちが伸びやかに生き生きと書道に取り組めるような教室そのものも減ってきています。だからこそ、私が子どものころに経験してきたような書道教室を、この地域に呼び戻したいと思ったんです」

この日も、12時までの書道教室が終わったあとは、先生も交えてお友だちどうしで楽しそうに歓談にふける姿も見受けられました。聞くところによると、やはり同じ学校や同じ学区の子どもたちが多いのだそう。コミュニケーションの場としても、この書道教室が果たす役割はとても大きいようです。

そして、“書を育み 書にはぐくむ” というコンセプトも忘れてはいけません。

「書を育むことによって、内面が磨かれていったり集中力がついていったりと、自分自身の“書以外の部分に” 返ってきます。つまり結果的に、自分自身をはぐくんでいくということになるのです。その良い循環を “書” をツールとして実現したい」

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『書道書育のKASEN』ではほかにも、「義務教育期のお子さまについては半紙と墨汁は教室持ち」「休みが重なってしまっても長く続けてもらえるように、月謝制ではなく1回ごとの参加費制」など、親御さまがお子さまを通わせやすいように工夫をされています。また、書き損じの半紙をすべてリサイクルにまわし、“未来箋” と称される新たな書道半紙によみがえらせる「書道紙リサイクル」にも取り組んでいるのだそう。

書道からは、じつにさまざまなことを学べます。お子さまの習い事のひとつとして書道に興味を持たれた方は、ぜひ『書道書育のKASEN』に足を運んでみてはいかがでしょうか?

『書道書育のKASEN』ホームページはこちら