「うんち!」「おしり!」「おならプー!」
家でも外でも突然始まる子どもの下ネタ。注意しても笑いながら繰り返し、人前で大声で言われると恥ずかしくて、つい感情的に叱ってしまうこともあるかもしれません。
「どうしてやめないの?」「このままで大丈夫?」――そんな不安を抱えている保護者の方は少なくありません。でも実は、多くの家庭が同じことで悩んでいます。
三重大学教育学部の研究によると、幼児の下ネタ・ギャグは珍しい行動ではなく、約96%の子どもが経験するものでした。特に4〜6歳に多く見られる発達の一時期で、男女差はほぼありません。そして多くの子どもは、成長とともに自然と落ち着いていきます。*1
つまり、「異常」「問題行動」ではなく、ほとんどの子どもが一時期に通る発達の一コマなのです。では、なぜこの時期に下ネタやギャグが増えるのでしょうか。そして、親はどう関わればよいのでしょうか。研究データをもとに見ていきましょう。
目次
なぜこの時期に下ネタ・ギャグが増えるの?
4歳頃の発達:「友だちと笑い合いたい」けど方法が分からない
4歳頃になると、子どもは友だちを強く意識し、一緒に笑い合うことで仲間関係を築こうとします。
ところが、人を笑わせるために「面白いこと」を自分で作り出すのは、まだ難しい年齢です。そこで登場するのが、言うだけで笑いが取れる下ネタやギャグ。タブーに触れる言葉を口にしたり、テレビで見た「笑いの型」を繰り返したりするだけで、手っ取り早く笑いを生み出せるのです。*1
いつ頃から始まり、いつ頃落ち着く?
早い子では2歳頃から始まり、3歳後半から4歳前半にかけて急増します。4〜6歳がピークで、5〜6歳以降は徐々に落ち着いていきます。よく使われるのは「おしり」「うんち」「おなら」で、「おしりフリフリ」「おならプー」のようにオノマトペと組み合わせることも。
こうした行動は「異常」でも「問題行動」でもなく、ほとんどの子どもが経験する発達の自然な過程です。*1
でも、「感情的に叱り続ける」「人前で強く止めて恥をかかせる」「毎回大きく反応する(笑う・怒る)」ような親の関わりは、逆効果になったり、余計助長させてしまったりすることもあることがわかっています。では親はどのように関わるのがよいでしょうか?
下ネタへの正解対応①TPOを伝える
「家ではいいけど、外では言わないよ」「ここでは言わない」と、場所や状況に応じたルールを淡々と伝えます。
4歳頃の子どもは、場面によって自分の振る舞いを変える力が育ち始める時期です。*4 まだ完璧にはできなくても、「場所によってやっていいこと・悪いことがある」という概念を少しずつ理解できるようになります。「家の中」と「外」の区別を教えることは、社会性の発達を促す意味でも有効といえます。
大切なのは、叱るというより「ルールを教える」姿勢です。「ダメ!」と止めるだけでなく、「お店の中では静かにしようね」「おうちに帰ったら言っていいよ」と具体的に伝えることで、子どもも理解しやすくなります。
度が過ぎたら落ち着いて止める
しつこく繰り返したり、エスカレートしたりする場合は区切りをつけますが、感情的にならず静かに伝えることがポイントです。*2
- 「もうそろそろおしまいにしようか」
- 「何回も言うのはやめようね」
冷静なトーンで伝えることで、子ども自身も落ち着きやすくなります。親が感情的になると、子どもはますます興奮してしまうこともあります。

下ネタへの正解対応②必要以上に反応しない
大笑いしたり、慌てて怒ったりすると、子どもにとっては「注目された」という満足感につながることがあります。
心理学では、注目や反応そのものが子どもにとって「ごほうび」になることが知られています。*3 つまり、親が大きく反応すること自体が、子どもにとっては「成功体験」になってしまうのです。
だからといって完全に無視する必要はありませんが、「ふーん」「そうなんだ」と軽く受け流したり、話題を変えたりすることも一つの方法です。反応が薄いと分かれば、子どもも次第に興味を失っていきます。

下ネタへの正解対応③一時的なものと理解する
研究を行った富田氏は、ある研究者の孫の事例を紹介しています。4歳の時に「ブラブラちんこのソーセージ」と言って大笑いしていた子が、6歳10ヶ月になって同じ言葉を投げかけられた時には「つまらないことを言っているな」という表情をしただけで全く反応しなかったというのです。*1
わずか2年半で、子ども自身が「これはもう面白くない」と感じるようになる。この変化こそ、発達の本質を示しているといえるでしょう。今は大変でも、「ずっと続くわけではない」と知っているだけで、親の気持ちも少し楽になります。
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「また言ってる…」と頭を抱えたくなる気持ち、よく分かります。でも、幼児の下ネタ・ギャグは発達の途中で多くの子どもが通る道です。
親ができるのは、完全にやめさせることではありません。TPOを伝えること、度が過ぎたら調整すること、そして必要以上に問題視しないこと。大切なのは、「この時期の子どもは、こういうものだ」と理解した上で、冷静に対応することです。
「やめさせなきゃ」と一人で抱え込む必要はありません。96%の子どもが経験しているこの行動は、5〜6歳以降、多くが成長とともに自然と落ち着いていきます。 いまは少し大変かもしれませんが、「この時期だけ」と思って、できる範囲で対応していけば大丈夫です。
(参考)
*1三重大学教育学部研究紀要 第67巻|富田昌平・藤野和也(2016)「幼児の下品な笑いの発達」
*2 保育ネクスト|子どもの問題行動、どう指導すればいい?
*3 LITALICOジュニア|ABA(応用行動分析学)とは?療育における基本的な考え方について解説します
*4 日本保育者未来通信|社会性 4歳児













