2018.8.10

日常生活に国語辞典を取り入れよう! 語彙力アップだけじゃない「辞書引き学習」のメリット

日常生活に国語辞典を取り入れよう! 語彙力アップだけじゃない「辞書引き学習」のメリット

小学校低学年にもなると、いつのまにか親がそれまで聞いたことのない単語を使うようになっていたり、何気ない大人同士の会話を理解するようになったり。たくさんの言葉をどんどん吸収して自分のものにしようとしていることがよくわかります。

この年頃までに紙の国語辞典に触れることを勧めているのは、中部大学現代教育学部教授の深谷圭助氏。幼稚園や小学校低学年のときからたっぷりと言葉にふれることは、語彙力がアップすることはもちろん、将来ぐんぐん伸びるこどもを育てることになると言います。

今回は、語彙力だけでなく自発的に学ぶ力もアップする「辞書引き学習」をご紹介します。

字が読めるようになったら辞書をプレゼント

文部科学省の学習指導要領が定めている辞書指導は、国語辞典が小学3年生、漢和辞典が小学4年生から。ですが、家庭内ではこれに則る必要はありません。

子どもの言葉の吸収力がピークに達するのは小学校低学年の時期。赤ちゃんのころは、耳をとおして言語能力を身に付けていきますが、幼稚園の年長のころから、言語に対する関心は話し言葉から書き言葉へうつっていき、本などからも語彙を習得していきます。

(引用元:ベネッセ 教育情報サイト|自ら学ぶ子になる! 辞書引き学習法【基礎知識編】)

言葉によって物事を伝え合うことが可能になる5〜7歳くらいの時期こそ、たくさんの言葉に触れられる国語辞典で楽しみながら学習することが可能になるのです。「何年生になったから」というよりも、「ひらがなが読めるのなら」という意識で国語辞典をプレゼントするのがよいでしょう

深谷氏はご自身の娘さんがひらがなを読めるようになった5歳4ヶ月の頃、知っている言葉を探しふせんを貼る「辞書引き学習」をスタート。「泣きっ面に蜂」という言葉を気に入り、実際に幼稚園で使える場面に遭遇した際に口にして、先生に驚かれたんだとか。さらにそのときに「泣きっ面に蜂」がいいのか「踏んだり蹴ったり」がいいのかと、ひとりでぶつぶつ言っていたそう。辞書に触れる時期が早ければ早いほど、言葉を吸収しやすいということがよくわかるエピソードです。

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学びの機会を増やすのは、電子辞書より紙の辞書

紙でできた国語辞典ではなく、電子辞書やスマホの辞書アプリも、ガジェットツールに憧れる子どもにとっては魅力的。ゲーム感覚で学力アップが望めるかもしれないと期待し与える親も少なくないようです。

しかし、あくまでも電子辞書はわからない言葉を短時間で調べるためのもので、必要な情報だけを手に入れるツール。そのため、調べる過程で新しい疑問に出会ったり、関連する情報を得る機会がほとんどありません。さらにスマホの辞書アプリの場合は、ほかのアプリに目移りしてしまったり、通信や通知で調べる手が止まってしまったりと、注意力が散漫になりがちです。

逆に、紙でできた辞書の中での目移りは、むしろ知らなかった言葉を学ぶいい機会。子ども向けに編集された国語辞典は、引きやすくわかりやすく、口絵や付録にも楽しめる工夫が凝らされています。まずは書店で子どもと一緒に手にとって、気に入った一冊を見つけてみましょう。

語彙力アップだけじゃない「辞書引き学習」のメリット2

辞書を置く場所は、子ども部屋ではなくリビング

辞書を引く際は、机に向かって正しい姿勢で、というよりも、まずは気になった時にすぐ引ける、というところを重視するべきです。

文部科学省の小学校学習指導要領では、辞書を日常生活に取り入れることを勧めています。

中学年においては,辞書を利用する能力や態度を育て,習慣を付けるために,国語辞典や漢字辞典などの使い方を理解するとともに,必要なときにはいつでも辞書が手元にあり使えるような言語環境をつくっておくことが重要である。また,国語科に限らず,他の教科等の調べる学習や日常生活の中でも積極的に辞書を利用できるようにすることが大切である。

(引用元:文部科学省|小学校学習指導要領解説 国語編

中学年と対象を定めてはいますが、辞書を身近に置いておくのは何年生からでももちろん大丈夫。株式会社学研プラス 小中学生事業部 辞典編集室の森川聡顕副室長と今井優子編集長は、国語辞典はケースに入れて子ども部屋の本棚に入れるのではなく、ケースから出してリビングに置いておいた方がいいと言います。

テレビで聞いてわからない言葉をその場で調べたり、読書中にわからないことがあれすぐに調べられるようにしておく。そしてもし親がわからない言葉に出会ったら子どもに「教えて」と問いかけ、引かせてみるのもいいそう

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言葉の意味を親子一緒に考えてから国語辞典を引いて答え合わせをするなど、クイズのように楽しむこともおすすめです。子どもだけでなく、家庭全体で日常生活に辞書を取り入れていけるといいですね。

文/酒井絢子

(参考)
ベネッセ 教育情報サイト|自ら学ぶ子になる! 辞書引き学習法【基礎知識編】
明治図書 教育zine|あなたは紙派? 電子派? 小学生向け国語辞書が人気
学研キッズネット|実践! 国語辞典を楽しく使いこなそう 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー第3回
Z会 さぽナビ|「語彙力」を伸ばすには(1)
深谷圭助(2010),『自ら学ぶ力をつける 深谷式辞書・図鑑活用術』,小学館.
深谷圭助(2013),『辞書引き学習で子どもが見る見る変わる』,小学館.