あたまを使う/教育を考える/国語 2019.12.20

【日本語のプロが徹底解説!】語彙力と読解力を伸ばす国語辞典の魅力と活用法

[PR]学研プラス 編集部
【日本語のプロが徹底解説!】語彙力と読解力を伸ばす国語辞典の魅力と活用法

先日、国際学習到達度調査(PISA)の結果が発表され、日本の子どもの「読解力」が、8位→15位に転落したとニュースになりました。子どもたちの読解力低下に、教育関係者だけでなく多くの人が強い危機感を覚えているようです。

読解力を伸ばすには、やっぱり読書が効果的。豊富な語彙が欠かせません。わからない言葉に出会ったとき、子どもはまず「○○ってどんな意味?」と尋ねます。「△△っていう意味だよ」とすぐに答えてあげるのは簡単ですが、そこで「辞書に書いてあるから自分で調べてごらん」「一緒に辞書で調べよう」とすすめることで、子どもは自発的に学ぶ手段を覚えます。国語辞典が身近にある環境は、子どもの学びをより深めることにもつながるのです。

今回、子どもを辞書好きにする工夫とこだわりが満載の『新レインボー小学国語辞典 改訂第6版』(学研プラス)を手がけた森川編集長にお話をうかがい、読解力や語彙力を鍛えるのに最適な国語辞典の魅力と活用法をたっぷりお聞きしました。さらに、連載『国語辞典の世界へようこそ』でおなじみ“ゆか先生”こと、文章力養成コーチ・松嶋有香先生を特別ゲストにお招きし、国語辞典が引き出す子どもの可能性についても熱く語っていただきました!

収録語数43,300語! “命が長い言葉”を子どもたちに

ーー11月28日に発売されたばかりの『新レインボー小学国語辞典 改訂第6版』について、第5版との違いを教えていただけますか?

森川さん:
まず大きく変わったのは収録語数です。第5版では37,200語収録していましたが、最新版では43,300語と大幅に増やしています。一方で、辞書自体の重さは1,200gから950gへと軽くなりました。それは使用している紙に秘密があるんです。学研のためだけに開発された紙や、世界に一台しかない印刷機を使うなど、最新の技術を駆使して25%もの軽量化を実現しました()。でも一番こだわったのは、子どもたちにとって“めくりやすくて使いやすい”ということ。子どもって意外と手先が器用じゃなくて、ある程度紙に厚みがないとめくれないんです。今回の第6版では、紙そのものは薄くて軽いのだけど、紙自体にしっとり感をもたせて、指にひっかかってめくりやすくなるようにしています。
※国語辞典のB6サイズのものについて

ゆか先生:
紙へのこだわりがすごいですね! たしかに子どもにとって“引きやすさ”は重要なポイントです。また“使いやすさ”という点では、鉛筆で書き込みができたりマーカーで線が引けたり、付せんを貼りやすいか、なども気になります。

森川さん:
子どもたちにはぜひ、辞書に書き込んだり付せんを貼ったりしてほしいと考えているので、薄くても丈夫で高品質の紙を開発しました。今までの辞書って、鉛筆やシャーペンで書いたらツルツルすべってうまく書けない場合が多かったかと思うんですけど、『新レインボー小学国語辞典 改訂第6版』は鉛筆でも書きやすく、消しゴムで消してもあまりよれません。また、マーカーで線を引いても裏に写らないので、ぜひたくさん書き込んでほしいですね。もちろん付せんも貼りやすいように、ページの上の部分を少し広めにあけています。

ーー高品質の紙を使うことで、掲載している写真やイラストもとても綺麗に印刷されていますね。そこはオールカラーであることの一番のメリットでしょうか?

森川さん:
今では各社小学生向けの国語辞典はオールカラーが主流になっていますが、いち早くオールカラー化を実現したのは学研の『新レインボー小学国語辞典 改訂第5版』から。2色刷りからカラフルなオールカラーにしたことで、「国語辞典を引くのが楽しくなった」というお声もたくさんいただきました。それに、オールカラーでは言葉を引くスピードが40%アップしたというデータも出ているんですよ。

語彙力と読解力を伸ばす国語辞典の魅力と活用法2
イラストにすると、とてもわかりやすい「大黒柱」。2つの意味もすぐに理解できそう。

ーー『新レインボー小学国語辞典 改訂第6版』をご覧になった印象を教えてください。

ゆか先生:
やっぱり、なんと言っても収録語数の多さに驚きました。「せっかく調べたのに載っていない……」ということがなければ、子どもにとって辞書を引くハードルはぐんと下がりますから。カタカナ語や、新しい言葉もたくさん入っていますね。

森川さん:
最新版では大幅に語数を増やしましたが、決してやみくもに増やしたわけではありません。新しい言葉は日々生まれ、どんどん流通していきます。しかし私たちは、そのような新しい言葉をいち早く取り入れる必要はないと考えます。これから長い人生を生きていく子どもたちに向けて、国語辞典には“命が長い言葉”を入れていきたいんです。

ーー国語辞典に入れる言葉を選ぶときの基準は何なのでしょうか?

森川さん:
まず、子どもが国語辞典で意味を調べるとき、次の3つの理由が想定できます。

1. 知らない言葉の意味を知るため

「思いこがれる」「考えあぐねる」「重箱」「走馬灯」「大黒柱」など、学校で習う難しい言葉や、今ではあまり目にしない昔の道具や遊びに由来する言葉。

 

2. 知っている言葉の意味を確認するため

「いただきます」や「おやすみなさい」など、これまで「なんで載ってないの?」と指摘されてきた言葉も含む。

 

3. いくつも意味がある言葉の、意味を確定するため

意味の区分が14あり同訓異義語が6つある「掛ける」や、92個の慣用句・ことわざ・熟語がある「口」など。

 

森川さん:
以上の要求に応えられるよう体系的に編集作業を進めていくことで、自然と掲載する語数が増えたというわけです。そして電子辞書ではなく紙の辞書という点で、語数の多さは武器になります。たとえばある言葉を探していてパラパラとめくっていると、思わぬ発見があったり興味をそそられたりして、探す言葉も忘れて立ち止まってしまうことってありますよね。そういった“言葉との出会い”が多ければ多いほど子どもたちの語彙力につながるので、子ども向けの辞書は収録語数が多いほうがいいと思います。

語彙力と読解力を伸ばす国語辞典の魅力と活用法3
調べていた言葉の「隣にあった言葉」に興味がわいてしまい、ついつい意味を読んでしまったという経験、ありませんか?

言葉を多く知っている子は「感情のひだが深い」

ゆか先生:
類語を学べる『ことば選びのまど』というコーナーはとてもいいですね! たとえば「嫌」だったら、「うんざり」「気に食わない」「不愉快」と、感情のバリエーションを知ることができるのが素晴らしい。私は今の子どもたちの語彙の少なさを非常に心配しています。子どもたちの読解力低下の原因のひとつは、語彙の少なさです。「登場人物の気持ちを考えろ」って言われても、もともと語彙が少ないから言葉が出てこない。だから、読解以前に語彙を増やす必要があんです。

森川さん:
今、大人の間ではじわじわと類語ブームがきていますね。大人の場合はSNSなどで発信する機会が増えたことから、「言いたい言葉が見つからない」と困っている人が多いと聞きます。そうであるなら、子どもはもっと困ってるんじゃないかな? と思ったことが、今回この『ことば選びのまど』を新設するきっかけにもなっているんです。

ゆか先生:
たしかに大人でも、自分の気持ちに一番近い言葉を選んでいないから誤解が生じて、メールを何往復もやりとりしなくちゃいけなくなることも(笑)。「これでいいのかな? 私の言いたいこと」っていう感覚を小さいうちから身につけられたらいいですよね。

森川さん:
「嫌」って感じていることは理解している。でも自分の「嫌」ってどの「嫌」なのか。いくつもの選択肢の中から選べるようになってほしいんです。『ことば選びのまど』では、ほかにも「うれしい」「好き」「すごい」など、子どもたちがよく使いそうな言葉を取り上げています。「このモヤモヤした気持ちは何なんだ」という悩みをひとつずつ解消してあげたいですね。自分の気持ちにふさわしい言葉を選べることは、人とコミュニケーションをとるうえで必要ですから。

語彙力と読解力を伸ばす国語辞典の魅力と活用法4
同じ「嫌」でも、こんなに気持ちの種類があります! お子さまとたくさんのモヤモヤを解消してくださいね。

ゆか先生:
私はよく「気持ちにラベルをつける」って言ってるんですけど、国語辞典をめくることで、「ラベルがついていたんだ、この気持ち!」って気づくことができたら素敵ですよね。

ーー辞書を使う習慣がある子とない子では、どのような違いがあるのでしょうか。

ゆか先生:
それはもう、気持ちを言語化する能力が圧倒的に違います。私の講座では、作文を書くときに「楽しかった」を禁止しているんですが、禁止すると子どもって考えるんですよね。「楽しかったことを何て表現しよう」って。そうやって深く考える機会を与えても、語彙がないと考えようがありません。モヤモヤとした気持ちを相手に伝えようとするとき、辞書を使う習慣がない子はせいぜい擬音語でバリエーリョンをつけるくらい。ワクワクとかドキドキとか。一方で、国語辞典を引いて言葉を多く知っている子は、いわゆる「感情のひだが深い」と感じます。

森川さん:
監修の金田一先生がよくおっしゃっていることがあります。「小さい子がお菓子売り場とかでジタバタしてワーワー言ってるのは、あれは自分の気持ちを言語化できないからだ」と。自分の気持ちをちゃんと言葉で説明して相手を説得することができれば(笑)、欲しいものが手に入るかもしれませんよね。

ゆか先生:
やっぱり言葉を知らない子は、手で叩いてしまう傾向も。それは小さい子に限らず、思春期になっても同じです。「バカ!」「なんだと!」みたいなやりとりをしていると、結局言葉が気持ちに追いつかなくなって手が出てしまう。言葉を知っていたら殴らなくてもすむわけです。

“自分だけの国語辞典”を本当に言葉に飢えている時期に

ーー子どもに国語辞典を与えるのに一番いいタイミングっていつなんでしょうか?

ゆか先生:
理想としては入学前、卒園くらいの時期から開始してほしい。字が読めるようになったらすぐ、というイメージです。以前コラムでも書きましたが、本当に言葉に飢えている時期って4~5歳なんですよ。だからこそ、その「言葉を知りたい!」という意欲が高まっている時期に、きちんと調べて自分の知識にするという行動を習慣づけるのが大事。でも実際は、学校の授業で国語辞典を使うのは小学校3年生からなんですよね。

森川さん:
学研では小学校1年生を対象にした辞書引きイベントを開催しています。そこではじめて辞書に触れるお子さんもたくさんいるので、当然「引き方がわからない」となるわけですが、保護者の方と一緒に楽しく辞書を引いて辞書に興味を持つ子も出てきます。

ゆか先生:
そうそう、引き方がわからなければ保護者の方が教えてあげればいいんです。一度引き方を覚えれば、あとは勝手にどんどん調べ始めます。『新レインボー小学国語辞典 改訂第6版』はすべての漢字にふりがな付きで、説明文にもふりがながあるので、ひらがなさえ読めれば大丈夫ですね。

森川さん:
すべての漢字にふりがな付きにすることで一年生からでも充分に活用できます。最近では入学祝いに国語辞典を、というご家庭も増えているようです。

ゆか先生:
よく「お兄ちゃんやお姉ちゃんのお下がりを与えてもいいですか?」と聞かれるんですが、できれば一人一冊買い与えてあげてほしいですね。はじめての国語辞典こそ、本人だけのものを用意してあげるべきです。「これはぼく(わたし)だけの本」って思うと愛着がわいて大事にするし、自由に書き込みをしたり、付せんを貼ったりできますよね。

ーー家庭で国語辞典を引く習慣をつけるには保護者の意識改革が必要でしょうか?

ゆか先生:
意識改革というよりも、大事なのは「しくみづくり」。簡単ですよ。外箱を捨てて、名前を書いて、リビングに置いておく、それだけです(笑)。いざ言葉を調べようと思ったとき、毎回外箱から出すところから始めるのって意外と面倒なんです。外箱を捨てることに保護者の方は躊躇するかもしれませんが、いつまでも綺麗に使おうとすると、かなりのエネルギーを要します。それが辞書を引くことを面倒に感じる原因にも。また先ほどお話ししたように、国語辞典を“自分だけの本”として認識させるためにも、ぜひマジックで名前を書きましょう。子ども自身に書かせてあげるといいですよ。

語彙力と読解力を伸ばす国語辞典の魅力と活用法5
こちらは森川編集長オススメの辞書の置き方。出し入れしやすいので、「調べる」までのハードルが低くなります!

ーー置く場所はリビングのどのあたりがいいですか?

ゆか先生:
「どんなときに辞書を引くか」を考えると簡単です。テレビを観て辞書を引く機会が多い子は、テレビのそばに。本を見て辞書を引く機会が多い子は本棚のそばに置きましょう。わからないことが出てきたら、すぐ届くところにある辞書を開く。もし調べ方がわからなかったら、保護者の方と一緒に調べる。それを繰り返し繰り返し行うことが習慣につながります。

森川さん:
国語辞典の引き方をわかりやすく説明したマンガも付録として付いているので、親子で一緒に辞書を引く楽しさに触れてほしいですね。

ゆか先生:
わからないことをすぐに調べるくせをつけましょう。正直、辞書って調べるのに時間がかかるとストレスにもなりますよね。人に聞いたりググったりした方が早いじゃないって。でも、自分で国語辞典を引いて言葉の意味を知ったときの快感は、確実にそのストレスを越えます。得るものの方が大きいんです。より多くの子どもたちに、こういった国語辞典の素晴らしさが伝わればいいと思います。

語彙力と読解力を伸ばす国語辞典の魅力と活用法6

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学習指導要領が切り替わる2020年は、小学校で習う漢字の移行時期でもあります。それにともない『新レインボー小学国語辞典 改訂第6版』では、新たに加わった漢字も掲載されているので、国語辞典を購入するなら今が絶好のタイミング! 言葉の意味を調べるだけではなく、さまざまな使い方ができる国語辞典は、子どもたちの心を豊かにする要素がたっぷりとつまっています

『新レインボー小学国語辞典 改訂第6版』の詳細はこちら

【プロフィール】
松嶋有香(まつしま・ゆか)
国語教師・教育コンサルタント・文章力養成コーチ。平成元年静岡大学教育学部心理教育学科卒。東京在住。
オリジナルインターネット国語プログラム「かきまくれっ!こくご トレーニングペーパー」指導者。NPO法人Reジョブ大阪理事。

【プロフィール】
森川聡顕(もりかわ・としあき)
学研プラス 小中学生事業部 図鑑・辞典編集室 日本語辞典チーム統括編集長。平成9年学習院大学大学院博士後期課程修了。同年学習研究社に入社。以来20年間、辞典編集部に在籍。