芸術にふれる/アート 2018.5.21

ミュージアムデビューしよう! ホンモノとの出会いがホンモノの学びに『museum start あいうえの』

長野真弓
ミュージアムデビューしよう! ホンモノとの出会いがホンモノの学びに『museum start あいうえの』

「子どもにはホンモノを見て感性豊かに育って欲しい」多くの親御さんはそう願うものではないでしょうか。でも、「美術館でうるさくしたらどうしよう」「退屈してしまうんじゃないかしら」「敷居が高い」など、実際には美術館などのアートシーンからは足が遠のいてしまいがち。

そんな現実に風穴を開けるべく「ミュージアムでの特別な体験をすべてのこどもたちに届けたい」という強い思いでスタートしたプロジェクトが『museum start あいうえの』

とてもよく考えられていて、すぐにでも美術館に行きたくなる魅力的な取り組みをご紹介します。

『museum start あいうえの』とは?

東京・上野恩賜公園に集まる9つの文化施設(*)が、こどものアート体験を目的に行っているプロジェクトで、こどものミュージアムデビューをサポート。

小学生~高校生まで誰でも参加できます。これだけの個性様々なミュージュアムがひとつのエリアに集まっているなんて、考えたらとても贅沢な環境ですよね。

(*)東京都美術館・上野の森美術館・国立西洋美術館・東京国立博物館・国立科学博物館・恩賜上野動物園・東京文化会館・国立国会図書館国際子ども図書館・東京藝術大学(順不同)

「あいうえの」まなびの3つのポイント

テーマは「ホンモノとの出会いが、ホンモノの学びに」。たくさんのホンモノにふれる機会を持つことが多様な価値観との出会いに繋がり、そこからのびのびと学んで欲しいという願いが込められています

「自発的な学び」にフォーカスした様々なプログラムが用意されていて、“見て、考えて、発見する”という探求型の学びには正解も間違いもありません。「対話を通した学びのプロセスを大切に」という概念は以前ご紹介した「VTS(ビジュアルシンキングストラテジー)」に通じるものがありますね。

【ポイント1】ホンモノが好奇心に火を灯す
・9つの施設にはホンモノがたくさん。そこにはこどもの好奇心や探究心を刺激する“ふしぎ”がたくさん潜んでいます。
・大切にされてきた美術品を身近に見ることでモノを大事にする心、ひいては自分を大切にする心が育まれます。

【ポイント2】アートと本気で向き合うおとなに出会える
・プログラムの進行役となるアート・コミュニケータとの対話を通して鑑賞を深めることで、おとなもこどもも互いにまなびあいます。
・学芸員や美術研究者など、アートと本気で向き合うおとなに出会うことはこどもの貴重な一体験となるはずです。

【ポイント3】探求する気持ちを応援する
アート体験の記録を自由に書き込める「ビビハドトカダブック」を参加者全員がもらえます。Webにはブックギャラリーがあり、見て欲しい自分の発見を発表することができます。

皆もらえるスターターキット「ミュージアム・スタート・パック」

この「ミュージアム・スタート・パック」をもらうには、最初に学校向けプログラムに参加するか、個人で「あいうえの日和」という美術館の楽しみ方をマスターするための、オリエンテーション的なプログラムに参加する必要があります。

「ミュージアム・スタート・パック」
ビビハドトカダブック:9つのミュージアムのガイドブック
冒険ノート:発見や疑問などを書きこんで自分だけのノートに
バインダー
あいうえのバッグ:グッズを入れる布製バッグ
あいうえのバッジ:デビューしたらもらえる最初のバッジ。ビビットポイントの目印に
9つのオリジナルバッジ:各ミュージアムに行くともらえるバッジ。ビビットポイントで呪文を唱えたらもらえます

このように、こどもたちの興味と好奇心をそそる工夫がグッズにも満載ですね!

どんな体験ができるの?

<デビュー応援プログラム>
こどもたちのミュージアムデビューのため、さまざまなサポートが用意されています。

学校向けプログラム】
〇スペシャル・マンデー・コース
休室日(月曜日)を学校に開放して行われる鑑賞プログラム。学芸員や大学職員のサポートはもちろん、学校—美術館間の無料貸切バスも手配可能です。

〇うえのウェルカムコース
美術館と学校の先生が話し合って決められるカスタム型体験プログラム。(実施日は平日開館日中要相談)

【こどもと家族向け(個人向け)プログラム】
〇あいうえの日和
参加者みんながもらえる「ミュージアム・スタート・パック」の使い方を教えてもらい、美術館を楽しむコツをマスターするプログラムです。

〇うえの!ふしぎ発見
9つの施設がそれぞれの強みを生かしたイベントを企画。“たくさんのふしぎやホンモノとの出会いを探求する”プログラムとなっています。アート・コミュニケータのサポートのもと、見て感じたことや発見したことを伝えあいます。

[例1]
「けんちく部 伝説の建築家編」(2018/8/18 実施予定)
(東京文化会館×国立西洋美術館×東京都美術館)
ル・コルビジェと前川國男、2人の有名建築家が建てた建物をめぐる建築ツアー。
※事前申し込みと各入場料が必要です。

[例2]
「アート&アニマル部」(2018/9/29 実施予定)
(恩賜上野動物園×東京都美術館)
「たべもの」がテーマ。動物のたべものを動物園で観察した後、美術館で開催されている「BENTO おべんとう展」を楽しみます。
※事前申し込みと各入場料が必要です。

〇ミュージアム・トリップ
家庭の事情などにより美術館を利用しづらいこどもたちとその保護者を対象としたプログラム。美術館側からの招待で、自己肯定感を育むべくゆったりと施設を楽しめるようオーダーメイドで構成されます。

<リピーターになってもらうための「あいうえのスペシャル」>
メンバーシップ登録をした「あいうえのメンバー」限定特典プログラムです。デビュー後も美術館のリピーターになってもらうために年3回「あいうえのスペシャル」というイベントが開催されています。

昨年12月の冬のイベントでは282名もの人が参加。美術鑑賞体験を書き込むことができる「ビビハドトカダブック」を使った活動やオリジナルバッジの作成などを楽しんだそうです。

とびらプロジェクト

「あいうえの」の活動を支えているのが「とびらプロジェクト」です。これは2012年に始動した東京都美術館と東京藝術大学が連携して行なっている“美術館を拠点にアートを介してコミュニティを育む”取り組みで、「多様性の尊重」と「人と人がつながるコミュニティ」を実現する社会を目指して活動しています。

その中でも重要な役割を果たしているのがアート・コミュニケータ、通称“とびラー”です。「あいうえの」のほとんどのイベントで活躍していて欠かせない存在となっています。任期3年のボランティアで18歳以上の様々な人たちが参加しています。アートを通した社会活動としての意義を実現していて、こどもたちはそこからもきっと「まなび」を得ているにちがいありません。

***
ウェブサイトには活動様子を伝えるブログや動画が掲載されています。動画では目をキラキラさせて美術館を巡ったり、ノートに書き込んだりするこども達を見ることができます。美術館が初体験のこどもが多いのですが、初めてだからこそ先入観なく素直な感性でアートを体感している姿には新鮮な驚きがありました。

このプロジェクトは、アーツカウンシル東京(東京の芸術文化の発展に寄与するために活動している公益財団法人)の事業の一環となっており、美術館・博物館、大学、行政、市民が協力して行う「新しい学びの機会の創出を目指す21世紀型の教育事業」ですので、これからも継続して発展して行くのではないかと期待しています。

余談ですが、ミュージアムショップの品揃えも充実していて、筆者が最近行った国立西洋美術館のショップでは以前ご紹介した日本版「DADA」も全巻取り揃っていましたよ。

(参考)
museum start あいうえの
東京都美術館×東京藝術大学 とびらプロジェクト
ARTS COUNCIL TOKYO|museum start あいうえの