教育を考える 2018.4.12

美を感じ、洞察力や達成感を育む「シュタイナー教育」を家庭で取り入れる方法

長野真弓
美を感じ、洞察力や達成感を育む「シュタイナー教育」を家庭で取り入れる方法

黒柳徹子さんと俳優の斎藤工さん、豊かな才能を持ち、自分の意見や気持ちを大切にする個性的なお二人に共通するのは、幼児期に「シュタイナー教育」を受けたということ。

今回は、その「シュタイナー教育」を生活に取り入れる、実践法についてご紹介したいと思います。

日本でのシュタイナー教育

オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した「シュタイナー教育」。今では世界60カ国に1000を超えるシュタイナー教育を実践する学校やフリースクールがあります。

日本では就学前の幼児教育として取り入れられているケースが多いですが、全日制学校も8校あり、そのうち2校(神奈川県相模原市・シュタイナー学園初等〜高等部、北海道虻田群豊浦町・北海道シュタイナー学園初等~中等部)は学校法人として認められています。

国の認可校として成り立っているのは、これまでご紹介した他の教育法の中でも特に子どもの成長を長期的に見据え、総体的で計画的なセオリーが確立しているからではないでしょうか。そのことは、シュタイナーの理念に共感する人に、数は少ないながらも信頼性の高い教育の場を提供できる大きな強みとなっています。

家庭でもできるシュタイナー教育

とはいえ、「いいな」と思っても、近くにシュタイナー教育を取り入れている学校がないなど、ハードルが少々高いかもしれません。しかし、その考え方や学び方は今日から家庭でも実践できることがたくさんあります。

特に「人間の根っこ」が作られる大事な時期である0~7歳までの教育に活かせるアプローチは特に参考になります。シュタイナーの幼児教育で大切にしている3つのことからご紹介しましょう。

【1. 環境づくり】
子供が過ごす場所は、「“覆い”としてよくないものからこどもを守る、安心できる環境」として大切に考えられています。そのために必要な次のポイントを見直してみましょう。

◎家を整える
混沌とした部屋は心を乱します。心が行き届いた空間で“快適さ”の感覚を高めることが心の安定につながります

◎静かな環境を心がける
大声や大きな音を立てると子どもには大人が思うより大音量で響き、興奮を招くため平静を保てなくなります。

◎色にこだわる
インテリアなどに淡いピンク色がシュタイナー教育では多用されます。これは体内の色に似ているので安心すると考えられているから。ピンク以外でも優しい色味を選ぶといいでしょう。

◎自然素材にこだわる
あたたかくて柔らかい素材は子どもたちを癒します。おもちゃは木製、木の実や草木染めの毛糸など素朴なものが好まれます。シルクの布は子どもたちが大好きだそうで遊び布やインテリア素材としてもよく使われています。

◎季節感を取り入れる
テーブルに一輪花を飾る、外に出て草木や虫に触れるなど、季節を感じることで自然を大切にする心が育まれます

【2. まねすること】
なんでも吸収してしまうこの時期のキーワードは「模倣」。子どもは、学校では先生、家では親のまねをします。まだ小さい時期は言葉で言っても覚えられません。子どもはまねをする時、おとなのクセやしぐさだけでなく内面まで見通しているのだとか。

そのため「一緒にお片づけをする」「嫌いなものも一緒に食べる」などおとなの行動をまねすることで学び、自我が育まれていくのだそうです。時間はかかりますが、「ゆっくり自分のペースで」がシュタイナーの考え方です。

【3. 生活リズムの大切さ】
シュタイナー教育では短期的にも長期的にも繰り返されるリズムをとても大切に考えています。たとえば、早寝早起きは健全なこころとからだづくりのため。夜の読み聞かせは就寝の合図に。

また、シュタイナー教育を取り入れている学校では曜日ごとにやること(月曜日は水彩画、火曜日はリトミック、など)が決まっています。そして、年単位では季節ごとのイベント(七夕やクリスマスなど)もリズムの一つです。

繰り返しは子ども達に安心感を与えるため、落ち着いた集団生活ができるようになるそうです。家での生活リズムも見直してみるといいかもしれませんね。

「生きる力」を育む遊び

シュタイナー教育では、工作や絵を描くことは、美を感じる心とともに、洞察力や達成感をも育むと考えています。最後に家でもできる遊びをいくつかご紹介します。(参考:クレヨンハウス編集部(2009),『おうちでできるシュタイナーの子育て』,クレヨンハウス.)

【ぬらし絵】
色がにじんで混ざり合う調和を体感することで心のバランスを整えます。上手に描くことより、そのプロセスを楽しみましょう。

<材料>
透明水彩絵の具(赤、青、黄の3原色)と絵の具を入れる小皿3つ/画用紙/筆/スポンジ/タオルなど

<遊び方>
1. 少量の絵の具を20~30mlの水で溶きます。(透明感がありながら色がはっきりするくらい)
2. 画用紙は5分ほど水に浸してぬらしておきます。
3. ぬらした画用紙を机に広げ、スポンジで余分な水分をとります。
4. 絵を描きましょう。画用紙の上で滲み広がる色の上に別の色を重ねて色や形の変化を気ままに楽しみましょう。
(注)お皿の中で色が混じらないように、次の色をとる前には筆を水で洗ってタオルで拭いてください。

【トランスパレントのステンドグラス】
透明感のあるトランスパレント紙で「光と影」が生み出す美しさを楽しみましょう。重なり合った部分が違う色に見えるので、ときどき陽の光に透かしてみるととてもきれいです。

<材料>
好きな色のトランスパレント紙/トレーシングペーパー(12cm×12cm)/緑色の画用紙(2cm×12cm)を4枚/のり 少々

<遊び方>
1. いろいろな色の紙を1~2cmにちぎっておきます。
2. 色とりどりの紙に薄くのりをのばしてトレーシングペーパーに自由に貼っていきましょう。
3. 最後に出来上がったもの額をつけます。4本の画用紙を縦に二つ折りにし、内側にのりをつけてトレーシングペーパーの端をはさみます。

どちらも簡単にご家庭でできそうですね。他にもみつろう粘土の工作クレヨン画なども推奨されています。お家でぜひお子さんと楽しんでみてください。

***
こうしてみてくると、日々の生活の中のちょっとした気遣いでできることがありそうです。でも、徹底するとなると大変なもの。シュタイナー教育の代表的な試みに「テレビを見せない」ということがありますが、これも実際にはなかなか難しいですよね。それに、「こうあるべき」という枠にとらわれてしまっては本末転倒です。

シュタイナー教育は「できるだけ自然に素朴に穏やかに」という印象です。「親の背中を見て育つ」的な思想も日本の昔ながらの子育てに似ているところがありそうです。共感することやできそうなことがあれば取り入れて、子ども達の明るい笑顔と健やかなこころの成長に活かしてみるのもいいかもしれません。

(参考)
TOKYO GAS ウチコト|【教育研究家に聞く】「シュタイナー教育」とは?特徴や注意点、家庭でできるポイント
東京賢治シュタイナー学校
日本シュタイナー学校協会|シュタイナー教育の概要
学校法人シュタイナー学園
学校法人北海道シュタイナー学園いずみの学校
加納美智子 著(2006),『今日からできる7歳までのシュタイナー教育』,学陽書房.
ほんの木「子どもたちの幸せな未来」編(2005),『家庭でできるシュタイナーの幼児教育』,ほんの木.
クレヨンハウス編集部(2009),『おうちでできるシュタイナーの子育て』,クレヨンハウス.