2019.1.29

東大生に共通する「幼少期の本の読み方」。思考力を鍛える読書法があるって本当?

[PR] 編集部
東大生に共通する「幼少期の本の読み方」。思考力を鍛える読書法があるって本当?

『こどもまなび☆ラボ』では、これまでに何度も読書の大切さや読書と学力の関係性についてお伝えしてきました。さらに、小さいうちから読書を習慣づけることで、勉強面だけではなくあらゆる面で良い影響を及ぼすこともわかっています。

では実際に、東大や一流大学に通っているような人は、幼少時どのような読書環境で過ごしてきたのでしょうか。また、親は子どもにどのような読書環境を与えてあげるべきなのでしょうか。

賢いから本を読むの? 本を読むから賢いの?

「東大家庭教師友の会」が約7,000人の現役東大生から集めた経験談を分析した結果によると、8割以上が親に「勉強しなさい」と言われずに勉強し、東大に合格したといいます。『こどもまなび☆ラボ』の過去の記事からも、子どもに「勉強しろ」と口うるさく言うことが逆効果であることは明らかになっています。(「勉強しろ」は逆効果! 統計でわかった、親が本当にやるべき3つのこと

ただし「読書」に関しては、子どもが小さいうちから親が導き、促してあげることで、確実にその習慣は身につきます。あらゆる調査結果からも、一流大学に通う学生の多くは幼少期からたくさんの本を与えられて育ち、成長後も読書が習慣になっていることがわかっています。

プレジデント社が行ったアンケートで、現役東大生の小学校時代の読書冊数は、平均で月7.4冊という結果が出ました。全国平均が月5.6冊(学研教育総合研究所 小学生白書Web版「小学生の日常生活に関する調査」2014年より)だったので、小学校6年間で130冊もの読書量の差が出るという結論が導き出されました。

この結果を見て、「将来東大に合格するような子は、そもそも普通の子どもより賢いからたくさんの本を読んでいるんじゃない?」という感想を抱いた方もいるのではないでしょうか。でも実は、賢いから本を読む、という認識は間違っているのです。

教育や子育てに関する数多くのベストセラーをもつ教育環境設定コンサルタントの松永暢史氏は「賢い人は本が好きだと思っている人はいると思いますが、逆です」と述べています。

「(中略)本を数多く読むと言語的な理解力が上がり、言語を使いこなす能力も身につきます。さらに、考える時間も増えて思考力が高まる。結果、勉強もできるようになるわけです」

(引用元:産経Biz|賢さの鍵握る“読書体験” 東大生が小学生時代に読んだ本って何だろう?

つまり、本をたくさん読むからこそ思考力や理解力が高まり、成績に結びつくのです。東大などの一流大学に通う学生たちは読書家が多く、幼い頃からの読書習慣のおかげで合格することができた、という話もよく聞きます。

そのような子たちは、どんなきっかけで本を好きになり、読書習慣を身につけることができたのでしょうか。また、そのために親ができることはあるのでしょうか。調べるうちに、いくつかの共通点が見えてきました。

東大生に共通する「幼少期の本の読み方」2

読書に熱中する “ハマり体験” が子どもの脳を刺激する!

『プレジデントFamiliy(2018年秋号)』の特集「東大生192人頭のいい子の本棚」では、東大生が小学生におすすめしたい本を紹介しています。「ハリーポッター」シリーズ(1位)、「かいけつゾロリ」シリーズ(2位)、「ズッコケ三人組」シリーズ(3位)というランキング結果から、東大生も子どものころは普通の小学生が読むような娯楽作品を好んでいたことがわかります。

ここで注目すべきは、シリーズもの」を読むことをすすめている、という点です。東大生の多くは、小学生のうちに「シリーズものの本を読みきった」という経験があります。また、「学校の図書室の本をほとんど読み尽くした」と語るほど読書に熱中したことがある東大生も少なくありません。

東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授は、「自分の好奇心の赴くままに好きなことに熱中しているうちに、わからないことは誰に聞けばいいのか、どうやって調べればいいのか、というストラテジー(戦略)が身につきます」と述べています。それがのちに勉強や仕事の面で非常に役立つのです。

また、夢中になって楽しめることが多ければ多いほど、神経伝達物質のひとつであるドーパミンが放出されます。シリーズ物に熱中することもいわゆる「ハマり体験」の一種であり、それにより脳が大いに刺激されたということも考えられるでしょう。

東大生に共通する「幼少期の本の読み方」3

親がつくる『アラカルト本棚』のすごい効果

偏差値35から読書習慣の改善で東大合格を果たした西岡壱誠氏は、東大生100人にアンケートをとり、彼らの幼少期の読書遍歴や読書法について著書(『東大生の本棚』・東洋経済新報社)にまとめています。

西岡氏は、子どもに無理やり「親が読ませたい本」を読ませることだけはしてはいけない、と説きます。誰しも「この本を読みなさい!」と押し付けられるのは億劫であり、それがきっかけとなって読書嫌いにもなりうる危険性もあります。ですから、子どもが「自分で読みたい本」を選ばせてあげる必要があるのです。

さらに、親から押し付けられるのではなく、「多くの本をおすすめしてくれたのが良かった」と非常に多くの東大生が答えたそう。その中でも、『親が作ったおすすめの本の本棚』=『アラカルト本棚の存在が、その後の読書習慣に強く影響を及ぼしていることがわかりました。

アラカルト本棚には、文化系の本も理系の本も、雑誌も漫画も小説も、ジャンルや本の形態も飛び越えた「おすすめ」が並びます。ある学生は、そこに置いてあった科学アドベンチャーシリーズを読んで理系に興味を持ち、東大理学部に進んだそうです。

つまり、子どもに特定の本や特定の分野だけを無理に押し付けるのではなく、その時々の興味関心に沿って自由に選べる本棚を作ることで、子どもは自然と興味のある本に手を伸ばすようになるのです。

東大生に共通する「幼少期の本の読み方」4

「知りたい!」「読みたい!」そのタイミングを逃さない

中学受験指導を行っている浜学園の国語科講師・木村潤一先生は、「レベルが上位のクラスほど読書量が多い」といいます。

塾の教材やテストで、物語やエッセーなどいろいろな本を活用していますが、引用するのは本の中の一部でしかないんですね。そこで授業後に、全体を読んでみようと自ら考えるのは、やはり上位クラスの子供たちです。もともと知的好奇心が強く、自分の知らないことがあったらすぐに知りたがる子が多い。教材で使った翌日には、本を手に入れて読んでいる子もいますよ。

(引用元:PRESIDENT Online|できる子の家で読まれている本50冊

つまり、「続きが気になるけど……まあいいか」「また今度、時間があるときに続きを読もう」とならずに、知的好奇心が抑えきれずに、すぐに行動に移して「気になること」を即解決するのも、賢い子の特徴であると言えるでしょう。

東大生に共通する「幼少期の本の読み方」5

読後にアウトプットする習慣がある

前出の『東大生の本棚』著者・西岡壱誠氏は、東大生の読書法の特徴について次のように語っています。

東大生は読書法の工夫で「思考力」も鍛えています。「自分の頭で考えて、自分の地頭を鍛えるような読書」をしている。(中略)しかもそれを、小さい頃から実践しているのです。

(引用元:PRESIDENT Online|東大式“読んで終わり”にしない本の読み方

たとえば、本を読み終えて「ああ、面白かった!」と確かに感じたのに、しばらくすると内容を忘れてしまった……ということはありませんか? いくら印象深い内容でも、時間が経てば忘れてしまうのは脳の構造的にも当然なのですが、西岡氏によると「東大生は読んだ内容を忘れにくく、本から得た知識を活用できている」らしいのです。それは東大生の多くが、小さい頃から「あること」をしているから。

「それ」は何かというとーー「感想」です。東大生は、本を読んだ後、「感想」をアウトプットするから忘れないのです。

(引用元:同上)

西岡氏によると、本を読んだ後に生じる感情を言語化することが記憶の定着につながるだけではなく、「感想を誰かに聞いてもらう」「それに対してフィードバックしてもらえる」という経験が重要であるとのこと。

なるほど、インプットした知識をアウトプットすることが大切なのですね。お子さまのアウトプットの習慣をつけるために、以下のことを取り入れてみてはいかがでしょうか。

■読書日記をつける

感想は一行でもOK。もちろんたくさん書ける子はどんどん書かせてあげましょう。感じたことを自分の言葉で残すことで表現力も高まります。また市販の読書日記や読書ノートを利用するのも手です。ぬりえやシールなど子どものテンションを上げる仕掛けがたくさんあるので、アウトプットがしやすいかもしれません。いろいろな読書日記があるので、親子で読書日記を選ぶところから始めてみるのもおすすめです。

■感想を話し合う

「〇〇が△△したところがおもしろかった」など、本の内容についてお子さんに話してもらいましょう。どんなところに心が動かされたのか、お子さんの考えを聞くよい機会になると思います。また、親子で同じ本を読み、感想を話し合ったりする「親子読書」も◎ですよ。本についての会話を楽しむことで、インプットした知識をしっかりと記憶に根付かせることができるでしょう。

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東大生の幼少時代の読書環境や読書法は、なにも特別なものではありません。むしろ子どもの好奇心を伸ばし、あらゆることに興味をもつきっかけづくりとしての読書体験が必要なのですね。

(参考)
Study Hacker こどもまなび☆ラボ|東大生の親の4つの特徴。「勉強ができる子」の脳を育てるために、親がするべき心がけ
産経Biz|賢さの鍵握る“読書体験” 東大生が小学生時代に読んだ本って何だろう?
「東大生192人頭のいい子の本棚」,プレジデントFamily,2018年秋号.
東洋経済ONLINE|頭のいい子に共通する小学校時代の過ごし方
東洋経済ONLINE|東大生の親が子にかけた「本好きになる魔法」
PRESIDENT Online|できる子の家で読まれている本50冊
PRESIDENT Online|東大式“読んで終わり”にしない本の読み方
神奈川県大和市|家読(うちどく)の推進について
大分県竹田市立都野小学校|親子読書のすすめ