2019.6.29

将来を決めるのは「根拠のない自信」である。今日から“心の貯金”をはじめよう!

編集部
将来を決めるのは「根拠のない自信」である。今日から“心の貯金”をはじめよう!

「うちの子、ウジウジしていて困っちゃう。もっと自信をもってほしいのに……」そう悩む親御さんはたくさんいます。一方で、やったことがないことやできそうにもないことを、自信満々に「できるもん!」と言っては失敗し、「もっと慎重になってほしいのに……。根拠のない自信がありすぎて心配」という親御さんも少なくありません。

なさすぎてもありすぎても心配な『根拠のない自信』。今回は、子どもの “自信” がもたらす可能性について、さまざまな角度から考えていきましょう。

健やかな心を育むには『根拠のない自信』が必要不可欠!

半世紀以上臨床の現場で子どもの成長を見つめ続けた児童精神科医の故・佐々木正美先生は、子育てでもっとも大切なことは『根拠のない自信』を子どもの心にたっぷりとつくってあげることだと語っていました。

『根拠のない自信』は、精神医学の世界では『基本的信頼感(ベーシック・トラスト)』を意味します。人が人として生きていくためにとても重要な「自分に対しての揺るぎない自信」があれば、たとえ失敗や挫折をしても乗り越えていけるーーそれは誰もが頭では理解しているのではないでしょうか。

実際に、社会問題にもなっているひきこもりやニートと呼ばれる人たちは、他者に無条件に受け入れられた経験が乏しく、『根拠のない自信』をもっていない場合が多い傾向が見られるそうです。

『根拠のない自信』は一般的に乳幼児期に育みやすく、成長するにつれて身につけることが難しいともいわれています。しかし、学童期以降でも育むことは充分可能です。そのために親が心がけたいのが、子どもの思いに耳を傾けるよい聞き手でいることだと、佐々木先生は述べています。

いまのお母さん方は、子育てに関する情報をたくさんもっているため、とかく先回りをして「○○をしなさい」と子どもに指示や命令をしてしまいがちなんですよね。その結果、親子関係が逆転し、子どもが親の希望や期待を聞いている例をしばしば目にします。

(引用元:HugKum|【今も心に響く佐々木正美さんの教え】子どもに自信をつけるお母さんになってください

本来なら子どもの言葉に耳を傾けなければならないのに、「わが子のために」と先回りして指示を出してしまうなんて本末転倒ですね。甘えやわがままがその都度親に受け入れられると、子どもは精神的な安らぎを蓄積していきます。それはやがて生きる原動力になり、子どもの自立を後押ししてくれるのです。

佐々木先生は、子どもが甘えてわがままを言うのは、自信をつけるための『心の貯金』という言葉を残しています。甘やかさないように、わがままにさせないように、と気を張って子育てしている親御さんにとって、心がフッと軽くなるのではないでしょうか。

今日から“心の貯金”をはじめよう!2

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自信を育むお手伝いのすすめ

『正解標準の子育て』(ダイヤモンド社)の著者であり、日米で20年以上教育現場に携わってきた船津徹さんは、「子育ての90%は『自信育て』に左右されるといっても過言ではない」と述べています。

そして子どもの将来を決めるもっとも大事な要素は『自信の有無』であるとも。なぜなら、困難に負けないチャレンジ精神、挫折を乗り越える気持ちの強さ、円滑なチームプレイを可能にさせる社交性……などのあらゆる要素の根底にあるのは、すべて根拠のない自信だからです。

『根拠のない自信』とは「親から愛されている」という実感であり、親が100%与えるものです。そのため、子どもが自分の力で獲得することができません。とくに、赤ちゃん時代に比べて肌と肌とのふれあいがぐっと減っていく時期に突入すると、「愛されている自信」が揺らぎ始め、情緒が不安定になる子どもが増えるといいます。

そこで船津さんは、1歳~6歳児の『根拠のない自信』を強めるのに最適な方法として「お手伝い」をすすめています。次のことに気をつけながら積極的にお手伝いをさせてみましょう。

食卓を拭く、洗濯物をたたむ、など簡単にできるお手伝いを “丁寧な言葉” で頼む。

終わったら「手伝ってくれて助かったよ、ありがとう!」と、抱きしめて感謝の言葉を伝える。
(※注意!)たとえ洗濯物のたたみ方が雑だったとしても、絶対にその場でたたみ直さないこと。ほかの洗濯物を使って「こういうふうにやるともっときれいになるよ」と教えてあげるとグッドですよ!

子どもは「自分でできた!」という成功体験を積めると同時に、親からのスキンシップと感謝の言葉によって自信を高められる

自信のもとになる成功体験をインプットするには、お手伝いが一番です。お手伝いを通して、人の役に立つことや人から感謝されることの喜びを実感できるだけでなく、思考力や集中力、コミュニケーション能力の発達を促す効果も期待できるでしょう。毎日簡単なお手伝いを頼むだけで、子どもの自信はぐんぐん伸びていきます。

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自信がありすぎるのも心配?

『根拠のない自信』の重要性は充分理解しているものの、一方で自信過剰にも見えるわが子に対して、もっと慎重さを身につけるべき?と心配している親御さんもいるのではないでしょうか?

でも大丈夫。花まる学習会代表の高濱正伸先生は、「これからの時代、ゼロベースでビジネスを生み出すには『根拠のない自信』が絶対に必要」と述べています。つまり、これからどんどん時代が変化していっても、本質的に物事を考えられる思考力があれば乗り切れる、というわけです。

しかし今、親が周りの目を気にして子どもが周囲から浮くことを恐れるあまり、せっかく子どもに備わっている『根拠のない自信』の芽を摘んでしまうこともあるそう。

「○○ちゃんはできるのに、なぜあなたはできないの」とか、「あんまり成績良くなかったね」と残念そうにしてしまう。のびのびとさせてあげればいいのに、結果を求めてしまうんです。

(引用元:iXキャリアコンパス|成功を掴む人に共通する「根拠のない自信」を育む方法 花まる学習会 高濱代表

高濱先生は、「本来子どもは、何にでも興味があるし、好きなことだらけ」といいます。ではなぜそれが、嫌いになったり自信がなくなったりしてしまうのでしょうか? それは「親の言葉」が原因です。

子どもは親が放っておくと、むしろ自由にのびのびと好きなことに取り組みます。しかし、命令されたり指示されたりすると、途端につまらなくなり、自己肯定感も低下しはじめるのです。「今日はピアノのお稽古」「次は学習塾」というように、自分のペースとは関係なくやることが決まっていると、喜びを感じるのは「誰かに褒められること」や「親が喜んでくれること」になってしまうでしょう。

子どもを心配する気持ちは、親ならば当然です。でもちょっとだけ、子どもが自分で決めたことに口出しせずに、見守ってあげてみませんか? そして、今までできなかったことができるようになったら、はっきりと口に出して褒めてあげてください。言葉と態度で愛情を伝えてあげることこそが、子どもの『根拠のない自信』を大きく伸ばす唯一の方法です。

***
『根拠のない自信』は、子どもの将来のためにもぜひ身につけさせたい要素だということがわかりましたね。

医師で臨床心理士の田中茂樹先生によると、「根拠のある自信」は根拠となる事実がなくなれば消えてしまうものであり、「根拠のない自信」は “理由はないけどなんかうまくいくような気がする” という感覚だそうです。その楽観性は時にしなやかに変化して、いずれ子ども自身が困難を乗り越える手助けをしてくれるでしょう。

(参考)
HugKum|【今も心に響く佐々木正美さんの教え】子どもに自信をつけるお母さんになってください
ダイヤモンド・オンライン|子どものやる気を引き出す「根拠のない自信」の育て方とは?<前編>
ダイヤモンド・オンライン|子どものやる気を引き出す「根拠のない自信」の育て方とは?<後編>
船津徹(2017年),『世界標準の子育て』,ダイヤモンド社.
iXキャリアコンパス|成功を掴む人に共通する「根拠のない自信」を育む方法 花まる学習会 高濱代表
ダイヤモンド・オンライン|根拠がある自信 根拠のない自信「自己肯定感」の源になるのはどっち?