教育を考える 2018.4.6

黒柳徹子さんが受けた、自らの意思によって行動できる「シュタイナー教育」

長野真弓
黒柳徹子さんが受けた、自らの意思によって行動できる「シュタイナー教育」

黒柳徹子さんの人生をドラマ化した「とっとちゃん!」というドラマをご覧になりましたか? 小学校を退学になってしまったとっとちゃんが、その後自由にのびのびと過ごすことになった学校、「トモエ学園」は日本で初めて「シュタイナー教育」を取り入れた学校と言われています。

そのほかにも俳優の斎藤工さんもシュタイナー教育を受けたひとりだそうです。豊かな才能を発揮する個性的なお二人に大きな影響を与えた教育法、気になりますよね。今回は「シュタイナー教育」についてご紹介します。

シュタイナー教育はドイツで生まれた

1919年、オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナーは実業家エミール・モルトの依頼で「自由ヴァルドルフ学校」(ヴァルドルフ・タバコ工場の労働者の子供達のための学校)の設立に創設アドバイザーとして携わりました。

第一次世界大戦後の人間精神育成を目指すこの学校は、「全ての階級の子供達を受け入れる」「男女共学」「12年一貫教育」「国や財政界から距離を置いた教師中心の運営」という当時では珍しい4つの特徴を備えていました。これが現在の「シュタイナー教育」(欧米圏では”ヴァルドルフ教育”)の基となったのです。

シュタイナーの考え方「自分で選んだ道で自由に生きていく力をつける」

シュタイナーは、多くの人が忙しすぎて考える暇もなく過ごす状況を「現代人はスズメバチのよう」だと危惧していました。知識を詰め込む学習は教育の一部に過ぎないと考え、感情や意思を豊かに育む総合芸術としての教育を生み出したのです。「自分で選んだ道で自由に生きていく力をつける」子どもを育てることが目標です。それには芸術を通して適切な時期に段階的に学ぶことが大切と考えました。

子ども達にとって最も重要視されるべきは「からだ」「こころ」「あたま」のバランスと捉え、ひとりひとりの気質を正しく把握し、それぞれにあった教育を施していこうと考えたのです。(そのためシュタイナー教育の学校では基本的に8年間同じ教師が担任を務めます。)シュタイナーはその気質をギリシャ時代の“医学の父”ヒポクラテスの説により4つに分けています。

【胆汁質(火)】
自我が強い・行動力がある・怒りやすいが誠実・リーダー格

【憂鬱質(土)】
ネガティブ・非社交的・孤独・傷つきやすい・独創性がある・創造性豊か

【粘液質(水)】
慎重・公正・持続性がある・マイペース・ゆったりしているが意志が強い

【多血質(風)】
好奇心旺盛・楽天的・社交的・陽気・優しい・集中力がない・美的感覚が鋭い

4つに分類されている気質ですが、本来人は複数の気質を持っていて時期によってどれかが表に現れているのだそうです。教師はそれを把握し、子どもとの接し方に活かしていこうというのがシュタイナー教育の指標となっています。

シュタイナー教育の特徴—「7年期」(0〜7歳)(7〜14歳)(14〜21歳)

バランスが取れた成長を促すために、シュタイナー博士は子どもが成人するまでの成長段階を7年ごとに分けて考えました。

第1・7年期(0〜7歳):「からだ」を育む
体を動かし大人の真似をしながら意志も育む時期

第2・7年期(7〜14歳):「こころ」を育む
感情豊かな経験をたくさんして教師に敬意を持つことを学ぶ時期

第3・7年期(14〜21歳):「あたま」を育てる
思考力や判断力を育み自我を発達させる時期

シュタイナー教育ではこの成長の順番を守ることを大事に考えています。

シュタイナー教育のアプローチ法

シュタイナー教育は“人間は宇宙と自然の関わり合いの中に生きている”という「人智学」に基づいて行われています。では、実際にはどんな風に学んでいるのか、いくつかのアプローチ法をご紹介しましょう。

○エポック授業
国語、算数、理科、社会にあたる教科を1教科ずつ、毎日第1限目の110分間、2~4週間に渡って集中的に学ぶものです。朝一番の時間帯に連日集中してやることで学習効率が上がるのだそう。その際教科書は使わず、教科ごとに自作のノートを作成して最終的にそれが自身の教科書となるのです。

○オイリュトミー
体を使った表現を行う運動芸術のことです。例えば、曲に合わせて踊ったり、皆で円を作ってボールを投げ合ったり。その行動の中で、心身と思考のバランス感覚が養われ、協調性や責任感などを身につけていくことを目的としています。

○フォルメン
物の形を理解し、色を体感させるための芸術教育。直線、曲線、渦巻きなどの線を色を使って描いてもらうことで運動感覚やバランス感覚が養われるのだそうです。図画工作、算数、国語の要素も含んでいて、教科の枠を超えた総合学習として取り入れられています。フォルメン線描は子供達の芸術性を引き出す有効な手段にもなると言われています。

○水彩
「にじみ絵」と「層技法」という技法を使って色を体感します。濡らした画用紙に原色の絵の具を垂らし、にじんで混ざり合う色の広がりや同じ色を何度も塗り重ねることで生まれる美しい濃淡を楽しむことで感性が育まれます。

そのほかにもおもちゃや教材は自然素材、食事はオーガニック、インテリアには安心感を与える淡いピンク色を多用するなどの理念に基づいたこだわりが実践されています。

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シュタイナーは哲学者であり思想家だったため独特の世界観を持っており、シュタイナー教育法の原点となった彼の理論はなかなか難解ですが、その理念はシンプルです。

「子ども達が“自由に意思決定ができる人”になるまで成長の妨げになるものを取り除きサポートすること」

画一化した教育からは一線を画し、“持って生まれた才能を伸ばす環境の中で人間力をつける教育”という印象を持ちました。そのシュタイナーの想いは今や世界60カ国以上に広がっています。次回は日本でのシュタイナー教育の広がりや、家でも実践できる試みなどをご紹介したいと思います。

(参考)
Wikipedia|シュタイナー教育
TOKYO GAS ウチコト|【教育研究家に聞く】「シュタイナー教育」とは?特徴や注意点、家庭でできるポイント
日本シュタイナー学校協会|シュタイナー教育の概要
保育のお仕事|芸術的な幼児教育「シュタイナー教育」で、子どもはどう育つ?
東京賢治シュタイナー学校|教育について