教育を考える/食育 2018.3.2

親と子どもの食育学vol.3

新生暁子
親と子どもの食育学vol.3

子どもの味覚はどのようにして形成されていくのでしょうか。親が食べているもの、親が食べさせるものによる影響が大きいことはなんとなくわかっていても、自分たちが毎日食べている食事の味付けは、いつのまにか「当たり前」になってしまうものです。しかし、子どもが成長するに従って、その影響は思っていた以上に本人の身体に染み付いており、大きくなってから味覚を変えることは困難でしょう。だからこそ、小さいうちから親子で一緒に「味」について考えてみませんか?

味覚は何歳で決まる?

味覚とは「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の五味から成り立っているということはご存知ですよね。では、それぞれにどのような役割があるのでしょうか。

甘味エネルギー源である糖の存在を知らせる
塩味体液のバランスに必要なミネラル分の存在を知らせる
酸味腐敗している、果物などが未熟であることを知らせる
苦味毒の存在を知らせる
うま味体を作るのに必要なタンパク質(アミノ酸)の存在を知らせる

5つの味覚がバランス良く備わっていることで、身体の成長だけではなく生きるために重要な役割を果たしていることがわかります。

脳で味を感知するためには、舌の表面にあるブツブツとした器官「味蕾(みらい)」で味をとらえる必要があります。その味蕾はお母さんのお腹の中にいる時にでき始め、生後3ヶ月でピークを迎えると言われています。つまり、赤ちゃんだからといって味がわからないというわけではないでのす。

お腹の中にいる時から、味の違いや「おいしい」「おいしくない」といった判別ができるのはもちろんですが、お母さんが口にした食べ物の影響をダイレクトに受ける羊水の味の変化によって、生まれてからの味覚の好みが形成されるとも言われています。妊娠中に栄養バランスを考えた食事を摂ることと同じくらい、「味付け」について意識する必要がありそうですね。

幼少期の食の記憶は、成長後の食習慣に直結

今、味が濃いものや大人でもしょっぱいと感じるものを食べる習慣がある幼児が増えているように感じます。確かにスナック菓子などしょっぱくてオイリーな食べ物には、人を病みつきにさせる不思議な中毒性が潜んでいますよね。塩気や脂質を一切排除した食事は、なんとも味気ないものです。

しょっぱさを感じる「塩味」は、2歳くらいで個人の基準が決定づけられると言われています。離乳期を終えてだんだんと大人と同じメニューを口にする時期ですね。つまり、この時期に確かな塩味を覚えることで、身体が適度な塩分量を覚えるようになるため、離乳期から普通食への移行期間は非常に重要だと言えるでしょう。

お母さん・お父さん自身の小さいころを思い出してみてください。家庭で親が作ってくれる料理が、自分自身の味覚に大きく影響していると実感しませんか? 例えば、地域によっておでんの具やお雑煮の具、味噌の種類など違いがありますが、大人になってからも小さいころから慣れ親しんだ味に安心感を覚える人も多いのではないでしょうか。逆に、小さいころに食べる習慣がなかった食材や変わった味付け方法など、大人になってから初めて口にするのに抵抗を覚えることもあるはずです。

このように幼少期の「舌の記憶」とは、その人の一生の味覚につながるのです。もちろん大人になってから急に食の好みが変わることもあるでしょう。しかし、基本的には小さいころ覚えた味覚こそが、その人の好みの味・身体が求める味であると言っても過言ではありません。幼少期から味がしっかりしているものやしょっぱい食事を好んで食べていると、大人になってからの健康への弊害はおろか、小児のさまざまな疾病のリスクを抱える要因にもなるのです。

だからこそ食事を作る親御さんたちには、子どもが求めるままの味付けをする必要はない、ということを意識してもらいたいと思っています。離乳期を経て、2回食、3回食へと進む中で、少しずつ大人の嗜好も取り入れてみましょう。もちろん最初は慣れない味に抵抗するかもしれません。しかし、世の中にはこんな味があるんだよ、と複雑な味にも触れさせることで、子どもが感じる「味の世界」はどんどん広がっていくのです。