2018.4.5

知識の詰め込みではない「答えを導き出すための力」をつける、今注目の「探究学習」とは?

編集部
知識の詰め込みではない「答えを導き出すための力」をつける、今注目の「探究学習」とは?

2020年度からセンター試験が廃止され、新しい「大学入学共通テスト」が実施されることになりました。この新テストによってなにが変わるのかというと、これまでの「知識・技能」に加えて、「思考力・判断力・表現力」が問われるようになるとのこと。

この改革は何を意味しているのでしょう?
この先、子どもたちにとって、自ら考えたり、自分自身の判断で行動したり、自分の考えを相手に伝えることが重要となってくるのです。今までのように「知識を持っているだけ」では取り残されてしまうかもしれません。「その知識を使ったらどんなことができるのか」を考えられる人間になることが必要となってきます。

そんな教育変革期に、大注目されているのは「探究学習」です。今回は「探究学習」についてご紹介します。

探究学習とは?

探究学習とは、答えを導き出すための力をつける学習です。疑問に感じたり、知りたいと思ったことを解決するために、自らで解決方法を見つけながら、さまざまな方法を使って、答えを導き出します

関西大学総合情報学部の黒上晴夫教授は、探究学習について次のように話しています。

今後求められる「探究学習」とは、自らの考えや課題を更新し、深めながら、探究のサイクル(課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現→振り返り・考えの更新)をらせん状に繰り返していく学びのこと。

(引用元:ベネッセ教育総合研究所|『VIEW21』高校版 2016年度 10月号

そして答えはひとつではありません。探究学習では答えを限定せず、あらゆる可能性を探し、結論を導くこと自体が学習なのです。また、その結論が正しかったのかどうかを、しっかり振り返り、それで本当によかったのかを考え、いろいろな面からもう一度よく調べ、次の学びにつなげていきます。

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『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』の家庭教育

『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』の著者であり、「探究学舎」の代表を務める宝槻泰伸先生のお父様は、「強烈」だったそうです。そしてタイトルの通り、ご兄弟は3人とも高校にも塾にも通わず、京都大学に進学。

子ども心に「これが本当に教育なの?」と疑ってしまうほど、極端な手法で家庭教育を行っていたお父様でしたが、教育者になった宝槻先生が振り返ってみると、その教育の中身は「理にかなっている」ものだったと言います。

たとえば、本を読んだら感想文を書くもし感想文が長くなりそうであれば、口頭で説明(ドライブ中や入浴中)をさせられたそう。これは、本やマンガ(歴史ものや伝記など)の内容の定着をはかり、プレゼンの練習にもなりますよね

また本のセレクトにもお父様のコツがあったようです。工作が好きだった宝槻先生には、エジソンのマンガ→エジソンの本→ライト兄弟のマンガ→ライト兄弟の本というように、段階を踏んで、内容を深めていったとのこと

ほかにも、幕末~近代史にかけては、『お~い!竜馬』(小山ゆう画・武田鉄矢原作)というマンガから入り、坂本龍馬に関連した大河ドラマ、そして最後に『竜馬がゆく』(司馬遼太郎著)を手に取らせたと言います。子どもたちの「もっと知りたい」「究めたい」という気持ちを引き出しながらの学習ですね。

このことについて、宝槻先生は以下のように話しています。

子どもの目線に立って分かりやすい題材を、手にしやすいメディアを通して少しずつ触れさせていきながら、徐々に徐々に、好奇心と探究心を引き出していく。自分のオヤジながら「あっぱれ」と言いたいです。

(引用元:宝槻泰伸 著(2014),『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』,徳間書店.)

もうお分かりかもしれませんが、この教育方法こそが、まさに今注目されている「探究学習」なのです。

探究学習とは2

探究心の「種」をまき、「芽」を育てるには

では、自宅で探究学習を行うにはどうしたらよいのでしょう?

宝槻先生は、親が子どもの心に探究心の「種」をまくことが大切だと言います。日々子どもと接していれば、わが子がどんなことに興味を持っているのか、もしくはこれから興味を持ちそうなのかがわかると思います。工作が好きな子どもであれば、大手プラモデルメーカー・株式会社タミヤの「楽しい工作シリーズ」などを与えてみるのはどうでしょう。

また、とにかくいろいろなことをやらせてみます。たとえば、クラシックコンサートに連れて行き「本物」を見せることで、ピアノに興味を持つきっかけになるかもしれません。そして重要なのは、その反応です。子どもの反応をよく観察してください。子どもが少しでも興味を持った「種」があれば、難しすぎず簡単すぎない、ちょっと背伸びをすれば届くくらいの課題や教材を与えてみましょう。

最後に、具体的にどのような種をまいたらいいのかわからない場合についてです。宝槻先生は、「親が子どもと共有したいこと」をシンプルに考えてみることを提案しています。ジャンルは問わず、子どもと一緒に楽しめたらいいなと思うことを、子どもにやらせてみるのです。すぐに同じ感覚で楽しむことは難しいと思いますが、そこから探究心の「芽」が育っていくかもしれませんよ。

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『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』のエピソードを読んで、編集部でも『お~い!竜馬』を購入してみました。宝槻先生のように10回とはいきませんが、現在ちょうど3回目を読み終わったところです。また、並行してNHK大河ドラマ『龍馬伝』DVDも観ています。

マンガとDVDがリンクし(リンクしない箇所もありますが)、登場人物や時代背景がするすると頭に入ってくる感覚が不思議です。そして、ところどころ気になったことを本やインターネットで調べています。これこそが「探究学習」なのですね!

(参考)
ベネッセ教育総合研究所|『VIEW21』高校版 2016年度 10月号
関西国際学園 初等部|探究学習とは
宝槻泰伸 著(2014),『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』,徳間書店.
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