あたまを使う/サイエンス 2018.4.16

子どもが “発する” ように大人も “ハッスル”! 数学的な「コトバ」のシャワーを浴びせよう。

黒澤俊二
子どもが “発する” ように大人も “ハッスル”! 数学的な「コトバ」のシャワーを浴びせよう。

最近、機械がおしゃべりをする機会に頻繁に遭遇しませんか? 電車やバスの車内放送案内は、もう当たり前のように機械任せ。ほかにも、交差点の信号機や銀行のATM、自動車のカーナビゲーションシステムなどなど、おしゃべりをする機械は確実に増えています。Artificial Intelligence(AI、いわゆる人工知能ですね)を備えた機械が、人間の話す機会を奪うかのようにどんどん話しかけてきます。

さて、先日、近所のスーパーマーケットのレジでお会計をしようとしたときも、機械がおしゃべりをしていました。レジのお姉さんが「ピ、ピ、ピ」とバーコードを次から次へとあてて商品の値段を加算していく作業の中で、レジスターの機械が「同一ラベルです」と声(?)を出すのです。同じ商品を2個以上購入した場合、すぐに「同一ラベルです」という声がレジ付近にこだまします。例えば、お豆腐を3丁買おうとすると、2丁めと3丁めは2回とも「同一ラベルです」となるのです。

隣のレジで、この機械の声をまねする子どもがいました。「どういちゅらべるでしゅ」と、かわいい子どもの声があたりに響き渡ります。なんともほほえましい場面ですね。

その後、その子はしきりにお母さんに質問していました。「“どういちゅ” って、なーに?」「ねえ、なんなの、“どういちゅ” って」と。「同一」という「コトバ」が、その子にはヒットしたのでしょう。

ところが、お母さんはお金を払うことに集中し、それどころではなかったようです。ああ、もったない。せっかく、子どもが数学的な「コトバ」を自分のものにするチャンスだったのに……。

数学的な「コトバ」を聞き逃さずに「リ・アクション」を

前回の記事「『概念』形成の第一歩。「かたまり」への気づきは、算数力の「たかまり」の重要なサイン!」では、「かたまり」という、子どもから出た数学的に意義のある「コトバ」を話題にしました。それと同じように、この「同一」という「コトバ」も、数学的に重要な意義を含んでいます。

「同一ラベル」とは、“同じかたまりの仲間のメンバー” という意味になります。数学的には、“同じ集合の元(要素)” ということになるのです。

「関係」をとらえる “変化” “変数” に相当する「コトバ」、「きまり」をとらえることにつながる “変わり方” “数式化” に相当する「コトバ」、「区切り」「区別」を考え「概念形成」につながる “仲間” に相当する「コトバ」などを、今まで話題にしてきましたね。

これらはいずれも、子どもから「わざわざ」「わざと」意識的に発せられたときにきちんとフィードバックし強化したい、子ども発の数学的な「コトバ」。ですから、聞き逃さずに「リ・アクション」するべき瞬間なのです。

PFR——プロセス・フィードバック・リアクション

「リ・アクション」の仕方で、重要な注意点があります。

これまで、「リ・アクション」の望ましい姿として、「いづちを打ちながら、いところを指摘し、なずき、じながら、ウム返し」の「アイウエオ」を紹介してきました。ここで注意したいことは、子どもの数学的な「コトバ」が出たときに、ランクづけにあたる評定をしないことです。やるべきは “プロセスを評価する” こと。

ここでいう “評定する” とは、「賢いのね」とか「頭がいいのね」といったような、持って生まれた才能や人格をランクづけする「リ・アクション」です。この「リ・アクション」は、なるべく避けたいもの。なぜならば、自分をそのレベルで安定させてしまい、さらなるチャレンジを避けようとしてしまうからです。

それに対して “プロセスを評価する” とは、「うまいこと言ったね」とか「なるほど、じっくり聞いていたんだね」といったような、子どもが発した「コトバ」に至るプロセスにある良いところを取り上げ、暗示的にその態度を進める「リ・アクション」です。こちらの「リ・アクション」をぜひお勧めします。

「わざわざ」「わざと」したことの原因や理由を、その過程にある子どもの努力や取り組む様子にあるととらえ、そのプロセスの良さをフィードバックすることが重要です。なぜならば、結果として自分の才能や人格を認められるよりも、そのプロセスにある努力や興味関心を認められたほうが、これからの知識獲得への意欲が確実に高まりますから。

子どもが「発する」ように、大人もハッスル

え? 「うちの子、そんな数学的な『コトバ』を発するのかな……」ですって?

心配いりません。前述のように、機械までもが数学的な「コトバ」を浴びせてくる時代です。小さな子どもの身の回りには、数学的な刺激があふれています。その刺激に、ふとしたことから興味関心を持ち、「ママ、なーに」とか「パパ、どうして」が生まれてきます。

でも、子どもの「ふとしたことから」なんて待っていられませんよね。そうなのです。子どもが「発する」ように、大人たちも「ハッスル」しないと、より高度な能力開発は進みません。

そこで、子どもの「算数力」向上につながる算数的態度を育てるために、子どもが数学的「コトバ」を発するように仕掛けてみるのはいかがでしょうか。機械が数学的な「コトバ」を発する、この時代。親御さんをはじめ私たち大人も、数学的な「コトバ」をシャワーのように子どもたちに浴びせてみませんか。まずは私たちが、数学的な「コトバ」を意識的に使ってみせていきましょうよ。

子どもがまねをして、その言葉を使い始めたら儲けものです。使いだしたら……そう、PFR(プロセス・フィードバック・リアクション)ですね!