教育を考える 2018.3.22

坂上忍さんの子役育成から学ぶ 子どもの「才」の伸ばし方【第4回】~いじめにあったときに必要な場所~

坂上忍
坂上忍さんの子役育成から学ぶ 子どもの「才」の伸ばし方【第4回】~いじめにあったときに必要な場所~

役者、舞台や映画の脚本・演出、そして番組MCとマルチな活動をしている坂上さんですが、もうひとつの顔が存在します。それは、2009年に立ち上げた『アヴァンセ』という子役育成のためのプロダクションを運営していること。役者業は既に48年目目を迎えた坂上さん。

その長いキャリアを持っているからこそ教えることができる、目から鱗の子どもの「才」の伸ばし方を、全10回に渡って公開します。第4回目となる今回は、学校などで心の傷を負った子どもに必要な「外の居場所」についてのお話です。

外の世界に居場所を作ってあげる

文部科学省の発表によると、2013年度、全国の小中学生の不登校数は11万2437人。2012年度に比べるとおよそ5000人の減少で、人数だけ見ると5年連続で減少しているそうです。ただそれでも驚いたのが、中学生における不登校の割合。なんと、39人にひとりの割合で不登校になっているとか(上記の数字は、本の刊行当時の数字)。

不登校の原因はさまざまですが、やはり一番多いのはいじめですよね。最近の報道を見ていると、殴られたとかケンカしたとかといったわかりやすいことではなく、陰湿な言葉を浴びせたり、携帯電話やSNSを使ってのいじめが多いようで、周りの大人がなかなか気付けないようです。

むかしは家族揃って食事をすることが普通でしたから、子どものちょっとした変化にも気付くことができた。でもいまは共働きの家庭も多くなり、家庭内でコミュニケーションの時間が限られていることもあって、気付けないことも多いようです。すると、いじめられている子どもがひとりで抱え込み、大人が気づいたときにはちょっとやそっとでは戻れないところまで事態が進んでしまっているケースも出てきます。

わたしも中学時代、テレビに出ていたことで目の敵にされ、いじめられた経験があります。だからこそわかるのですが、いじめにあっている張本人のガマンだけではどうにもならないんです。子どもがひとりでいじめを克服する方法など、はっきり言ってないに等しい。相手が複数いればひとりでは立ち向かえないし、暴力で対抗しようとしてもむしろ助長させるだけ。どうにもならない苦しみを胸に抱えて、日々の生活を送るしかない。ビクビクしながら机に座ってやりすごし、時間がくれば目立たないように帰宅する。そんな学校生活が楽しいはずはありません。

ではどうすればいいのか? 子どもがいじめにあっているからと、親が出ていくことでさらに話がこじれることもあれば、すんなりと解決することだってあるわけで、親の出方のさじ加減も難しいものがありますよね。

わたしが思うのは、そんな子どもこそ、外の世界に居場所を作ってあげて欲しいということです。習い事でもなんでもいいんです。学校や家庭だけでないどこか違う場所に、その子を置いてあげてみてはいかがでしょう。「習い事に行けば自分を理解してくれる友達がいる」「楽しい時間をすごせる」「先生に早く会いたい!」という前向きな気持ちが出ればそれで十分です。

わたし自身のことを振り返ってみても、嫌々やっていた子役の仕事だったにもかかわらず、中学時代にいじめられていたときは、仕事に行くことで気が紛れていたのも事実なのです。

学校とは違う世界に入ることで、“違う自分”で生きることができる。そんなことが、子どもにとっては大きな“救い”になると思うのです。

大人の知恵で子どもたちが抱える心の痛みを軽減する

自分にとっての居場所があり、周りからも認められる存在でいられる。学校でいじめにあっている子は教室に自分の居場所がありません。クラスの誰にも認められていないことも多いでしょう。それは、子どもにとってあまりにつらい時間なんです。

家に居場所がある子どもは多いかもしれませんが、家だけではダメ。家は好きでも嫌いでも、そこにいなければいけない場所ですから、居場所という表現とはちょっと違ってくるからです。家と学校以外でどこかに、心が安らげる場所があることが大切なんです。『アヴァンセ』にも、「学校の友達とうまくいかなくて……」という理由で、親御さんが子どもを預けてくることがあります。「子役としての才能があると思うんです!」「子役にさせたいんです」と前のめりに攻めてくる親御さんよりも、「なんとかしてあげたいな」という気持ちが強くなります。

レッスン生を見ていても、学校でいじめられている子は心が閉じてしまっていることがほとんどです。わたしにできるのは、演技を通じてなんとか少しずつ心を開いてもらうこと。そして、レッスンに通うことを楽しみでいられるような気持ちになってもらうこと。それくらいしかできませんが、その子にとって心を開放できる場、安らぐ場となればいいなと思っています。

ただ、だからといって、学校でも心が開けるようになるかというとそれはまた違う。いくら外で開放されても、学校の状況が一変するわけではないからです。でも、それでいいと思っています。少しずつ前に進めれば上出来。日々の生活のなかで、自分が心から楽しいと思える居場所があることに意味があるんです。

いじめはむかしからちっとも減っていません。半永久的になくならないのかもしれません。ただ、大人の知恵で彼らが抱える心の痛みを軽減できればと思います。


※写真は2015年撮影のもの(c辰巳千恵)

※当コラムに関するお断り
この連載コラムは、2015年に刊行された坂上忍さんの著書『力を引き出すヒント~「9個のダメ出し、1個の褒め言葉」が効く!~』(東邦出版)を、当サイト向けに加筆修正をしたものです。

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