教育を考える/本・絵本 2018.6.3

絵本は「伝え方」が9割? 幼児・小学生への「年齢別」読み聞かせ方

景山聖子
絵本は「伝え方」が9割? 幼児・小学生への「年齢別」読み聞かせ方

こんにちは。life styleに「絵本の力」を取り入れ、楽に成果を出し、楽しい未来の選択ができるようになる方法をご提案している、絵本スタイリスト®景山聖子です。

私は以前、声優さんが多く所属するタレント事務所に在籍していました。小説の朗読や番組のナレーションなどを担当していたのですが、それまでは絵本にふれる機会があまりありませんでした。ですから、母親になり、我が子への読み聞かせに挑戦して、初めて絵本の素晴らしさに気づきました。

それからは、読み聞かせのすばらしさを一人でも多くの方へ伝えられたらと思い、(社)Japan絵本よみきかせ協会を設立し、タレント事務所から独立しました。

以前同じ事務所に所属していた当時の仲間たちも、最近、子どもを持つようになりました。時には互いに子どもの話をすることもあります。

さて、一児の父になった仲間の一人が先日、3歳の息子さんの幼稚園に、読み聞かせに行ったのだそうです。

ナレーターとして活躍している彼。まるでテレビのニュース番組のナレーションのように、それはそれは大きな、張りのある声で、絵本を読み上げました。一番遠くに座っている子にまでしっかりと聞こえるように……。

すると園児から、こんな声が挙がったのだそうです。

つまんな~~い!

さらに息子さんは、こう泣き出してしまったのだとか。

声がおおきくて、パパこわいよ~。いつものパパじゃない~!

子どものためにとびきり張りきって読み聞かせをしたのに、こんなことになってしまっては、パパもやりきれません。半分泣き声で「どうしてだろう?」と私に連絡をくれました。

そうなのです。実は子どもの年齢によって、効果的な読み方がまったく変わるのです。これは、小学5~6年生向けの読み方です。お子さんがもう少し大きくなっていたら、きっとじっくり聞き入ってくれたことでしょう。

絵本の読み聞かせにおいて、伝え方はとても重要になります。今回は、子どもが聞き入る読み聞かせ方を「年齢別」でお話しします。

幼い子どもにはコミュニケーションを重視し、感情を込めて

このような絵本の文章があるとしましょう。

くまさんは、ハチミツをこぼしてしまい、悲しい気持ちになりました。

2歳位の子どもにこれをサラッと読むと「なんで?」と聞かれます。なぜでしょうか。

この年頃のお子さんは、そもそもハチミツの味を知りません。そして「悲しい」という気持ちがどのようなものなのか、言葉を聞いただけではピンとこないのです。

ですから、年齢が低ければ低いほど、読み手の適切な感情をしっかりと入れて、全身で伝えることが必要になります。例えば、顔の表情や、声の抑揚や、時にはジェスチャーも含めると効果的でしょう。

すると聞き手である子どもは、読み手である大人の様子から、子どもなりにこう感じとるのです。

きっと、ハチミツっていうものは、すごくおいしいもので、下に落ちたものは食べてはいけないから、食べられなくなって、しょんぼりしちゃったんだ。

幼い子どもに対して、一方向で絵本のお話を伝えるのは難しいものです。では、読み聞かせを相互のコミュニーケーションの場にしてみたらどうでしょうか?

双方向のコミュニケーションを通じて、子どもたちのニコニコ笑顔を引き出せるようになります。そして感情を込めて読むことで、人の温もりと共に、お話の世界を存分に味わってくれるようになるでしょう。

幼児のお子さんには、ぜひこのように読み聞かせてあげてください。絵本にもよりますが、小学1~2年生のお子さんに対しても、基本的には読み手の自然な感情を入れるスタンスで読み聞かせをするといいでしょう。

素晴らしい絵本も「読み方」で絵の見え方まで変わってしまう

以前、このようなことが起こりました。『おなかのすくさんぽ』という、1992年に発表された片山健さんの名作絵本があります。

これは、どろんこになり遊んだり、洞窟探検をしたりと、土や水や動物たちと戯れる、子どものエネルギーに満ちた楽しい絵本です。

ところが、言葉は同じなのに、読み手が暗くテンションも低く、顔も無表情でつぶやくように絵本の文章を伝えたため、子どもたちの目には、絵がとても怖く映ったようです。

その結果、わくわくするはずの絵本が、動物たちに食べられそうになるホラー物語として伝わってしまったのです。話し方によって、絵の見え方まで変わってしまったのですね。

私はこの絵本が大好きだったので、とても残念に感じた記憶があります。同時に、絵本の言葉は同じでも、読み手の顔の表情や抑揚のつけ方で、絵の見え方まで変わることに驚きました。

パフォーマンス心理学で有名な、日本大学の佐藤綾子教授の研究に、驚くべきデータがあります。佐藤教授は、話し手のどんなコミュニケーションが、どれだけ聞き手に伝わるかという割合を示しました。

まず、話しかけてくる人のコミュニケーションを、以下の2つに分けます。

言語(言葉そのもの)vs. 非言語(顔の表情・周辺言語)

絵本の読み聞かせでいうと、この対比にあたります。

読み手が発する言葉そのもの vs. 読み手の大人の表情・声の抑揚・ジェスチャーなど

この割合は何対何だと思いますか?

実践女子大学研究室データによると、答えは、8% 対 92%です。

つまり、子どもに絵本の本来の良さを伝えられるか否かは、読み手の発する言葉そのものよりも、読み手の話し方にかかっているのです。

小学3〜6年生には、自分でお話の世界に入り込む手助けを

このように、絵本の読み聞かせにおいて「話し方」はとても重要な要素です。その味を濃くするか薄くするか、年齢に合わせて調整していくと良いでしょう。

濃くするとは、相互のコミュニケーションを重視し、表情豊かに、時にはジェスチャーも交えながら、感情を入れて読むこと。逆に薄くするとは、顔の表情や声の抑揚をつけずに、一方向で淡々と読むこと。

年齢が上がれば上がるほど、薄くすることが好まれます。小学校高学年になり、自分の知識や経験が増えると、他人の感情と共に聴くよりも、自分なりに味わって、自由に感じたり考えたりしたくなるのです。

以前、高齢者施設で音読のボランティアをさせていただいていた時のこと。92歳の男性が、ボランティアの女性に腹を立てていました。

音読をしてくれ! ただ、小説の文章を音にしてくれればいいんだ。

小説が大好きなその男性は、今では自分で文字を読むことが難しくなっていたようです。読み手の女性は、ご自身では音読をしているつもりでした。しかし実は、自分でも気づかないうちに、個人の感情が入ってしまっていたのです。

そこで私が交代し、音読をします。私はお仕事で、新幹線の券売機の声を担当することもあります。この場面では、その読み方とまったく同じように発声しました。

するとこの男性は、心地よさそうに聞きながら、ご自身の想像の世界に入られました。自分の解釈と異なる感情を込めて朗読されると、どうしても違いが気になり、自分だけの世界に入ってお話を楽しむことができなくなってしまうのだそうです。豊富な人生経験をお持ちだからでしょう。

子どもが幼ければ幼いほど、言葉を聞いて自ら意味を理解し、イメージできる内容は限られます。ですから、適切な感情を入れてあげて、目を見て、コミュニケーションを取りながら読み聞かせると喜びます。

一方、年齢が上がると、92歳の男性とまではいきませんが、だんだんその子ならではの経験と知識が増えていきます。それに伴い、自分から絵本の世界に入り、お話を自由に楽しむことを好むようになります。

そのため読み聞かせの際は、読み手個人の解釈が大きく反映されるのを防ぐため、「感情」を込める割合を少なくしていくと効果的です。

そこで小学3~4年生くらいから、だんだん感情を込めない読み方へと切り替えていくといいでしょう。この一工夫により、子どもの気持ちの反感や違和感がおさえられて、より聞き入ってくれるようになります。

さらに小学5~6年生のお子さんに対しては、顔の表情や声の抑揚の変化をさらにひかえ、ジェスチャーなどの大げさな表現も大幅に減らし、コミュニケーションも少なめにして読み聞かせることをおすすめします。

とはいえ、これらはあくまでも目安です。表現方法は、絵本によっても違いますし、聞くお子さんの絵本への興味の度合いによっても変わります。基本的な考え方の目安として捉えていただければと思います。

大人が絵本の絵を指さすと、子どもの楽しみを奪ってしまう

読み聞かせ方において誤解が多いのが、絵本の絵を指さすこと。赤ちゃんは例外ですが、子どもが3歳位になっても、ストーリーのあるお話の途中で、絵を指さしながらこう読む人がいます。

わかる? これ!

指さしは、絵を見て自分で捜す喜びを、子どもから奪ってしまいます。読み聞かせの際は、絵を指さないように気をつけましょう。

子どもが大好きな、こちらの絵本。どちらも、最後に「あっ!」と思わせる、小さな絵があります。

大人はつい見過ごしてしまうような、細かな描写。しかし子どもは、ページをめくった途端に自ら気づくのです。

子どもの感性は、大人のものとは違います。年齢に合わせて読み方を変えると同時に、絵本の絵を指すのもやめて、心地良い絵本の時間を与えてあげましょう。

お話の内容や場面に合わせ、臨機応変に対応して

冒頭のナレーター仲間のパパの後日談です。「リベンジ」のため、日を改めて再度読み聞かせに行くことにしたそうです。その前に、私のところへ確認の電話をくれました。

でも、今度はなんと、芥川龍之介の「杜子春」を読み聞かせるというのです。

「感動するいい話だから」選んだのだとか。そして話し方についても、こう息巻いています。

今度は、目を見てコミュニケーションをとり、小さな声で優しく話す!

みなさんはこのお話を知っていますか? ご存知ない方のために、あらすじを簡単にご紹介しましょう。

明日を生きるにも食べ物一つなくて途方に暮れていた青年が、仙人に出会います。仙人の魔術で一夜にして億万長者になり、人間の本質を垣間見ることになります。最後には魔術で死の世界へ行き、えんま大王の前で、亡くなった両親と対面します。そこで両親の変わらぬ無償の愛に再びふれ、本当に大切にするべきことに気づくのです。

さて、このお話を3歳児に向けて、感情を込めて読み聞かせたらどうなるでしょうか?

小さな優しい声で、コミュニケーションとりながらその話をされたら、余計に怖いから! 最後、えんま大王も出てくるし、お話も怖すぎて全員泣くと思う……。

私がこう話すと「また息子に泣かれるのか……」と愕然としていました。親の一人として、事前にお電話をいただいてよかったと心から感じました。

前回は目的別の読み方を、そして今回は年齢別の読み方をお話ししました。でも、お話の内容や場面に応じて、最善の読み聞かせ方は少しずつ変わるもの。変化を楽しみながら、臨機応変に読み聞かせてあげてくださいね。

そんなことで来週は「絵本よみきかせコーチング」シーズン1の最終回となります。次回は、年齢別の絵本の選び方についてお話させていただけたらと思います。

(参考)
佐藤綾子(1994),「日本人の好意の総計」,実践女子大学研究室.
ジョン・バーニンガム 著, 谷川 俊太郎 訳(1995),『コートニー』,ほるぷ出版.
長谷川 摂子 作, ふりや なな 絵(1990),『めっきらもっきら どおんどん』,福音館書店.
芥川龍之介 作, 藤川秀之 絵(2003),『杜子春』,新世研.
片山健(1992),「おなかのすくさんぽ」,福音館書店.