2018.5.12

「好きこそ物の上手なれ」。絵本タイムの安心感と”潜在的親近感”で、受験国語も楽々クリア!

景山聖子
「好きこそ物の上手なれ」。絵本タイムの安心感と”潜在的親近感”で、受験国語も楽々クリア!

こんにちは。life styleに「絵本の力」を取り入れ、楽に成果を出し、楽しい未来の選択ができるようになる方法をご提案している、絵本スタイリスト®景山聖子です。

こんなことわざがあります。

好きこそ物の上手なれ

好きなことであれば、誰に強いられずとも、自ら意欲的に取り組むことができますね。モチベーションを保ちながら努力し続けられるので、自然に上達するものです。

10年以上、絵本スタイリスト®として読み聞かせに深く関わってきた私は、今まで様々なタイプのお母さん方に出逢いました。その中で、私なりに発見したことがあります。

それは「教育効果があるから」という理由で読み聞かせをする親御さんと、「親子で楽しむ幸せな時間だから」という理由で読み聞かせをする親御さんがいること。そして、両者のお子さんの、国語への興味の度合いが、大きく異なること。

親子で絵本を読む習慣は同じなのに、後者の子どものほうが、だんぜん国語好きになります。そのため、受験国語の得点率も高いのです。

もちろん、私の経験から導き出した傾向なので、対象は2000人程度の親子に留まります。しかし深く調べていくと、実はこの違いは、きちんとした心理学的知見を踏まえた結果であるようです。

今回は、過度の教育意識が読み聞かせにおいて「逆効果」となる理由を紐解いていきます。併せて、幼少期からの絵本タイムによって国語が大好きになり、中学受験国語でも高得点を出す子どもたちのお話をします。

好きこそ受験の勝者なり

絵本によって「国語好き」になったお子さんは、受験でも奇跡を起こすことでしょう。

ある「パーテーション親子」の話

10年以上前、教育熱心な家庭が多いと言われている地域で、お茶をしていたときのこと。隣の席では、地元のママ二人が、おしゃべりに花を咲かせています。

うちの子、国語の勉強しないのよ。文を読んでいる途中で、すぐに窓の外の景色を見て。今年は受験生なのに、本当に腹がたって。勉強に集中するように、パーテーションで囲っちゃったわ!

どうやら、小学6年生の男の子のママである様子。

小さな子どもがパーテーションで囲われ、勉強を強制されている光景を想像すると、胸が痛みました。そして、思わず二人の話に聞き耳を立てました。

するとそのご家庭では、3歳の頃から語彙を増やし、読解力をつけるために、絵本や児童書の読み聞かせをしていたようなのです。

職業柄、「読み聞かせ」と聞くと、どうしても気になってしまう私。ますます耳をそばだてると、驚くべきことが判明しました。

なんとそのママは、読み聞かせが終わると、その絵本の語彙を紙に書き出し、子どもがきちんと覚えているか、厳しくテストをしていたのだとか。さらに、絵本に関して何を感じたか、子どもに感想を言わせていたそうです。

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子どもに絵本の感想を聞くのはタブー?

この子にとって「文章」とは、感想を常に聞かれることなのです。ますます放っておけなくなります。幼児に絵本の感想を聞くのはタブーです。

子どもは、絵本の読み聞かせを通して「感受性」という心の部分を育てています。そして絵本を閉じた後も、お話をもとに一人で想像して、感受性をさらに高めていきます。

しかし、感想を求められた途端、言語能力を発揮する作業に切り替えなくてはなりません。感受性が豊かにふくらみきる前に、不十分なところで、想像力の広がりに蓋をすることになるのです。

さらに幼児は、まだ言語能力が乏しいもの。そこで、たとえ感じたことがたくさんあったとしても、それをどのような言葉にしてよいのかわかりません。そのため、混乱が生じてしまいます。

その上、緊張感が漂う、語彙の「テスト」。これでは、絵本の時間の本来の楽しさが、自分の力を試されるというプレッシャーで台無しです。想像力を育む機会を奪われているだけでなく、母親からの過度な要求のもと、緊張感の高まりにも対処しなければなりません。

そしてストレスを抱えた結果、集中して文章を読むことができず、気が散ってつい、窓の外に視線をやりがちな子どもになったのでしょう。このように紐解いてゆくと、実は当たり前のことなのです。

うちの子は、なぜ勉強が嫌いなの? なぜ勉強に集中できないの?

こう疑問に思っている親御さんもいるかもしれません。しかし、その「なぜ?」には、実はしっかりとした理由があるのです。

子どもは本来、勉強が好き

わたしおべんきょうするの

おべんきょうが大好きな女の子が、この絵本の主人公。ひらがなの「お」を鏡文字のように書きながらも、「好き」という気持ちを育んでいきます。

このお話のように、もともと子どもは学ぶことが大好き。「知るって嬉しい」「学ぶって楽しい」と思うものなのです。

私自身、多くの子どもに読み聞かせをしていると、お話を読むのも、勉強をするのも、本来は子どもにとってわくわくすることなのだと実感します。

科学絵本を読み聞かせるときも、勉強を意識せず、楽しく、こう伝えています。

不思議だね~、面白いね~!

すると子どもは、ますます目を輝かせるのです。

教育意識を捨て、知る喜びを味わおう

母親の過度な教育意識と勉強への強制があると、子どもは国語を嫌いになってしまうかもしれません。一方で、教育意識を捨て、純粋に知る「喜び」を子どもと一緒に分かち合うことができれば、その子の学力は大きく伸びていくようです。

今まで、読み聞かせの活動に加え、息子の中学受験を通して、多くのお母さんに出会いました。その中で特に、超難関中学へ進学した子どものお母さんは、国語という「教科」と絵本タイムで感じた「楽しさ」を上手にイコールで結びつけていました。

文章・国語 =読み聞かせの「安心感」・ 知る「喜び」・学ぶ「楽しさ」

幼少期からの絵本タイムを、母親からの安心感を感じられる、親子の「幸せな時間」にする。子どもがリラックスしながらも、文章に対して喜びや楽しさを見出す土台を築く。

親御さんがこんな姿勢を貫いたからこそ、文章読解をするとき、落ち着いて長文と向き合える子どもが育ったのです。結果として、難解な受験国語も突破できたのでしょう。

「文章=難しい」「国語=わからない」ではなく、「文章=発見の喜び」「国語=安心感」と結びつけてあげる。そんなふうに子どもを導いてあげるのも、親の大事な役目なのかもしれません。

読み聞かせを楽しみながら、確実に語彙力をつける一工夫

まずは、過度な教育意識を捨てることから始めましょう。そして、親子で読み聞かせを「純粋に」楽しんでみてください。

さらに、読み聞かせ後に語彙をチェックするなら、緊張感が漂う厳しい場にせず、子どもが楽しめる方法で行うことをおすすめします。例えば私の場合は、絵本を読み終えてから、ゲーム形式でやっていました。

息子は台所のサラダボールを手にし、私は新聞紙を丸めて持ちます。不正解なら丸めた新聞紙で、息子の頭を軽くポン! 息子は防御策として、サラダボールで頭を覆います。正解なら、息子の大きなガッツポーズ!

この語彙ゲームが楽しかったようで、「今日はこの絵本」と自分から持ってくるようになりました。

絵本よみきかせコーチング第10回2

「なんとなく好き」という潜在的親近感のメカニズム

最近テレビでも活躍なさっている、脳研究者の池谷裕二教授。幼い2人のお嬢さんを持ち、絵本の読み聞かせの時間を大切にされているパパの一人です。

著書『パパは脳研究者』の「絵本の記憶」という項目で、このように記しています。

黄色い車のおもちゃを見せる実験です。赤ちゃんがたまたまおもちゃに近寄ったら、甘いミルクを口に含ませます。(中略)これは「快の転移」と呼ばれる現象です。本来、黄色い車そのものに価値はなかったはずですが、ミルクという快信号が引き金となって、黄色い車への好意が生まれます。

(引用:池谷裕二(2017),『パパは脳研究者』,クレヨンハウス.)

快の転移による好意は、「ただなんとなく好き」という潜在的親近性になります。そしてこれは、大人になっても、その人の好みに影響を与えるそうです。

幼い頃にふれる絵本は「潜在的親近性の結晶とも言える」と、池谷教授は記しています。幼少期からの読み聞かせにより、子どもは絵本そのものに対して、潜在的親近性を持つようになります。

そして絵本は、国語のもとである「文章」との、最初の出会いの場です。つまり子どもは、絵本の読み聞かせの楽しい経験によって、文章そのものに対しても、好意を抱くようになるのです。

その結果、こんなふうに感じる子どもたちが育つようです。

  • 私、なんとなく国語が好き
  • 僕、なんとなく文章読解ができちゃうんだ

 
子どものそんな「好き」「得意」の根本には、潜在的親近性のメカニズムが隠れていたのですね。

では、もしパーテーションで囲い、子どもに国語の勉強を強制したら、どうなるでしょうか? 皆さん、もう答えはおわかりですね。

「=」で結ぶ先を変えることで得られる幸せな未来

私たち親は、常に我が子の幸せを願っています。子どもを愛しているのです。時にはその愛の強さゆえ、知らぬ間に、子どもを悲しませてしまうこともあるかもしれません。

親の思いとは裏腹に、子どもの幸せを奪ってしまうことは、なんとしても避けたいですよね。そのためには、潜在的親近性のメカニズムを知り、過度な教育意識を変えることが重要です。

「子どもを愛せない」ことに悩み、私の絵本の講座へやってくる母親は、しつけを徹底し、高い教育を施すことが、我が子の幸せにつながると思っていました。

「子ども=母親の私が、正しい方向へ導いてあげなくてはいけない存在」だと考えていたのです。しかし、このように見方を変えたところ、この親子に大きな変化が訪れました。

子ども=楽しんで、親子としての幸せを、共に目指す存在

なんと、今までの悩みが解消し、我が子が愛おしくてたまらなくなったのです。そしてお子さんも、進んで勉強するようになりました。

そしてこの変化は、冒頭でお話しした「パーテーション親子」にも重なります。時々お節介になる私は、絵本の読み聞かせの話が聞き捨てならず、ついには喫茶店で声をかけたのでした。

「親が子どもに我慢させること」と「子どもが自分から我慢すること」には、大きな違いがあります。さらに「子どもが我慢しながらすること」と「子どもが楽しくてすること」には、そのパワーに雲泥の差が生まれます。

パーテーションを外し、親子で楽しむことへと方向性を大きく変えたこのご家庭は、その後大きな変貌を遂げました。親子の幸せな思い出を作りながら、希望する超難関校への受験を突破したのです。

もともと国語もママもどうしても好きになれなかった子でしたが、最後の半年で巻き返し、苦手だった国語の成績が急上昇したのだとか。さらに、合格発表の掲示板の前で「ママ、ありがとう!」と、満面の笑顔で抱きついてきたそうです。

そして現在、この子は大学生。親子で一緒に決めた目標を達成し、海外の大学へと進学しています。

  • 国語=読み聞かせの「安心感」
  • 文章=絵本の「楽しさ」

 
このように「=」で結ぶ先を少しだけ変えるだけで、将来大きな違いが生まれます。お子さんが望む結果を出しながら、幸せな親子関係を実現することができるでしょう。

(参考)
池谷裕二(2017),『パパは脳研究者』,クレヨンハウス.
角野栄子 作, 吉田尚令 絵(2017),『わたしべんきょうするの』,文渓堂.