教育を考える/本・絵本 2018.3.24

「ミラーリング効果」で極上の絵本タイムを。家族全員が幸せになる読み聞かせの魔法

景山聖子
「ミラーリング効果」で極上の絵本タイムを。家族全員が幸せになる読み聞かせの魔法

こんにちは。life styleに「絵本の力」を取り入れ、楽に成果を出し、楽しい未来の選択ができるようになる方法をご提案している、絵本スタイリスト®景山聖子です。

絵本は、まだ字が読めない「子どものためのもの」という認識の方が多いようです。しかし最近では「大人向け」の絵本にも注目が集まっています。子どもを交えない大人同士のお話会も頻繁に行われるようになりました。

絵本は一見、お子さんへ書かれたもののように思えるかもしれません。でも実は、親御さんに向けて書かれた絵本も存在します。いつも家族のため、子どものためと、自分を二の次にしてしまうママやパパ。

そんな親御さんが子どものために絵本を読み聞かせるだけで、なぜか自分自身が癒される。読んでいるうちに心がすっきりする。そして子どもも絵本タイムを楽しんでくれるようになり、親子の関係までよくなる

今回はそんな、子どももママやパパも元気になれる「ある心理学的手法を用いた絵本の選び方・読み聞かせ方」のお話です。

「同じ!」と思える絵本で心が軽くなる

「だめよ、デイビッド!」から始まる人気シリーズをご存知でしょうか。1作目ではまだ幼児だったデイビッド。2作目以降は小学生になりますが、いたずらっ子であることは変わりません。

そして3作目「デイビッドがやっちゃった!」では、また新たなことでママに叱られる日常のシーンが次々に登場します。

ママ・パパは「うちの子と同じ!」と、育児で頭を抱えているのは自分だけではないと安心して、大笑い。子どもも、主人公の行動を見て「おなじ!おなじ!」と大喜び。

親子で爆笑できると大反響の絵本です。そして読後、なぜか読み聞かせをした親御さん自身の疲れがとれてすっきりしたという声が多く挙がっています。

作者からのこんな一言も、親御さんの本心と重なります。

ママがデイビッドに「だめよ」とおこごとを言うのは、危ない目にあわないか心配したり、立派な大人になって欲しいと願っているから。だから、ママのことばの本当の意味は「愛してる」ということだし、言い訳しているデイビッドが本当に言いたいのは、「ぼく、しっぱいしたくないんだ」ということだろうね。

(引用:デイビッド・シャノン(2004),「デイビッドがやっちゃった!」,評論社.)

絵本の内容だけでなく作者の言葉まで、まさに「同じ!」と共感できる絵本なのです。

「ミラーリング」というコミュニケーション手法

さて、この「同じ!」という気持ち。「ミラーリング」というコミュニケーション手法にあたります。

ミラーとは、鏡のこと。鏡のように、相手の仕草・表情・言葉・行動を写しまねるコミュニケーションです。

ミラーリングは、双方の心理的距離を縮め、親近感を増すのに役立ちます。さらに「同じ!」という想いは共感を呼び寄せます。そしてお互いの「共感的理解」に発展します。

社会心理学者の渋谷昌三博士は「共感的理解」のその先に起こることについて、こう言っています。

答えを教えるのではなく、答えを見つけさせることでカウンセラーはクライエント(患者)の心を回復させる

(引用:渋谷昌三(2009),「面白いほどよくわかる!心理学の本」,西東社.)

共感的理解によって、相手にただ答えを提示するのではなく、自ら答えを見つけさせることができます。その結果、相手の心を回復させる力があるというのです。

絵本「デイビッドがやっちゃった!」は、子どもの行動を鏡のように、そっくりそのまま紙面上に投影します。そしてミラーリング効果により共感的理解を生み出します。

結果として、親自身が「本当はどう子どもに接していくべきなのか」の答えを自分で見つけることができるのです。だから読後、胸のつかえが取れ、気持ちが楽になるのですね。

アメリカの心理学者カール・ロジャーズは、心理カウンセラーの条件の一つに「共感的理解力」を挙げています。

「同じ!」という感覚をもたらす絵本は、優秀な心理カウンセラーとの対話に値するのかもしれません。

子供が飽きずに読み聞かせに熱中するようになる一工夫

ミラーリングの手法は、親子の絵本タイムでも使えます。

一生懸命読み聞かせをしても、子どもがすぐに飽きていなくなってしまうことに悩んでいた3歳児のママに、 次のように試していただきました。

子どもが少しだけ体を乗りだしたら、親も同じように体を少し乗り出す。子どもが「ふふふ」と密かに笑っていたら、親も口元に微かに笑みを浮かべる。子どもが絵を指さしたら、親も同じところを指さしてみる。子どもが「おもしろいね」と言ったら、親も「おもしろいね」と同じ言葉を繰り返す。

子どもと全く同じことをする。たったこれだけのことですが、これにより子どもが感じる「同じ!」の感覚は、共感を生みます。

そして、共感から得られる共感的理解により、子どもは「ママにわかってもらえている」という安心感を得るのです。

すると子どもはさらに心を開いてくれることでしょう。

そして「絵本の内容が楽しいから」だけではなく「こんなママのそばにずっといたいから」こそ、親子の読み聞かせタイムに熱中してくれるようになります。

読み聞かせ時の少しの工夫で大きな効果を得られる、おすすめの方法です。

「共感的理解」を生む絵本で、家族の幸せを引き寄せる

このように親子の共感的理解を生む絵本から、「こんな親になりたい」という理想のママ・パパ像を描いている絵本もあります。

5歳の女の子のママ、Uさんはある日、いつも優しくて穏やかに子どもに接する母親の絵本を読んで「私はこんなママにはなれない!」と号泣し始めました。

でも、この一言で泣き止みます。

こんなママになりたい、ということなのですね。

理想と現実とのギャップに悩んでしまうのは、理想的な親になりたいと強く思っているからこそ。

そう、Uさんも、本当は優しいママになりたいのです。ただ今は、それができていないだけ。

「子どものために、素敵なママやパパになりたい」。こう思うのはすばらしいこと。でも、ストイックに理想を追い求めるばかりにふさぎ込んでしまっては、かえって子どものためになりませんし、子育てがつらくなってしまいます。

それよりも、今感じているジレンマと重ね合わせ、「同じ!」と思える絵本を手にとってみてください。

「怖いママ」「ドジなパパ」「何もできないママ」「厳しいパパ」など、ある意味親近感がわく親の姿が表現された絵本がたくさんあります。

共感できる絵本から恩恵を受けられるのは、ママやパパだけではありません。子どもにも良い影響を及ぼします。

なぜなら、親自身の「気づき」によって、親子関係に根本的な変化が起きる可能性が高いから。これが、心理学的知見を踏まえた、絵本の効果的な使い方の一つです。

・理想像が描かれた絵本よりも、共感的理解を生む絵本
・「こうはなれない……」と落ち込むよりも、「まさにこの通り!」と思わず笑みがこぼれる絵本

この基準で絵本を選んでみてください。心のモヤモヤが解消し、晴れやかな気持ちになるはずです。

さらには、こんな「親子のあり方もいいな」と新たな気づきを得られることもあります。

固定観念にとらわれず、あなたが本当に望んでいる「オリジナルの親子像」を見つけてみませんか?

「共感的理解」を生む参考絵本

■5歳~
板橋雅弘 作, 吉田尚令 絵(2011),「パパのしごとはわるものです」,岩崎書店.

のぶみ(2017),「このママにきーめた!」,サンマーク出版.

■7歳~
原田剛 作, 筒井則行 絵(2014),「小学生のボクは鬼のようなお母さんにナスビを売らされました」,ワイヤーオレンジ.

(参考)
渋谷昌三(2009),「面白いほどよくわかる!心理学の本」,西東社.
デイビッド・シャノン(2004),「デイビッドがやっちゃった!」,評論社.
板橋雅弘 作, 吉田尚令 絵(2011),「パパのしごとはわるものです」,岩崎書店.
のぶみ(2017),「このママにきーめた!」サンマーク出版.
原田剛 作, 筒井則行 絵(2014),「小学生のボクは鬼のようなお母さんにナスビを売らされました」,ワイヤーオレンジ.