あたまを使う/サイエンス 2018.2.28

科学への夢を失わないために。ノーベル賞受賞者たちが送る “子どもたちへの言葉”

編集部
科学への夢を失わないために。ノーベル賞受賞者たちが送る “子どもたちへの言葉”

いちど苦手意識を持ってしまうと「好き」「得意」という感情を取り戻すことが難しいのが、算数や理科です。逆にいえば、理数科目への興味はそのまま勉強への意欲につながり、学ぶことが大好きな子どもへと成長していきます。では、小さなうちから理数への興味を抱かせるにはどうすればいいのでしょうか?

今回は、科学の世界で高い業績を上げたノーベル賞受賞者たちの言葉から、そのヒントを探ります。

子どもの「理数離れ」ってホント?

文部科学省は、国際教育到達度評価学会(IEA)が実施した「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)」の結果を公表しています。各国の子どもたちの理数科目の到達度や学習環境について詳しく調査することを目的に、小学生については50の国と地域(およそ27万人)、中学生については40の国と地域(およそ25万人)を対象に行なわれました。

それによれば、算数・数学を楽しいと答えた日本の小学生の割合は、2015年時点で75%。国際平均が85%ですから、それを少し下回っていることになりますね。さらに中学生に至っては、国際平均が71%であったのに対し、日本の場合は52%。大きく差がひらく結果となりました。

一方で理科について見てみると、日本の場合は90%もの子どもが「理科は楽しい」と答えました。なんとこれは、国際平均の87%を上回っています。ただし中学生の場合は、国際平均81%に対し日本は66%。平均を大きく下回る結果となりました。

学習内容が難しくなってくる中学校で「楽しい」と答える人の割合が急減していることは少々気になりますが、小学生に限定すれば、私たちが想像している以上に、算数や理科に楽しさを感じてくれている子どもたちは多いようです。

さらに特筆すべきは、2003年時の調査から「楽しい」と答える人が上昇傾向にあることです(算数の場合は65%→75%、理科の場合は81%→90%でした。中学生でも同様の傾向が見られます)。子どもたちの理数離れが取りざたされている昨今ですが、十数年前に比べれば、理数好きの小学生の割合は増えてきているのですね。

ノーベル賞受賞のニュースで引き出される “科学への夢”

理数科目に楽しさを感じる小学生が増えてきている理由について、上記の調査結果内では特に言及されていないようです。しかし、文部科学省の科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)が発表したレポートでは、日本人のノーベル賞受賞のニュースをきっかけに、理数に興味関心を抱く子どもが増えたことが報告されています。

この調査結果が発表されたのは2016年。2015年秋、ニュートリノに質量があることを示唆する現象「ニュートリノ振動」を発見した梶田隆章さんにノーベル物理学賞が、寄生虫に対する薬剤「イベルメクチン」を開発した大村智さんにノーベル医学・生理学賞が授与されることが決定した直後に、小学生・中学生・高校生の子ども約3,000人とその保護者を対象に、理数や科学に関する意識調査を行ないました。

その結果、受賞決定のニュースを機に「理科や科学に対する興味関心が高まった」「研究者の仕事に対して興味関心を持つようになった」と回答した子供の数が増加したことが明らかに。「理科の勉強を一生懸命やるようになった」「理科や科学に関連する本や雑誌を読むようになった」など、実際の行動変化も見られたそうです。

思えば2000年以降、日本人ならびに日本出身者の自然科学分野でのノーベル賞受賞者の数は急増しています。その数じつに17人。1999年以前は5人しかいなかったことを考えると、とんでもない数ですね。21世紀以降に限定すれば、自然科学賞部門の国別の受賞者数で、アメリカに次ぐ世界第2位を誇っています。

理数に関する情報をしっかりと与えてあげれば、それに対して強い興味関心を抱くポテンシャルを、子どもたちは秘めています。科学のすごさや魅力に気づかせてあげられれば、学校の算数や理科の授業に熱心に取り組む子どもは増えるでしょうし、ノーベル賞受賞ニュースなどがきっかけとなって「研究者」という職業がフィーチャーされれば、将来の職業の選択肢を広げるきっかけにもなり得ます。そしてそれがまた、理数分野の学習への意欲にもつながっていくのかもしれません。

ノーベル賞受賞者が語る “子どもたちへの言葉”

未来のノーベル賞受賞者を育てるための教育はどうあるべきか。この問いに対する受賞者本人たちの答えを探ると、ある共通項が見えてきます。

2000年にノーベル化学賞を受賞した白川英樹さんは、子ども時代に大切なことについて以下を挙げています。

「自然に親しみ、本物を見て、自然の不思議と遊ぶこと。」

(引用元:JADEC|ノーベル賞受賞者たちが大切だと思っていること(PDF)

白川氏は、子ども時代は特に秀才だったというわけではなく、野山を走り回ったり川で泳いだりして遊んでいたのだそう。そこでのさまざまな発見や疑問が、理科への興味につながっていったのだと言います。

また、2008年にノーベル化学賞を受賞した下村脩さんは、子育てに励む親に向けて、朝日新聞の取材で次のように語っています。

「子どもにはどんどん興味をつのらせてあげなさい。興味があるうちにやらせなさい。そして子どもがやり始めたらやめさせてはだめです。」

(引用元:朝日新聞デジタル|「やり始めたら、やめたらダメよ」下村さん、子たちへ

私たちの身近な場所には、算数や理科にまつわるさまざまな物・現象があります。空を見上げれば太陽や月や星などが天をまわっていますし、空に浮かぶ雲だって、もともとは水からできているもの。山や海や川に行けばいろいろな生き物が暮らしていますし、お店で買い物をするときだって算数の知識が使われています。壁にかかっている時計やカレンダーなども、算数という存在に気づかせる立派な教材になりますよね。

こういった、算数や理科に関する方向へと子どもたちの意識が向くように、日ごろの過ごし方や会話の仕方などをちょっと工夫するのが大切なのかもしれませんね。

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最後に、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんの講演での言葉を紹介して、この記事をしめましょう。

「本当に自分が興味をもち、心から面白いと思えるものなら、困難にぶつかっても、あきらめないで続けられる。本気で取り組める。その分、自然と道も開けていくものだ。」

(引用元:JADEC|ノーベル賞受賞者たちが大切だと思っていること(PDF)

(参考)
文部科学省|国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)のポイント(PDF)
科学技術・学術政策研究所|ノーベル賞が引き出す子供たちの科学への夢
Hyper-Kamiokande|ニュートリノとニュートリノ振動
京都大学|ノーベル賞
JADEC|ノーベル賞受賞者たちが大切だと思っていること(PDF)
朝日新聞デジタル|「やり始めたら、やめたらダメよ」下村さん、子たちへ