音楽をたのしむ/ピアノ 2018.3.9

空想力も表現力も! ピアノで “心が育つ” 理由とは?

滝澤香織
空想力も表現力も! ピアノで “心が育つ” 理由とは?

前回のコラム「ピアノは “脳を育ててくれる” 楽器である。」では、ピアノを習うことによる、子どもたちへの「脳の発達に与える影響」について詳しくお伝えいたしました。

今回は、「心の発達」にポイントを置いて説明いたします。

空想力が育まれる

これは芸術系の習い事の共通点でもありますが、ピアノは子どもたちの感性をより豊かなものへと導いてくれます。

幼少期の子どもたちは、まるでスポンジのように、じつにさまざまなことを吸収していきます。それを外へ引き出す機会をしっかりと与えてあげることで、空想力を大きく伸ばしてあげることができるのです。

曲の世界は「物語」のようになっています。そのお話がどのようなストーリーなのかを紹介する “提示部”、お話がドラマティックに展開していく “展開部”、お話に落ち着きを持たせるための “再現部”、そしてお話のまとめとなる “結尾部” です。

特に、小さなうちに習う曲の大半は歌詞がついています。子どもたちにもわかる世界観の歌詞を掘り下げた指導をしていくことで、子どもたちの空想力はさらに伸びていきます。

そしてもっと学習が進むと、バレエ音楽やオペラなどにも触れ始めます。これらの多くは、もともと「お話」が先にあったうえでつくられたもの。したがって、曲の「物語性」にも富んでおり、楽曲自体も長くなっています。こうした物語の世界観にふれることで、子どもたちの空想力はよりパワーアップし、イメージの世界もどんどん広がっていくのです。

この時期の「何かになりきる思考」を生かす

ある時期になると、子どもたちは「まわりのものすべてが自分と同じように物事を感じ、意思を持っている」と考え始めます。これは児童心理学では「アニミズム」と呼ばれており、おおむね2~4歳の時期におとずれ、思春期まで続くと言われています。

この時期の子どもたちは、自己と他との区別ができません。つまり、「自分のまわりのものすべてが、自分と同じように意識や意思を持っている」「人間を取り巻くいろいろなものが、人間と同じように生きていて、生命がある」ととらえるのです。そのため、物事を相互に比較判断できなかったり、現実と非現実との区別がつかなかったりします。

ですから、空想力を高めるためのアプローチとして、この時期の「何かになりきる思考」を生かしてあげるのはいかがでしょうか? 先に説明したように、ピアノの楽曲はストーリーを持っています。音楽それ自体の物語に思いを馳せたり、音楽の背後にひそむスト―リーをイメージしたりしてみる。こういった経験を繰り返すことで、子どもたちの空想力はより豊かになっていきますよ。

表現力を育むこと=自己解放できるものを持たせること

ピアノを学ぶすばらしさのひとつに「表現力が磨かれる」ことがあります。自分で考え、感じたことを、自由に表現できる力がある。これは、長い生涯を生きていくうえで最も大切なことのひとつではないでしょうか。

思ったことすべてを言葉にして発信してしまっては、時には人を傷つけてしまうことにもなりかねません。しかし、ピアノを学び “表現できるもの” を持つことは、すなわち言葉以外で感情を表現する方法を手に入れられたことにもなります

言葉のボキャブラリーがまだ少ない子どもたちにとって、幼稚園や小学校で感じたさまざまな感情を言葉にすることは、大人が感じるよりもずっと難しいものです。ですが楽器を通してなら、喜びも悲しみもワクワクやイライラも、どんな感情でも思う存分表現することができますよね。

ネガティブな感情を上手に発散させてあげることは、健やかな精神を保ち、のびのびとした子どもに育てるためにはとても重要です。さまざまな感情を発散し、自己解放できるものがそばにあること。幼児期や児童期の子どもたちの成長過程において、大切にしなければならないことです。

心の成長のための「理想の教育」とは?

子どもたちを感受性豊かに育ててあげるために大切なことは何だとお感じになりますか? それは、心が動く経験をさせてあげることです。

感受性が豊かかどうかは、先天的なものではありません。音楽を聴いて奏でることで、心が高揚し、感激し、時には不安感を覚える。こういった経験を重ねることで、心が受ける感覚はめきめきと成長し、感受性は豊かに育っていきます。

また、音楽を学ぶということは「細かな変化を感じ取る」ことにも通じます。表現力豊かな演奏をするに至るまでには、作曲者の細かなこだわりを探せるよう、楽譜の読み取り方を学んでいきます。強弱の変化、モティーフがつくられるなかでの結尾の変化、和音(和声)の流れの変化。これらを読み取るトレーニングを重ねることで、自分から「微細な変化を読み取る」習慣が育っていくのです。

そしてこれは、日常生活にも良い影響をもたらします。草花の成長や季節の変化などの小さな変化に目を向け、耳を傾ける習慣が身についてきますし、他者の心に目を向け、心を砕く気持ちを育むことにもつながっていきます。

ピアノを学ぶこと=情操教育と言われますが、子どもたちの健やかな心を育て、感受性を豊かにし、思いやりの心を育てるうえで、とてもすばらしい力を持っているものが、まさにピアノなのです