からだを動かす/ダンス 2018.3.21

「楽しい」から「勝ちたい」へ。“競う”ダンスが子どもの自信と向上心を引き出す!

編集部
「楽しい」から「勝ちたい」へ。“競う”ダンスが子どもの自信と向上心を引き出す!

自分の子どもにはできるだけ苦労させたくない……親ならばそう願って当たり前ですよね。我が子の苦しむ姿や悲しむ姿を見ると、自分までも辛い気持ちになってしまうものです。しかし、あまりにも子どもから困難を遠ざけてしまうと、いずれ成長して大人になったときに自分の力で困難を克服できなくなってしまいます。

今回は、ダンスを通して「人と競い合う経験」が子どもにとっていかに重要であるかを考えていきます。

個性的って悪いこと? 目立ちたくない子どもたち

最近の子どもたちはおとなしい、空気を読む力に長けている、という印象を持っている大人も多いのではないでしょうか。もちろん中には、周りのことなど一切気にせずに好き勝手に行動する子どももたくさんいます。しかし、小学校に入学して学年が上がるにつれて、お友だちのグループから外れるようなことや、ひとりだけ目立つようなことを避けるようになっていく傾向が強くなります。

それはなぜでしょう?
『友だち地獄ー「空気を読む」世代のサバイバル』や『キャラ化する/される子どもたちー排除型社会における新たな人間像』などの著書で知られる社会学者・土井隆義教授は「いまの若者たちにとって“個性的”とは否定の言葉である」と述べます。

土井氏によると、がつがつとしたハングリーな生き方を「意識高い系」や「ガチ勢」と呼んで揶揄する昨今の傾向は、決して斜に構えた態度が格好良く見えるからではないとのこと。むしろ、ひとりだけが頑張って周囲から浮いてしまうと、コミュニケーション能力の欠如した空気が読めない人物だと認識されることを危惧しているからこそ、個性的であることを否定してしまうのです。

私たちのような親世代でも、少数派になることを恐れて「空気を読む」ことで自分の個性を抑え込んでしまうことがあるはずです。今は世の中全体でそのような傾向が強まっているのかもしれませんね。

しかし、もしみなさんのお子さんが、大勢のライバルたちと競い合って勝利をつかむことや、それによってステージで脚光を浴びる世界に興味を持ったらどうしますか?

上を目指す子どもだけが手に入れられるものとは

今やキッズダンスの世界において、より高いレベルを目指そうと思えば可能性が無限に広がる時代となりました。

最初のうちは仲間と一緒にリズムに合わせて楽しく踊るだけだったとしても、真剣にダンスに取り組むほどに「あの子には負けたくない」「チームで一番上手になりたい」「コンテストで優勝したい」「日本一になりたい」「世界を目指したい」……とその目標はより高く、大きくなっていきます。もちろん親としても、我が子には大きな夢を抱いてほしいと願いますよね。

2013年から始まり、今年で6回目を迎える朝日新聞主催の「全日本小中学生ダンスコンクール」は、小中学校の学級単位でも参加できるということもあり、年々参加チームが増え続けています。学校で習うだけのダンスから、仲間と一緒にコンクールに出て「競う」ダンスへと徐々に変わっていくことで、子どもたちのダンスに対するモチベーションは確実に上がってきているようです。

また、ダンス人気と注目度の高さから気軽にコンクールに応募できる機会が増えたことで、子どもたちにとっても「人から注目を浴びる」ことや「ライバルに勝つ」ことがぐっと現実味を帯びてくるようになりました。

そのような経験を得ることで、はたして子どもたちにどのような心の変化が見られるようになるのでしょうか? 『世界標準の子育て』の著者である船津徹氏は、子どもの将来にとって大切な要素として、2種類の「自信」について語っています。

根拠のない自信 親が与えるもの
根拠のある自信 子どもが自らの努力で手に入れるもの

根拠のある自信を手に入れるためには、「競争すること」が求められます。スポーツや音楽、ダンスや演劇など、勉強以外のことで競争にもまれながら努力して続けるという経験こそが、「根拠のある自信」につながるのだそう。

ただし、相手を打ち負かす方法を教え込むことや、優劣感覚を叩き込むことが競争の目的ではないと述べます。では一体、何のために子どもたちを競い合わせるのでしょうか?

競争することでしか得られない財産

船津氏は、子どもが自分の「強み」と「弱み」を知ること、そして困難や敗北に立ち向かって、プレッシャーの中で実力を発揮できる力を育てることこそが、競争に参加させる真の目的であると述べます。

つまり、子ども自身が「自分はこのステップが得意みたい」「この振り付けは他の子よりも上手にできる!」と自覚しながら強みを磨きあげることで、根拠に基づいた自信を手に入れられるのです。逆に、弱みを知れば苦手を克服するために計画を立てることができますし、気持ちを切り替えて他のジャンルのダンスに挑戦するきっかけにもなるはずです。

そして何より、戦うということは、必ず「負け」も経験します。その悔しさは子どもにとっていずれ大きな財産となるでしょう。また、もし勝ったとしても、自分が勝つということは「相手が負ける」ということ。負けた者の気持ちを理解できていれば、相手の気持ちに寄り添える人間に成長できるはずです。

***
好きなダンスを楽しく踊る。何よりもそれが大切であることは言うまでもありません。しかし、その先にあるより高い場所を子ども自身が目指したとき、自分の力で壁を乗り越える術を学ばせるためにも、積極的に競わせてあげることをおすすめします。競争を避けることは、子どもから「根拠のある自信」を手に入れる機会を奪うのだということを忘れずに。

(参考)
現代ビジネス|いまの若者たちにとって「個性的」とは否定の言葉である
朝日新聞|第6回全日本小中学生ダンスコンクール
DIAMONDO online|子どもの能力を伸ばす最高の習い事とは
船津徹著(2017),『世界標準の子育て』,ダイヤモンド社.