2018.2.28

文部科学省や海外の調査から紐解く「本好き」な子どもと学力の深い関係

編集部
文部科学省や海外の調査から紐解く「本好き」な子どもと学力の深い関係

「本を読むべき」「読書習慣は大切」とよく聞くけれど、実際どんな教育的効果があるんだろう? 忙しい毎日の中で本当にやるべき価値があるものなの?

そう疑問に思っている方も多いはず。

実のところ、私たちが気になる子どもの「学力」と読書習慣は、深い関係にあります。

今回は、読書が子どもの学力に与える影響を、文部科学省の調査や海外の研究結果から紐解いていきます。我が子に高い学力をつけてもらいたいと考えている方、必見ですよ。

楽しいから読書をする「本好き」な子どもは学力が高い

まずは、イギリスの17,000人以上の子どもを対象にしたCenter for Longitudinal Studiesによる1970年の大規模な調査結果から。

楽しいから読書をするという本好きな子どもは、そうでない子どもよりも、知能の発達、語彙力、スペリング力、数学の能力すべてにおいて優れていることが明らかになりました。

調査では、5歳・10歳の時点では同じ成績を取り、家庭・教育環境も共通している同年代の子どもを2つのグループに分けました。

1つ目のグループは、10歳のときにすでに多くの本を読み、16歳になっても1週間に1回以上読書をする本好きな子ども。2つ目のグループは、ふだん読書をしない子ども。

その結果、本好きな子どもはそうでない子どもに比べて、16歳で受けた試験でより高い点数を取ることが判明したのです。

同じような家庭・地域で育ち、同じような学校に行き、幼稚園・小学校のときは同じような成績だったのに、高校生になると、文系・理系教科の両方で、得点が大きく開いてしまう

この差を生むのが、小学生のときからの継続した「読書習慣」。本調査のデータに基づき、さらにこのような結論が出ています。

本を多く読み、新聞を手に取り、図書館に定期的に行く習慣が子どもに与える影響は、高等教育を受けた親を持つことが子どもの学力に与える影響の4倍も大きい

(引用:UCL|Reading for pleasure|Research impact case study March 2015

親の学歴・収入や、遺伝として受け継ぐIQに関わらず、子どもの学力を高める秘密兵器。それが「読書習慣」なのです。

イギリスだけでなく、アメリカ合衆国教育省も、本好きな子どもは学校での成績が全体的に良い傾向にあるという調査結果を公表しています。以下のような報告もあります。

・余暇に自分の楽しみのために本を読む子どもは、読解問題でより高い点数を取る
・家で多くの本を読む子どもは、英語・数学のテストでより高い点数を取る

(引用:National Education Association|Facts about Children’s Literacy

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「本好き」なだけで、国語・算数のテストで10~15点もアップ!

これは日本でも同じ。文部科学省の平成28年度全国学力・学習状況調査の結果をみると「読書が好き」と答えた子どもほど、国語と算数のテストでの得点が高いことがわかります。

驚くことに、本好きな小学生はそうではない小学生に比べて、国語では最大15点、算数では最大10点近く高いスコアを出していることが判明したのです。

・読書に対する姿勢と国語Bテストの得点の関係

読書が好き:62.7点
どちらかというと好き:56.3点
どちらかというと好きではない:53.1点
読書が好きではない:47.4点

(引用:文部科学省|平成28年度 全国学力・学習状況調査 報告書

・読書に対する姿勢と算数Aテストの得点の関係

読書が好き:80.4点
どちらかというと好き:76.8点
どちらかというと好きではない:75.3点
読書が好きではない:71.8点

(引用:同上)

本好きな子どもは、国語だけでなく、算数でも良い成績をおさめることができるのです。同調査から、この傾向は中学生になってからも続くことがわかります。

本好きと学力の関係2

なぜ本好きな子どもは学力が高いのか

なぜ本が好きな子どもは、これほどまでに高い学力を発揮することができるのでしょうか。

受験のプロとして活躍する教育コンサルタントの松永暢史氏は、本を読むことで得られるメリットは「日本語了解能力」がつくことだと話しています。

これはいわゆる国語力のことで、日本語を用いてものごとを理解し、表現する力。

国語力はすべての科目を学んでいくうえで必要になるものです。国語力がない子は算数の文章問題が解けませんし、社会・理科の授業や総合的な学習において自分の考えをまとめて発表することができません。

(引用:松永暢史(2014),『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』,すばる舎.)

つまり日本語了解能力は、全教科の成績に大きな影響を及ぼす、学力の基盤となる力。そして、松永氏曰く、この力を身につけるのに効果的なのが「読書」だそう。

日本語了解能力は、国語の勉強をすることで身につくものだとお考えの方がいます。しかし、言葉とは生きているもの。

どんなに文法や漢字の書き取り、熟語を習っても、それが実際の文章の中でどう使われるのか、どう使いこなせばいいのかは、たぶんに感覚的なものです。

それを磨くには、生きた言葉が詰まっているもの、つまり本にあたるしかありません。

(引用:同上)

本好きな子どもは読書習慣を確立できていますから、日本語了解能力を伸ばす機会がたくさんあります。そのため、全教科において学力の大きな向上が見込めるのです。

さらに将来大学受験をするにしても、国立大学をはじめとして、慶応義塾大学の小論文試験や早稲田大学などの難関大学の記述問題には日本語了解能力を問うものが多い、と松永氏は言います。

そしてこの傾向はすでに中学入試から始まっているのだとか。子どもの頃から身につけておくべき必須の力だといえるでしょう。

***
子どもの学力を高めるには、読書が一番。まずは「本好き」な子どもを育てるところから始めましょう。

今後こどもまなび☆ラボでは、「本好き」な子どもの育て方や、むりなく子どもの読書習慣を確立するための方法を詳しくご紹介していきます。乞うご期待ください。

(参考)
文部科学省|平成28年度 全国学力・学習状況調査 報告書
松永暢史(2014),『将来の学力は10歳までの「読書量」で決まる!』,株式会社すばる舎.
UCL|Reading for pleasure|Research impact case study March 2015
The Guardian|Reading for fun improves children’s brains, study confirms
National Education Association|Facts about Children’s Literacy